結城杏@世界忍者国様 様からのご依頼品


本日快晴日々是平和也 (小笠原ゲーム『世界忍者国慰安旅行』より) ―結城杏さんに捧ぐ―

スピキオはご機嫌だった。
にゃーんとしっぽを立てて、ちょっぴりふりふりしながら道を歩いている。

今日は、元・お見合い相手の結城杏に誘われて、みんなで海へ行くことになったのだ。

スピキオは水も、熱い砂も好きではなかったが、杏のことは気に入っていたので、いっしょに行こうという気になった。
熱い砂を肉球で歩くと、肉球から発汗する猫としてはちょっと辛いものがある。
なので、スピキオは杏の肩に乗っていた。

これはいい。

なんだかいい気分になったので、スピキオは伸びをした。

「ねぅ?」

いきなり乗られてびっくりしたのか、杏が声をあげたが、それがスピキオだと気がついてすぐににこりと笑うとスピキオの頭を撫で始めた。
なんとも和やかな光景である。

スピキオ、すでにご機嫌メーターは振り切れんばかりである。
目を細めて杏にすりすりしている様子は、到底猫神族の一柱とは思えないほどだが、杏がそれで幸せそうなのでよし。
周囲でその様子をほんわか眺めていた者たちの心の声は一致した。

スピキオは、そんな周囲の者たちの心の声など全く気にせず、杏にごろごろ言っていた。

ちらり、と周囲に視線を向ける。

バーベキューの準備ひとつするにもわいわいがやがや。
人族というのはかくも騒がしい。
けれどそれはそれで時には好ましくあるものだ、とスピキオは目を閉じた。

次の瞬間、海にダッシュした杏に振り落とされそうになって慌てて砂浜に飛び降りる羽目になったけれど。

まあ、それはそれ。

気がついた杏がすぐに引き返してきてくれたので、スピキオはにゃんと鳴いて立ち止まった。
水も熱い砂もやっぱり好きではないけれど、杏のためならほんの少しくらい我慢してもいいかもしれない。

「あにゃー…お水も砂の暑いのもだめかぁ…」

じゃあ、ぎゅーしてるよ。
と言ってくれる杏に、スピキオは大人しくお腹を見せた。
彼なりの、精一杯の愛情の示し方である。


というわけで、スピキオ自身はこの状況にとりあえず満足していた。


満足というか落ち着けていないのは、周囲にいるほぼ全員である。

その中でもとりわけ、杏が気にしているのは扇りんくとソーニャという二人の女性のことである。
なんだかよくわからないが、少し前に色々あってちょっと沈み込んでいるらしい。
岩陰で隠れるようにして落ち込んでいる二人を、杏は岩の上から眺めていた。

「元気ないなぁ…。そうだ、スピキオ。りんくちゃとソニャさんに肉球ぱんちをして慰めてきてくれる?」

肉球ぱんちは、癒されるから!
という杏の言葉に促されて、スピキオはうなずくと彼女たちのそばに近寄った。
そして電話の前へと誘導する。
きっと、肉球ぱんちより癒されるだろうと確信しながら、彼女たちに向かってにゃーんと鳴いた。

しばらく静かに電話をかけていた女性が急に立ち上がり、何事かを受話器の向こう側に伝え始めた。
内容はまあ、あまり興味がなかったが、彼女たちが元気になったことで杏は満足したらしい。

「さてと、いい感じになったね。スピキオありがとう♪」

そう言って、杏が抱き上げてくれたので、スピキオはにゃん、と返事をしておいた。
なんにせよ杏が喜んでいるのを見るのはなんとなく気分が良い。

「えらいえらい♪」

そういいながら頭を撫でてくれる手も、確かに心地いいものだったので。
スピキオは満足そうに目を細めて、風にひげを揺らしていた。


本日快晴。
日々是平和で事も無し!


END?




……ただし。
事も無しというのはちょっぴり嘘かもしれなかった。

主に、周囲の人間にとっては。
それはもうその後阿鼻叫喚悲喜交々の大事件が大量に勃発しているのだから。

しかし、それもスピキオにとって見れば取るに足らないささいなことなのである。

「にゃー」


今度こそ本当にEND


作品への一言コメント

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  • はひゃー!スピキオかわいいよスピキオっ!!ありがとうございましたv -- 結城杏@世界忍者国 (2007-11-08 21:08:24)
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最終更新:2007年11月12日 16:32