ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

DIOが使い魔!?-38

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匿名ユーザー

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翌朝、何とか動けるようになったロングビルを御者役に、一行は出発した。
馬車といっても、屋根のない、荷車のような馬車である。
襲われたときに、直ぐに迎撃出来るようにとのことだ。

その馬車の上、ルイズは歯ぎしりをし、
かつてないほどの憤りを感じていた。
何たってこんな事になったのか…………馬車に乗っているのは、
ルイズを含めて、四人に増えてしまっていた。
ルイズと、DIOと…………キュルケとタバサだった。
早朝、馬車を待っている2人の前に、
何処から聞きつけたのか、オスマンとともに表れたのだ。

「この2人は、そなた同様、
フーケ拿捕に、貴族の誇りをかけると申しておる。
同行させるのじゃ」

そういうオスマンに対して、まさかNOと言えるわけがない。
ルイズに選択肢は無かった。
結局、ルイズの返答を待つことなく、2人は堂々と馬車に乗り込んだのだった。


「なんであんたがここにいるのよ、
ツェルプストー」
カッポカッポと馬車が行く音が森に広がるなか、
唇を軽くへの字に曲げて不満を漏らしたルイズに、
キュルケはその炎のような髪をかきあげた。

「ふん。
ヴァリエールに抜け駆けなんて、させないわよ。
うわさはとっくに学院中に広まってるわ。

それに、首尾良くフーケを捕らえれば、名を上げることができるのよ?
ベストチャンスじゃない!
ヴァリエールにはもったいないくらい」
ルイズは顔をしかめた。
どうやら2人はフーケを生かして捉えるだけのつもりらしい。
しかし、ルイズはフーケを殺害しに行く。
つまり、板挟みの形になる。
あちらが立てばこちらが立たずだ。
まいったことだと頭を悩ませながら、ルイズはその視線を、
キュルケの隣で黙々と本を読んでいる青髪の少女に移した。
その身長よりも大きな杖が印象的だ。

「で、なんでこの子までついてきてるわけ?」
ルイズの質問に、タバサがついと顔を上げて、
キュルケを指差した。

「心配」
一言そういうと、タバサは再び本を読み始める。
タバサが口数の少ない子であることは、
ルイズもある程度分かってきていた。
だから、その簡潔きわまりない返事に対して、イラつくようなことはしなかった。
しかし、このタバサという少女、馬車に乗ってからというものの、少々挙動不審であると、ルイズは感じていた。

本を読んでいるだけかと思ったら、時々顔を上げて、
DIOの方をチラチラと窺っているのだ。

まさかあのメイドみたいに手込めにしたのではないかと、
ルイズは一瞬冷や冷やしたが、どうやら違うようである。
DIOを見るタバサの目は、脅威と興味がない交ぜになったようなそれであり、
少なくとも好いた惚れたといったものではないことがわかる。
ならば、タバサがいくらDIOに気を向けようが、それはルイズの口を挟む領分ではない。

一方のDIOはと言えば……普段と変わらない。
体格上の理由から、馬車の一番後ろに陣取ることになったDIOは、
ルイズがせっかく買ってやった平民用の普段着を着ることなく、例の如く上半身裸だ。
出発の時、ルイズはこの事にかなりお冠だったが、DIOは一向に聞く耳を持たなかった。
これこそ自分のスタイルだと、言わんばかりだ。
確かに、半裸のDIOは、精密な彫刻のようである。
繊細ながらも力強さを感じるDIOの肉体には、男も女も持ち得ない、
奇妙な色気を感じる。
ほとんど四六時中行動を共にしているルイズにとってはたまったものではないが、
時間が迫っていたせいもあり、嫌々…本当に嫌々ながら放置することにした。

久方ぶりにルーンに魔力を注いでやろうとも思ったが、
この旅の終わりには、フーケが待ちかまえているのだ。
どうにも出来なかった。
精神力の消耗は、極力避けねばならないのだ。

DIOのベルトと、深緑色のズボンの両膝とに輝く、ハートマークの飾りが憎らしい。
そのDIOの足下には、以前買った剣が2本とも、無造作に転がっていた。
DIOによると、2本とも持ってきたのは、
片方を『予備』にするためらしい。
つまり、どちらかが折れてしまうかもしれないという事だ。
一体どちらがポッキリ逝ってしまうことになるのか、ルイズは楽しみだった。
ルイズの視線は、デルフリンガに一点に注がれていた。

―――と、馬車でのぶらり旅が退屈になってきたのか、キュルケが、
さっきから何も話さずに手綱を握るロングビルに話し掛けた。

「ねぇ、ミス・ロングビル………、怪我をしてらっしゃるんだから、
手綱なんて、付き人にやらせればいいじゃないですか」
単純な親切心から出たらしいキュルケの言葉に、ロングビルはにっこりと笑った。

「いいのです。この方が、フーケの隠れ家までの距離が、よくわかりますの。
それに、わたくしは、貴族の名を失くした者ですから」

キュルケはキョトンとした。
ロングビルは、オールド・オスマンお抱えの、有能な秘書である。
そんな彼女が、貴族でないとは、一体どういうことだろうか?
ロングビルの話によると、 オールド・オスマンは、貴族や平民といった事柄に、拘らない人なのだそうだ。
曰わく、

『ワシは、厳しい。
しかし平等主義者じゃ!
差別は許さん。
貴族、平民、王族、亜人、エルフ……etc.
ワシは差別をせん。
全て、平等に価値が『無い』!!!』
だそうである。
あのオスマンなら、もっともなセリフだと、その場にいた4人は妙に納得した。
興味をそそられたのか、キュルケは少々突っ込んだ話をし始めた。

「差し支えなかったら、事情をお聞かせ願いたいわ」
貴族の名を失うことになった過程を聞こうというのだ。
ロングビルは困ったような微笑みを浮かべた。
言いたくないのだろう。
「いいじゃないの。教えてくださいな」
キュルケは興味津々といった顔で、ロングビルににじり寄った。
いい加減見ていられなくなったのか、そんなキュルケの肩を、ルイズが掴んだ。
キュルケはルイズの方に振り返ると、思いっ切り嫌そうな顔をした。

「なによ、ヴァリエール。
お呼びじゃないわ」

キュルケは聞き入れそうにもないが、注意せずに放っておくのも酷だと、ルイズは思った。

「よしなさいよ。昔のことを 『根掘り葉掘り』 聞くなんて………」

何の気なしに口にしたルイズの言葉に、タバサの体がビクンと跳ね上がった。
突然のタバサの動きに、2人はさっきまでの会話をすっかり忘れて、タバサの方を向いた。
見ると、タバサは顔を真っ赤にして、何かを口走ろうとしている自分を必死に抑えているようであった。
それでも無表情なのが逆に怖い。

「タ、タバサ………?大丈夫……?」
ただならぬ様子に、恐る恐るといった感じでタバサに話し掛けるキュルケ。
ルイズはというと、何が起きているのか、サッパリわからず、ポカンとしていた。
しばらく経った後、タバサがふぅと一息ついた。
ゆっくりと2人を見るタバサは、普段と全く変わりがない。
いつも通りだ。

「……なんでもない」
ポツリと呟いたタバサだったが、その言葉には、何も聞くなというような、変な迫力があったので、
2人はその言葉を鵜呑みにするしかなかった。
タバサは再び読者に勤しみ始めた。
ルイズは話を戻すことにした。

「とにかく、人が聞かれたくないことを、無理やり聞き出そうとするのは、
良くないと思うわ!」

ヴァリエールに対する反発心から、キュルケはルイズを軽く睨んだ。

「暇だから、お喋りしようと思っただけじゃない」

「ゲルマニアはどうだか知らないけど、トリステインでは、恥ずべきことなのよ」
キュルケは無言で足を組み、イヤミな調子で言い放った。

「ったく、大体あんた、どうしてフーケを捕まえようなんて思ったわけ?
あんたのほうこそ、名誉が欲しいんじゃないの?」
ウシシと笑うキュルケに対して、ルイズは真顔になって答えた。

「私には、どうしても殺らなきゃならない理由があるわ」

キッパリと、突き放すように言うルイズに、キュルケは半信半疑な目を向けた。

「でも、あんた、いざフーケが現れたら、どうせ後ろから見てるだけでじゃないの?
そこのDIOに全部まかせて、自分は高見の見物。
でしょ?」

2人は同時に、DIOを見た。
DIOは、移り変わる景色をただただ暇そうに眺めているだけだ。
ルイズは腕を組んだ。

「誰が逃げるものですか。
私も、魔法を使って何とかしてみせるわ」

「魔法?
笑わせないでよ。
あんなのは魔法じゃなくて、ただの爆発よ!爆発!」

当初の話題はどこへやら、
火花を散らす2人は、ギャーギャーと口げんかを始めたが、馬車が森のより深い場所へと入っていくと、
段々静かになっていった。
鬱蒼とする森は、昼だというのに薄暗く、気味が悪い。

ある程度まで進むと、ロングビルが馬車を止めた。

「ここから先は、徒歩で行きましょう」
ロングビルがそう言って、全員が馬車から降りた。
森を通る道から、小道が続いている。

「えっらく暗いわね……」
キュルケの呟きが、森に吸い込まれて消えていった。

森を進む一行は、開けた場所に出た。
森の中の空き地といった風情だ。
真ん中に、廃屋があった。
ロングビルによると、あれがフーケの隠れ家……らしい。
五人はむこうから見えないように、森の茂みに身を隠したまま、廃屋を見つめた。
人の住んでいる気配は全くない。
ルイズ達は、ゆっくりと相談をし始めた。
あーでもないこーでもないと策を練った結果、
タバサの案が採用される事となった。

『まず、偵察兼囮が、小屋に出向いて、中の様子を確認。
フーケが中にいれば、挑発して誘き出す。
そこを魔法で叩く。』
奇襲戦法であった。
集中砲火で、フーケを沈めるのだ。

「で、その偵察兼囮はだれがやるの?」
キュルケが尋ねた。
タバサは無言でDIOを指差した。
全員が一斉にDIOを見つめた。
DIOはため息をついた。

「………私か」
タバサがコクンと頷いた。

「いいじゃない。
名案だと思うわ。
というわけで、DIO、行ってきなさい」

DIOは丸腰のまま、気だるげに立ち上がった。
そして、スタスタと小屋まで近づくと、確かめもせずに小屋の中に入った。
4人は息をのんで見守っていたが、暫くすると、DIOが小屋から出てきた。

誰もいなかった時のサインを出すDIO。
全員が茂みから出て、小屋に歩み寄った。

「誰もいないな」
DIOがそういうと、ディテクトマジックを使って罠がないことを確認したタバサが、
小屋の中へと足を運んだ。
キュルケはなぁーんだと、拍子抜けしたような声を出した。

小屋に入ったキュルケとタバサは、フーケの残した手がかりを探し始めた。
DIOは、自分の仕事は終わりとばかりに、
部屋に突っ立っているだけだ。
家捜しを続ける2人だったが、やがてタバサが1つのチェストの中から……、
なんと、
『破壊の杖』を見つけ出した。

「破壊の杖」
タバサは無造作にそれをもちあげると、皆に見せた。

「あっけないわね!」
キュルケが叫んだ。
DIOはというと、タバサが抱える『破壊の杖』見た途端に、
訝しげな表情をした。

ロングビルと一緒に、小屋の外で待機していたルイズは、
『破壊の杖』発見の報告を受けて、眉をひそめた。
おかしい。
ロングビルの話では、フーケは罠を張って待ちかまえているというではないか。
魔法学院に忍び込み、宝物庫を破るほどの実力の持ち主。
恐らく、自分たちが森に入ったことなんか、とっくにお見通しだろう。
なのに、こうもやすやすと破壊の杖を渡すとは………。
これも、いや、ひよっとしたら、これこそが罠、か?
それにしてもリスキーに尽きるだろう。
フーケの意図を読みかねて、ルイズはうむむと唸った。

ロングビルは、いつもの柔らかなものとは全く異なる鋭い視線で、小屋の様子を慎重に窺った。
3人とも、破壊の杖に目が釘付けだ。
次いで、ルイズを見た。
ルイズはロングビルに背を向けて、うむむと唸りながら、思案に耽っている。
ロングビルには目もくれておらず、自分の世界に入り込むルイズを見て、
ロングビルは薄く笑った。
今、彼女は完全にフリーだった。

自分の作戦がうまくいったと確信したロングビルは、喜びもそこそこに、
最後の詰めを行うため、コッソリと茂みの奥へと足を運んだ。

――――その時だった。
突如何者かが、
"グワシィ!!!"
と、凄まじい勢いで自分の肩を掴んだのだ。
ロングビルの体はまるで、『固定化』の魔法でもかけられたかのように、
硬直してしまった。
……………まさか?
いやいやいやいや、そんなバカな。
彼女と自分は、さっきまで、たっぷり15メイルは離れていたはずだ。
彼女であるはずがない。

では、今、自分、の肩、を、掴んで、いる、の、は……………………誰、だと、い、う、の、か?

ゴクッと唾を飲む。
ロングビルは意を決して後ろを振り向いた。



「どこに行くのかな?かな?」
笑顔のルイズが、そこにいた。


to be continued……


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