ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

第六話 そいつの名はロングビル

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匿名ユーザー

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何故こんな事になってしまったのか。何故こんなことが起きてしまったのか。それは運命のみが知っているのだろう。なぜなら私達は運命の奴隷なのだから。
今も、そしてこれからも…。

 第六話 そいつの名はロングビル その①

(な、何なのよ、あれはッ…??)
忘れ男(もの)との戯れが終わり、まだやっているのかわからない決闘の様子を観に行こうとしていたキュルケは、悲鳴を耳にしたのだ。
悲鳴のする方向は広場のある方向である。
初めは決闘中に何かが起こったのだとキュルケは思った。
しかし少し聞いていると、悲鳴の感じがそういった類のものではない。
そして、偶然塀のほうを見ると人影があり、そこから無数の石飛礫が飛ばされいるではないか。
キュルケは理解した。あの人影のヤツが悲鳴の元凶であると。
(あいつを捕らえて一躍有名よ。まぁ、元々有名だけど。)
そう心中で言うと、そいつに気付かれないように少しずつ近づいていく。
ある程度魔法が確実に中る射程距離に入れば、石飛礫を飛ばすだけのヤツなら十分だ。
そういう風にキュルケは考えていた。
(あと三歩、ニ、一……くら…えッ!??)
キュルケの周りだけ一瞬、時が止まったように感じられた。


 第六話 そいつの名はロングビル その②

(…あれは、……岩ッ!?)
キュルケは動揺を隠せなかった。今まで人だと思って近づいていたものが岩の塊だったからだ。
だが、石飛礫を飛ばす岩なんて聞いたことがない。
普通に考えると、誰かが錬金して人型の岩を作り上げたのだ。
そして、あたかもメイジが石飛礫を飛ばしてきたように、岩から石飛礫を飛ばしていたのだ。
つまりは誰かが魔法を使っていたことになる。
そうなると、人だと思っていた岩に気付かれないように近づいていた自分は、その何者かにはずっと見られていたことになる。
だから動揺を隠せなかった。
あたりを見回す。上下左右。もちろん形式的な行動だ。
見つけられるとは思っていなかった。
誰かが近づいていき、岩だと気付いたのだ。捜される前に身を隠すのが当然だ。
しかし、そいつはいた。
普通に窓から覗いて立っていたのだ。
そいつは平然とこっちを見ている。
もの凄い冷めた目で。
そう、まるで養豚場の豚を見るような目でッ!
(まさかッ!…あいつがッ!………ミス、…ロングビルッッ!!!!)
人型の岩は音も立てずに崩れ去った。


 第六話 そいつの名はロングビル その③

「フゥゥゥゥ~。…ミス・ツェルプストー、あなたは見てはいけないものを見てしまったわ。」
ロングビルが窓から飛び降りる。魔法が使える彼女なら造作のないことだ。
「あ、あなたも魔法が使えたのね…。ルイズよりかは上手じゃない。」
下らないことを言って気を紛らわせようとするが、驚きは隠せない。
「見られたからには始末しなくちゃあいけないけど、黙ってくれると約束してもらえるなら見逃してあげてもいいわよ。」
思ってもみない交換条件だった。
「ほ、本当に見逃してくれるの?」
キュルケが質問で返す。
「えぇ、本当よ。」
そうしてロングビルの問いかけにキュルケは答える。
「でも断らせて戴くわ。約束したってどうせ私のことを始末しに来るのでしょう?それに『微熱』のキュルケを嘗めないでほしいわ。」
いつの間にか平静を取り戻したキュルケは威勢良く答えたが、ロングビルは『あぁ、そう。』といった感じで相手にしていなかった。
「残念ねぇ。実に残念。約束してくれたら苦しまないよう始末してあげたのに。無駄な争いはするものじゃないのよ。」
ものすごく上からの言い方である。ロングビルのことを甘く見ているキュルケは、当然のことながらプッツンする。
「たかが秘書が、少し魔法が使えるからって、嘗め腐ってッ!あんたを捕らえてオールド・オスマンに突き出してあげるわ!」
キュルケはキレているが、ロングビルは限りなく冷静だった。
「…でも、その状態でどうやって突き出すの?」
「何を言って…ハッ!!」
ロングビルに言われ、言い返そうとしたキュルケは足の違和感に気が付く。
足が!完全に固定されているのだ!岩に!
まるで岩に飲み込まれているように!まるで土から生えているかのように!
ようは動けないのだ。
いつのにか唱えられていた呪文によって、キュルケは危機的状況にたたされていた。
「人が来ても困るから、さっさと息の根をとめてあげるわ。」


 第六話 そいつの名はロングビル その④

(ヤバイッ!ディ・モールトヤバイわッ!こういうときは覚悟を決めなくてはッ!このままでは私の負けは確定よッ!)
「…ミス、…ロングビル、あなたの目的はいったい何?」
(時間を稼がなくてはッ!)
そんなキュルケの考えとは全く逆に、無言で近づいてくるロングビル。
(早く来て頂戴、フレイム!)
どんどん距離が狭まってきた。
(あと少し、あと少しで来る…)
「行けッ、フレイムゥッ!!!」
キュルケの使い魔フレイムが、ロングビルめがけて炎を放つ。
「ぐ、ぐぬぬぬ。そんななまっちょろい火でこのロングビルがやられるとでも思ったのッ!?」
炎の中から出てくるロングビル。
しかし、目の前にいたはずのキュルケが跡形もなくいなくなってしまっている。
「くそッ!このロングビルを…いや、『土くれのフーケ』を…はかったわねぇぇぇぇッ!!!」
ロングビルはプッツンした。そしてすぐに冷静さを取り戻す。
「…私から、逃げられると思っているの?たかが小娘がッ!」
ロングビルはキュルケの追跡を開始する。
滴った血の跡を追いかけて。


 第六話 そいつの名はロングビル その⑤

(まさかあのロングビルが、あんなに危ないヤツだったなんて…。覚悟していなければ、今頃やられていた…。)
フレイムに乗りながらキュルケはそう考えていた。
(あのとき覚悟をしていなかったならば…)

フレイムが炎を放った。それによってロングビルの視界がさえぎられている瞬間。
フレイムに!キュルケは自らの足を!切断させたのだッ!!!

(あの表情はヤバかった。殺るといったら必ず殺る目だ。私じゃあ敵わないって、声を聞いてドラゴンだとわかる位確実だった。
はやくこのことをオールド・オスマンに伝えなくてはッ!コルベールでもいいッ!タバサでもッ!最悪ルイズだっていいッ!誰かに伝えなくてはッ!!!)
フレイムが急に走るのを止めた。
いや、止めざるを得なかった。
なぜならフレイムの足が先ほどのキュルケのようになっていたからだ。
突如かかったブレーキにより、キュルケは宙に放り出される。
そしてそれを認識するまもなく、フレイムは岩に飲み込まれ、地面に消えていった。
「フ、フレイムッ!」
「あなたの使い魔は圧死したわ。さっさと潰さないと、炎で溶かされたりしたら面倒だからね。」
平然とした口調で追いついてきたロングビルが語りかける。
「淋しがらなくても大丈夫よ、ミス・ツェルプストー。あなたもすぐに同じ土の中に逝けるわ。」
足が切断されているため、キュルケは動けないが、杖を持ち、呪文を唱え、フレイムボールを数発放つ。
「そんなわかりきった攻撃が私に通じると思って?」
力尽きたようにキュルケは地面に杖を挿す。
「これで終わりね。」

ロングビルがそう言ったそのときだった。
地面から炎が飛び出してきた。
何とか身をかわし、辛うじて直撃は免れたが頬の所を少し火傷してしまった。
「このクソアマがぁぁぁッ!!この私に対してッ!!クタバレェェェェェッ!!!!!」
キュルケが岩に飲み込まれていく。
(メッセージよ…タバサ………。気付いて、頂戴…………)
そうしてキュルケは飲み込まれていった。
「フゥゥゥゥ~。無駄に時間を使ってしまったわ。オールド・オスマンに決闘のことを伝えに行く筈だったのに…。」

キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー 二つ名『微熱』…圧死。
ロングビル(フーケ) 二つ名『土くれ』…頬に火傷。急いでガーゼをはり、オールド・オスマンのところに決闘のことを報告しに行った。

to be continued…

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