ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

第五話(15) 恋人の資格

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
 第五話(15) 恋人の資格

「助太刀するぞ、マリコルヌ!」
FFが指で銃の形を構える。
「いいや、手を出さないでくれ!これはルイズの誇りをかけた決闘なんだッ!僕一人でやる!」
それをマリコルヌは断ったが、対するワルドは苦笑する。
「馬鹿が、貴様のような肥満体に何ができる。手伝ってもらえばよかったものを…。
僕は実力の四分の一も出す必要がないと踏んでいるね。さあ、かかってこいよ!」
ワルドは余裕綽々に挑発する。
(先程肥満体が言っていた、『ルイズはまだ初めてを失っていない』発言もどうせはったりだろう。
もし本当だとしても、肥満体の息の根を止めてしまえば真相は闇の中だ。
ルイズはついてこざるを得なくなる。そして二度目をしてしまえばいいのだ。
二度目なら二度目でいいし、その二度目が初めてでも、それが終わった時点では初めては既に失ったことになる。
結局ルイズは僕のものだ。誰にも渡さない。例えどんな手を使っても…。)
ワルドはマリコルヌの発言中も常に頭を働かせていた。
「エアカッター!」
マリコルヌが先手を決める。
「フフフ、やはりその程度だな。貧弱ゥ貧弱ゥゥゥゥ。これでもう終わりだ、ライトニング・クラウドッ!僕の手にかかって死ねることを光栄に思え!」
「な、何だってぇ。もうすでに唱え終えていた。僕が話している間に。あの短時間で。ごめんルイズ、役不足だったよ。」
「マリコルヌゥゥゥーーーッ!」
ルイズの叫びが木霊した。

「大丈夫だルイズ。よく見てみろ。」
「へ?」
FFの言葉に目を背けていたルイズがマリコルヌのほうを見る。
すると焼け焦げたFF下っ端がいる。マリコルヌ自身、死んだと思っていた自分が生きていることに驚く。
そして、現状を把握し、FFに感謝する。
「ありがとう、FF。」
「一人で戦う…っていうのは、ある程度実力のあるヤツがいう言葉だ。例え1%でも勝率があるヤツがなぁ。なんてったって敵にやられちゃあお仕舞いだからよぉ。
…ここは協力してルイズの尊厳をとり戻すところなんじゃあないのか?任務は遂行する。ルイズの尊厳は取り戻す。
両方やらなくちゃあならないのが仲間の辛いところだ。」
「わかったよFF。僕に協力してくれ、FF、ミス・タバサ。」
FFが指を構え、タバサは無言で頷く。
「第二ラウンドだ、ワルド子爵。」
「全員まとめて家畜の餌にしてやるよ。勿論とことんいたぶってなぁ!ユビキタス・デル・ウィンデ。」
ワルドが三体に分裂する。偏在だ。
「一人一体相手だ。感謝したまえ。相当のハンデだぞ。フフフフ…。」
偏在を含めた3体のワルドがそれぞれの対象に向かって攻撃を仕掛けていく。そしてそれに各々が対抗していく形になっていった。
タバサは完全に押されてはいるものの、何とか耐えている。
FFはダメージをそんなに恐れる必要がないため、ある程度攻めにまわることはできるようだ。しかし大抵防がれてしまう。その上ライトニング・クラウドには細心の注意が必要だ。食らった時点であの世逝き決定だからだ。
マリコルヌは本当にいたぶられている。少しずつエア・ニードルの風の刃で切り刻まれ、服が少しずつ、だが確実に真っ赤に染まっていく。
「私も参戦しよう!」
先程まで展開についていけず、立ち尽くしていたウェールズが杖を拾い、マリコルヌをいたぶっていたワルドに向かう。
「邪魔だ、引っ込んでいろ!あとで楽に始末してやる!」
その間でさえも呪文を唱え、エア・カッターでウェールズの耳を削ぎ落とす。
しかしウェールズは苦悶の表情を浮かべながらも向かってくる。
「ほう、意外と根性があるようだな。だが、これでどうだ?」
今度は杖を持っているほうの腕を切り落とす。だがウェールズは腕を失っても向かってくる。
「興ざめだ。しつこい男は嫌われるぞ。退場していろ。」
遂に飽きてきたワルドが、ウェールズを蹴り倒す。その間も何事もなかったようにマリコルヌをいたぶり続けている。
「じゃあまずは肥満体から片付けてやろう。…ライトニング・クラウドッ!」
「フライ!」
「何ィッ!?」
ルイズがフライを唱えた。ワルドはそのことに驚くが、間髪いれず爆発が起こる。
ワルド本体が巻き込まれ、残りの偏在達も揺らいで消えた。
「ルイズ、どうして邪魔をするんだ。夫の邪魔をする妻が何処にいる!君の母親のヴァリエール公爵夫人を見習えッ!
攻撃するならあの汚らしい阿呆どもじゃあないか。」
「貴方は私の知っている昔のワルドじゃあないわ。これ以上、貴方に私の大切な人が傷付けられるのを見ていたくないっ!」
ルイズは涙で真っ赤に晴らした目頭でワルドをキッと睨む。
「君の知っている僕か…。僕は昔から変わらないよ。君のことを誰にも取られたくない。
君は僕だけを見ていればいいんだ。僕に従っていれば何も間違いなんてない!
結婚ももうすんだじゃあないか。強がるなよ。一緒に世界をとるんだ。レコン・キスタは過程に過ぎない。さあ。…さあ!」
ワルドはおぞましい笑い声をあげながら、立ち上がる。
「ワルド…、もう貴方に愛しい感情なんか砂漠の砂一粒もないわ。
牢獄の中で詫びなさい。」
「フフフ、牢獄の中だとぉ。姫殿下は僕にそんなことはしないさ。寧ろ牢獄に入るのは君のお友達のほうだ。
姫殿下に伝えておこう。彼らは反逆者だとね。フフフフ、ハハフハ、フハハハハハハ!ッ……。」
邪悪な笑い声を上げたワルドが急に黙った。そして次の瞬間別の言葉が紡がれる。
「ハ~レルヤ~♪」

ルイズたちは何が起こったのか全くわからずに立ち止まっているが、FFにだけは確かにそいつは見えていた。
「君ノ記憶ヲ見セテ貰ッタヨ。君ハクロムウェルカラノ『虚無ヲ連レテコイ』トイウ任務ヲ、放棄スルツモリダッタヨウダネ。
下ラナイ野心ダ。後デ君ノ記憶ハ一部預カラセテモラウヨ。ソシテアノ『ピンク髪』ガ虚無トイウワケカ。」
FFが絶対に忘れるわけのないその姿。
「…お、お前は…何故此処に!?」
FFの驚いた声に何事かと思うルイズ。しかし何も見えない。
また、なぜかウェールズが立ち上がりマリコルヌのほうに向かっていく。
しかし、タバサは今までに鍛えられた直感で何かヤバイものを感じて咄嗟に動いた。
「危ない。」
そう言ってマリコルヌを突き飛ばした瞬間、ウェールズの体が破裂し、タバサにウェールズの骨が突き刺さる。
「ウェールズノ始末ハ完了シタ。フーケ、オマエノ記憶カラ『アルビオンノ虚無』ハ判明シタカラナ。アルビオンノ王族ハモウ必要ナイ。
タバサガ巻キ込マレテシマウノハ予想外ダッタ。邪魔ナデブヲフッ飛バソウト思ッテタンダガナ。」
「大丈夫かい、ミス・タバサ。一体なんだったんだ。FF、早く治療を!」
マリコルヌは叫ぶがFFはある方向を睨みつけたまま動かない。
目の前でウェールズが破裂し、肉塊になったのを見て、ルイズは腰を抜かして震えた。失禁もしている。
「フーケ、邪魔ニナルヤツラヲ始末スルノガ君ノ役目ノ筈ダロウ。ドウシテ其方側ニツイテイル。
早クヤレヨ。私ハピンク髪ノ虚無ノDISCニヨウガアル。」
そいつはルイズに向かって近づいてきている。それをとめようとFFはFF弾を放つ。
「何故此処にいると聞いているんだァーーー!喰らえ!ホワイト・スネイク!」
「アノ技ハッ!オマエハモシカシテフー・ファイターズ!何故此処ニイルンダ。
因縁ハ総テ置イテキタハズ。コレモ神カラノ試練ダトイウノカ。」
ホワイトスネイクは何事もなかったように弾を腕ではじく。
そしてルイズにその腕が迫る。
「ルイズゥーー!よけるんだァーーッ!」
「へ?何?何なの?」
ホワイトスネイクが見えないルイズは腰を抜かしたまま戸惑っている。
ホワイトスネイクの腕が、ルイズまであと1サントのところまで来たとき、マリコルヌが飛び込んできた。
「よくわからないけど、ルイズは僕が守る!」
ルイズのかわりに魔法の才能『風のDISC』を抜かれてしまうマリコルヌ。
「チィ。クズノDISCカ。マアイイ、ソノママ『虚無ノDISC』モ貰ウゾ!!!」
「いいや、渡さない。覚悟しろホワイトスネイク!」
ルイズに気をとられていたホワイトスネイクは、そのすぐ後ろにまでFF弾が迫っていることに気が付いていなかった。
そのまま直撃を許してしまうホワイトスネイク。その隙に、先程の戦闘で皹が入っていた壁を壊し、シルフィードが入ってきた。
「きゅいきゅいーーっ!」
シルフィードは全員を背中に乗っけると、全速力で壁の穴から逃げていった。
「イイダロウ、マダ時間ハアル。先ニアルビオンノ『虚無ノDISC』ヲ戴コウ。」
ホワイトスネイクは本体に戻っていった。

その頃シルフィードの上では…。
タバサがFFに治療されていた。あのままアルビオンに残るのは危ないので、一行はラ・ロシェールに向かうことにしたのである。
「マリコルヌ、魔法を使ってみてくれないか?」
「別にいいけど。何故?」
急に変なことを聞くFFを不思議に思いながらも、マリコルヌはフライを使う。何も起こらない。レビテーションを使う。何も起こらない。
「???」
疑問が沸き起こる一行。それに対しFFが口を開く。
「恐らくあの時、みんなには見えないやつ(スタンドということは伏せておく)は、マリコルヌの魔法の才能を抜いていったんだ。
だからマリコルヌは魔法が使えなくなった。そしてそいつはルイズの才能を狙っているみたいなんだ。」
突然のことに一行は理解できない。
「どうしてそいつは私を狙うのよ。恥ずかしいけど私には魔法の才能なんてないし…。」
ルイズが話を切り出した。
「いいや、それは違う。私もワルドが言ったように虚無の系統なんだと思う。
そいつも虚無を狙っているといっていた。それに本当に才能がないのなら、マリコルヌのように何も起こらないはずだ。爆発も何も、な…。」
なんだかんだで納得はしたようだ。そしてそいつの名前と能力だけを教える。
FFはフーケの体をのっとっているのでこの世界の常識はわかっている。ここはスタンドではなく、『亜人』や『先住魔法』と説明したほうが通じやすい。
FFの的を得た説明は、とてもわかりやすかったようだ。話は一段落する。
ルイズは内心へこんでいるが、以前マリコルヌに言われたことを思い出し、無理して笑って話を切り出す。
「ねぇマリコルヌ、あなたワルドとの闘いのとき言ってたけど、重婚って、何であんたと結婚すること確定なのよ。」
どちらかというと引き攣った笑いだ。途中、以前マリコルヌに言われたことで立ち直ろうとしていることに恥ずかしくなったために、このような話題になったのだ。
ラ・ロシェールについた一行は、タバサ、マリコルヌを治療し、翌日、アンリエッタのところに出向いていった。
「ルイズ、ご苦労様でした。それに結婚おめでとう。ワルド子爵も喜んでいたでしょう。」
「へ、ちょ、姫様違いま…」
「二人は愛し合っているんですもの。羨ましいわ。重婚なんて永遠にありえないのでしょうね。」
「姫様!ワルドは裏切り者です!レコン・キスタの一員なんです。そんな人とは結婚しません!」
「何を言っているのルイズ。ワルド子爵は裏切り者なんかじゃあないわ。きっと貴方の勘違いよ。
重婚なんて考えていませんよね。貴女たちの結婚はわたくし自らも認めているのですよ。」
アンリエッタの優しかった笑顔が、急におぞましいものにかわっていったのをルイズは感じた。
「ひ、姫様……。」
そういってルイズは退出し、泣いた。何か変わってしまった姫様のことを。
でもそれに口を出せない自分のことを。ルイズはここで涙を総て流してしまいたかった。
みんなの前では笑っていられるように…。


ゼロの奇妙な使い魔~フー・ファイターズ、使い魔のことを呼ぶならそう呼べ~
    [第二部 アルビオン、その誇り高き精神]  完


エピローグ

アンリエッタは暗い部屋の中に入っていった。
「リッシュモン高等法院長、そこにいますか?」
「何でしょう姫殿下。」
そこには強欲そうな男が一人、余裕の表情で窓から外を眺めていた。
「戦争の準備は整っていますか?」
「もちろん、着実に進んでおります。」
二人はなにやら密談をしているようだった。
「わたくしの邪魔になるものは…みな……。」
「総討ち死に…ですな。」
「わかっているのならいいのです。金額に見合った働きを期待していますよ。」
「当然です。期待は決して裏切りません。」
それだけ確認すると、アンリエッタは部屋を去っていく。
そののち、アンリエッタはゲルマニア皇帝との婚約を解消し、王位につくのであった。


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー