ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

使い魔は手に入れたい-52

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匿名ユーザー

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夜、私とルイズは当然のことながら自分たちの部屋にいた。私は特に何もすることも無いので、椅子に座りながらキュルケからもらった剣を掃除していた。
埃まみれだったからだ。どうせこの剣は売ってしまうのだ。埃まみれではあまり高く買ってもらえないだろう。
ルイズは、ベッドに寝転びながら始祖の祈祷書を開き、穴が開くほど見詰めている。その手にはやはり水のルビーが嵌められている。
タルブの村に行く前もこうして祈祷書を見詰めていたが、今度はそのときよりもひどいような気がする。
まあ、もうすぐ幼馴染のお姫様の結婚式だからな。こうして真剣になるのも無理は無いような気がしないでもない。
だが、私にはそんなもの関係ない。ルイズ一人が背負えばいいプレッシャーだからな。
私はこうしてのんきに剣でも磨いて高く売れるように頑張ればいい。この剣を売れば画材を買えるくらいの金は手に入るだろう。
金が余ればデルフに新しい鞘を買ってやってもいいな。どんなのを買おうか?とりあえず派手なのはダメだ。目立つのは好ましくない。
品がよく、なるべく自己主張しないような、そんな鞘がいいな。いや、ここはデルフの意見を聞き入れるべきだろうか?
「ねえ、ヨシカゲ」
「ん?」
不意の呼びかけに剣を磨く手を止める。呼びかけてきたのはもちろんルイズだ。この部屋にいる人間は私とルイズだけだからな。
さて、なんだろうか?何日か前にもこうして呼びかけられたことがあった。結局何も喋らなかったが。
「今日、なにか変わったことあった?」
「ああ、ゼロ戦の燃料が完成した。もうすぐ空を飛べるだろう」
「ふ~ん」
そこで会話が止まってしまった。結局ルイズは何が言いたかったのだろうか?自分が本当に喋りたいことは言ってないようだったが。
そんなことを思っていると、突然ルイズがベッドから起き上がりこちらを向く。そして指輪を外すとこちらに祈祷書を突きつけていた。
「ヨシカゲ、これってなにも書いてないわよね」
「ああ、書いてないな。前から知ってるけど」
いきなりなんだ?それよりなんでわざわざ指輪を外す必要があるんだ?うっおとしくなったのか?
「前に言ったわよね?一瞬だけ文字が見えることがあるって」
「あ?……ああ、そういえばそんなことも言っていたな」
たしか、何回も見えたから見間違いじゃないって確信して無視できなくなったんだったな。
「あのとき、その祈祷書に魔法がかかってるんじゃないかって結論にたどり着いたんだっけ?」
「そう、条件を満たせば見れるんじゃないかってことになったわ」
そうだっただろうか?どうでもいいことだからすっかり忘れていた。
「それで、ちょっとこれ嵌めてみてくれない?」
ルイズはそういいながら近づいてくると私に外した指輪を差し出してきた。何故だ?もしかして、
「この指輪を嵌めることが見る条件なのか?」
「いいから嵌めなさいよ」
やれやれ、説明くらいしろよ。
そう思いながらも指輪を受け取る。まあ、実際これを嵌めて祈祷書が見えるかどうかは興味がある。 見えたとしても私はこの世界の文字は殆んど読めないけどな。
しかし、嵌めろといわれても穴が小さい。私に嵌められるだろうか?嵌る指なんて小指しかないだろう。右手の小指はまだ骨折が治りきっていないので必然的に左手だな。
手袋を外し指輪を小指に通してみる。以外にもすっぽりと嵌ってしまった。嵌らないのでは、という思いはどうやら杞憂だったらしい。
「はい、これ」
私が指輪を嵌めたのを確認したのか、ルイズが祈祷書を私に渡してくる。
私はそれ受け取ると適当にパラパラと捲ってみる。捲ってみる。捲ってみる。捲ってみる……、やがて静かに祈祷書を閉じた。
そしてルイズに祈祷書を差し渡す。
「ダメだな。何も見えない。だが、一体どういうつもりで私に読ませたんだ?」
さらに指輪も外しルイズに渡す。ルイズは指輪を受け取ると自分の指に嵌めなおす。
初めルイズが指輪を差し出してきたときは、その指輪を嵌めていれば祈祷書に書いてある(と思われる)文字が読めるようになると思っていたんだが違っていた。 では、何故ルイズは私にこんなことをさせたのか?検討もつかない。
ルイズは私の質問を聞いているのかいないのか、祈祷書を何気ないように開く。ちっ!
「おい、ルイズ。聞いてん「わたしには」……え?」
ルイズに質問に答えるように言おうとすると突然ルイズが口を開き喋り始めた。
「わたしには、見えるわ。この『始祖の祈祷書』に書いてある文字が」
「なんだと?私が見たときは確かに何も見えなかったぞ?」
ルイズの目を見る限り嘘は言っていない。だとしたら本当にルイズには見えていることになる。
わざわざ指輪をつけていることから指輪をつけなければ見れないことは確実だ。だとしたらなぜ指輪をつけていた私には見なかったんだ?
「『序文。我が知りし真理をこの書に記す』」
「そう、書いてあるのか?」
「うん。古代のルーン文字でね。授業を真面目に受けてたから読めるわ。で、今のは書いてある文字のほんの初め」
「……なんでルイズだけ読めるんだ?私が指輪を嵌めたときは文字なんて全く見えなかったのに、ルイズが嵌めると見えるなんておかしくないか?」
もしかしてメイジかそうじゃないかが分かれ目なのか?私はメイジじゃないから読めない。ルイズは(一応)メイジだから読める。
そう考えれば辻褄が合う。
「ヨシカゲが読めないのは資格が無いからよ」
「資格だって?」
「これを読めばわかるわよ。いい?『この世のすべての物質は、小さな粒よりなる……」
ルイズが祈祷書に書かれているという文字を私に読み聞かせてくれる。
その内容は『虚無』という系統についてだった。虚無という言葉には覚えがある。まず初めに思いつくのは虚無の曜日だ。しかしこれは明らかに関係ない。
次に思いつくのは授業内容だ。前にその中で虚無という言葉が出てきたことを憶えている。あのとき、虚無は確か伝説と言われていたはずだ。
つまり『始祖の祈祷書』は伝説が記されていることになる。
この始祖の祈祷書を読むには資格がいるらしく、その資格が無いものはたとえ指輪を嵌めようと何も読めないらしい。
資格がある人間は『四の系統』の指輪を嵌めれば見えるらしい。『四の系統』というのは『火』『水』『風』『土』のことだろう。
だから『四の系統』の指輪は4つあると予測がつく。そのうちの一つがルイズが嵌めている『水』のルビーなのだろう。
そしてルイズは資格を持っていた。そして『水』のルビーを嵌めたことにより『始祖の祈祷書』が読めるようになったというわけだ。
なぜ資格が無ければ読めないのか?どうやら虚無というのは非常に強力な魔法らしく、精神力を大きく消費するらしい。
そして、それは時に命すら縮めかねないほどらしいのだ。まさに諸刃の剣って感じがする。
これを記したのはブリミル。ブリミル・ル・ルミル・ユル・ヴィリ・ヴェー・ヴァルトリ。ブリミルといえば確か魔法使いの祖だったはずだ。
「オッたまげた……。そんな内容が書いてあるなんて」
「わたしだってはじめに見たときは相当驚いたわ」
「資格ってのは内容から察するに虚無が使えるやつってことだろう?だとしたらルイズ、お前は伝説の再来ってことになるじゃないか!」
まさか才能ゼロのルイズがそんなすげえ魔法を使える素質を持っているなんて。
そうだ。私は『ガンダールヴ』だ。『ガンダールヴ』は伝説の使い魔と言われている。つまり私も伝説だ。
なんだかどこかできすぎているような気がする。これは偶然なのか?
だが、指輪が無きゃ読めない本に注意書きを書くなんてブリミルは間抜けか?読めなきゃ注意書きの意味が無いだろう。
「でも、今一つ信じられないのよ。わたしの魔法はいつでも爆発するわ。その理由は誰も言えなかった。
それはわたしが『虚無』の系統だからで、他の系統魔法が使えないから失敗してたって考えれば説明はつくかもしれない。でも、ほんとにそうかしら?
魔法が失敗してたのは単純に私にその才能が無いからかもしれないじゃない。これが読めるのも何かの偶然って考えられない?それか偽物かも……
だって『虚無』の系統って言ったら伝説よ?失われたはずの、伝説の系統なのよ!?そんな簡単に信じられるわけが無いじゃない」
ふむ、ルイズたちにとって魔法というもには日常だ。あって当たり前のもの。そんな中にあってはならないものが虚無だ。なんといっても伝説だからな。日本なら、日本神話は実話です、というぐらい信じられないもんだろう。まあ、それはともかく。
「何かの偶然で読めるなんてことは無いんじゃないか?魔法のことについてはお前の方が詳しいから強くは言えないが、魔法はそんなに曖昧なもんじゃないだろう?
そして偽物かどうかは、たしかに私たちには確認する術がない。だが、その『始祖の祈祷書』は王室に伝わる伝説の書物だったな?だったら偽物である可能性も低い
王室ってのは大抵歴史がある。だから歴史ある物も受け継がれているはずだからな。その『水』ルビーがいい証拠じゃないか」
『始祖の祈祷書』に『水』のルビーの記述があるということは、その指輪もまた伝説の道具ということだ。それを王女が持っていたということは王族が受け継いできたということだろう。しかし、そんな受け継いできたものを簡単にあげちまっていいのか?なんだか後先考えてないような気がする。
そういや、『始祖の祈祷書』は虚無について色々書かれてるんだよな?
「ルイズ、他にはどんなことが書いてあるんだ?」
「え?」
「『始祖の祈祷書』にだよ。虚無のことが書かれているんだろ?だったら呪文やなんかが書かれていても不思議じゃない。それで呪文を唱えれば一発で『虚無』の使い手かそうじゃないかがわかるじゃないか」
「……『以下に、我が扱いし『虚無』の呪文を記す』」
「やっぱり書いてあるじゃないか!」
さて、『虚無』の魔法ってなんなんだ?『火』『水』『風』『土』とは全く違う魔法。興味がないわけが無い!
しかし、その思いは容赦なく裏切られることになる。
「終わり」
「は?」
「だから、ここまでしか書いて無いの。もしかしたら、まだここまでしか読めないのかもしれないけど」
「………………」
使えねえ……。


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