ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

DIOが使い魔!?-33

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『土くれ』のフーケという盗賊がいる。
東西南北、ありとあらゆる秘宝財宝を神出鬼没に現れて根こそぎ頂戴する謎の人物。
今現在トリステイン中の貴族を恐怖に陥れている 怪盗だった。
行動パターンが全く読めず、トリステインの治安を預かる王室衛士隊の魔法衛士達も、振り回されるばかり。
主に『錬金』の魔法を使うフーケに対し、メイジ達は『固定化』の魔法で対処しようとしたのだが、
フーケの魔法は強力で、その壁や扉をあざ笑うかのように土くれに変えてしまう。
また、フーケは30メイルはあろうかという巨大な土ゴーレムを使うことでも知られている。
その技量の高さから、フーケは『トライアングル』クラスのメイジと推測されているが、
男か女かさえ定かではない。
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巨大な二つの月が、五階に宝物庫がある魔法学院の本塔の外壁を照らしている。
その五階の宝物庫、巨大な扉の前に1人の人影。
『土くれ』のフーケその人だった。
フーケは以前のように、扉に手を滑らせて、舌打ちした。

「…物理攻撃が弱点?
冗談きついわ。こんなに厚かったら、ちょっとやそっとの魔法うじゃ、
どうにもならないじゃないの!」

フーケは日中、コルベールと共に図書室をひっくり返しながら、さりげなく宝物庫の弱点を聞き出していた。
あらかた聞き出した後、フーケは口車に乗せて本の捜索をコルベールに押し付け、
図書室を後にした。
とにかく、物理攻撃が弱点らしい………のだが、自分のゴーレムの力では、壊せそうにもない。
フーケは腕を組んで悩んだ。
そして、チラッと扉の端を見た。
幾つもの小さな拳の跡が、壁に刻まれている。
以前自分が触ったら、脆くも崩れた箇所だ。
あの時は、誤魔化すのに苦労した。
コルベールの話で、フーケは改めてその拳の跡の異常性を認識した。
あれは、つまり、自分のゴーレムよりも、腕力が上だという何よりの証拠だ。
そんな人間がいることに対して、フーケはまだ半信半疑だったが、今はそんな事は問題ではない。
……これを利用しない手はない。
フーケはそう決意すると、宝物庫から離れ、呪文を詠唱し始めた。
長い詠唱だった。
詠唱が完了すると、地に向けて杖を振る。
フーケの薄ら笑いとともに、石造りの地面が音を立てて盛り上がる。
そして、フーケの身長よりも大きな腕がボコリと生えた。
ゴーレムの右腕だ。

右腕だけを錬金で作り上げたフーケは、そのまま杖を振った。
ゴーレムの右腕が、壁のひび割れた部分に向けて、唸りを上げて振り下ろされた。
フーケは、インパクトの瞬間、ゴーレムの拳を鉄に変えた。
たやすく壁に拳がめり込み、バカッと鈍い音を立てて、再び壁が崩れた。
以前よりも若干穴が大きくなったが、どうでもいい。
フーケは錬金を解くと、壁にあいた穴から、宝物庫の中に侵入した。
中には様々な宝物があった。
だが、どうも様子がおかしい。
所々空になったショーケースがあったり、壁掛けにあるはずの絵が無くなっている所もある。
……まさか先客がいたとは---フーケは舌打ちした。
なるほど、あれは自分が来る前に、他の盗賊があけた穴だったということか。
…まさか、自分の目的である破壊の杖も、既に奪われた後なのでは、と思い至り、フーケは焦った。
宝物庫の中を駆けずり回っていると、多種多様な杖が壁に掛かった一角があった。
やはり所々無くなっている物があったので、フーケは焦りに焦ったが、
その中に、どうみても魔法の杖には見えない品があった。
全長1メイル程の長さで、見たこともない金属でできていた。

その下の鉄製のプレート には、
『破壊の杖、持ち出し不可』
と書いてある。
フーケは自分の獲物が無事であったことに安堵し、『破壊の杖』を手にとった。
その軽さに驚いた。
いったい何でできているのか…?
しかし、今は考えている暇はない。
杖を振ると、壁に文字が刻まれた。

『破壊の杖、確かに領収いたしました。土くれのフーケ』
よし、と頷いてフーケは『破壊の杖』を抱えるて、その場を立ち去ろうとした。

『……………さん』
不意に、変な声が聞こえて、フーケの足が止まった。
小さくて、ギリギリ聞こえるか聞こえないか位の声量だったが、
怪盗として聴覚も鋭かったフーケの耳は、確かにそれを捉えた。
…しまった、誰か来たのだろうか?
フーケは『破壊の杖』を床に置くと、懐から杖を取り出した。
見回りに来た教師の1人だろうか?
いや違う。
確か、今日の見回りはミセス・シュヴルーズだったはずだが、
彼女が見回りをサボって自室で寝ぼけているのは、確認済みだ。
フーケは息を殺した。
耳を澄ませる。

『…………………ンさん』
カタカタと何かが震える小さな音と共に、確かに聞いた。
少し高い、良く通る声だった。

その声色には、少しばかりの苛立ちがこもっていて、威圧感があった。
本棚の方から聞こえてくるようだ。
フーケは、『破壊の杖』を抱えると、誘われるように本棚に向かった。

古今東西の貴重な本や、禁書が並べられている本棚がいくつも並んでいる。
しかし、異常は見あたらない。
フーケは首を傾げた。

『………………ーボンさん』
また、あの声。
どうやら本棚の向こうから聞こえてくるようだ。
フーケはやけにその声が気になった。
本当は今すぐにでもこの場から立ち去らねばならないのだが、
何かが自分の足を止めるのだ。
フーケは中央にある本棚を調べてみた。
どれもこれも埃を被っているが、いくつか埃が被っていない物がある。
最近動かしたことのある証拠だ。
フーケは震える手で、その本を一冊ずつ傾けていった。
全て傾けると、カチッという音がした。
何事かと思う暇なく、"ゴゴゴゴゴ"と重い音を立てて、本棚が左右に割れ、
続いてその後ろの壁が動いて、奥に小部屋が現れた。
---隠し扉だ。
フーケはゴクリと唾を飲み込んだ。
嫌な予感がして、フーケは逃げようと思ったが、自分の意志に反して、足は隠し部屋の中に向かって行った。

中は暗く、ロウソクが辺りを照らしているだけだ。
中央には台座があった。
台座の上には、大きな本が、鎖でぐるぐる巻きにされて安置されている。台座と鎖には、ルーンがビッシリと刻まれている。
フーケはルーンを見て、顔をしかめた。
そのルーンは、どれもこれもが、台座に安置されている本を、罵り、憎み、嘲り、謗り、呪い、縛り付ける内容だったのだ。
一文字一文字から、途方もない魔力を感じる。
おそらく、一文字一文字が、強力な呪縛の層を形成し、
それが何百層と、さながらバームクーヘンのように重なって、結界を為していたに違いなかった。
こんな大魔法が、この世に存在することに、フーケは驚いた。
術者はきっと、途方もない時間と怒りを込めて、ルーンを刻んだのだろう。

しかし、今はそのルーンは光を失っている。
1度封印が破られたのだ。
これほどの結界を破れるものが、この世に存在しているのかと、フーケは再度驚いた。
自分より先に侵入した奴の仕業だろうか?
タイトルは…………異国語のようだ。
見たこともない文字で書かれている。
しかし、フーケには何故かその文字を読みとることが出来た。

……というより、意味が直接頭に流れ込んできたような感じだったが。
『おかあさんがいない』……?
なんだ、このタイトルは?フーケが本に顔を近づけて、目を凝らしたのと同時に、本がひとりでにガタガタと動きだした。

『…ザーボンさん…!』地獄から響いてくるような声が、部屋に響いた。
本に巻かれた鎖がジャラジャラと音を立てる。
フーケはその声をハッキリ聞いて、背筋が凍り付く思いがした。
バッと顔を離す。
心臓がバクバクと暴れ出し、ハァハァと犬のような呼吸が止まらない。
---ヤバい…!
なんだか知らないが、こいつはこの世に在ってはならないものだ。
破壊せねば---!
本能の警告に従うままに、フーケは片手に杖を構えた。
本の動きが活発になってきた。
また声が聞こえる。

『ザーボンさん…』
『…ハッ!!!』
『上部ハッチを開けなさい………!』
『り、了解いたしました!!!!!』

どうやら、2人の人間のやり取りのようだ。
上司と部下のような…。
フーケは思わず詠唱を止めて、耳を傾けてしまった。
やり取りが終わると同時に、鎖が切れ、本が宙にすうっと浮かんだ。
本が徐々に開いていく。

早く魔法を唱えなければならないのに、フーケの体は蛇に睨まれた蛙のように動かせない。
本の中から、暗い灰色の肌をした小さな亜人が姿を浮かび上がった。
何かの精霊だろうか?
ネズミを擬人化したようなそのネズミは、人差し指を天に向けて構えた。
すると、指の先に、小さな小さな半透明の球体が出現した。
コインくらいの直径しかないその球体はしかし、フーケに絶大な恐怖を与えた。
フーケは動かぬ体を叱咤し、なんとか杖を構えて、火の魔法を唱えた。
直径数メイルにもなる火球が、空気を引き裂きながら、ネズミに向けて飛来した。
…………しかし、火球が亜人に直撃する前に、ネズミの指先の球体が、瞬く間に巨大に膨らんでいった。
ドンドンと雪だるま式に膨らんでいくソレは、火球が届く前には、部屋全体を占めてしまうほどになっていた。
火球がその球体に直撃する。
しかし、火球は当たり前のように球体に飲み込まれて霧散した。
…………勝負にならない。
フーケは絶望した。

『ホッホッホッホッホ…!』
嘲笑と同時に、ネズミが人差し指をフーケに向けた。
巨大な半透明の球体がフーケに向けて放たれた。球体は、その巨大さに反した高スピードでフーケに直撃した。

フーケは『破壊の杖』を持ったまま、球体に飲み込まれて、そのまま小部屋から吹っ飛ばされた。
尚も勢いを増す球体は、その破壊力でもって、宝物庫の宝を粉々にしながら、
最後に宝物庫の扉を破壊して、森の方へ飛んでいった。

「カカロットよぉぉおおおー!!!!!」
球体に巻き込まれたままのフーケの、未来へ託す悲痛な魂の叫びが、トリステインに虚しく響いた。

-----かくして、『破壊の杖』が強奪されるという、前代未聞の大事件が、
トリステイン魔法学院を襲ったのだった。

to be continued……


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