ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

第一話(11) 王女のために!

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匿名ユーザー

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本日はコルベールの授業…のはずであったが、ヅラを被ったコルベールの出現により事態は急変する!
トリステインの姫殿下・アンリエッタが学院に行幸するというのである。
授業は中断し、生徒たちは出迎える準備に取り掛かる。
これこそが日常が魔界に変わるとき。そう、平穏な日常の崩壊の開始の合図になろうとは誰一人予測していなかった。

ゼロの奇妙な使い魔~フー・ファイターズ、使い魔のことを呼ぶならそう呼べ~
    [第二部 アルビオン、その誇り高き精神] 第一話(11) 王女のために! その①


その日、ルイズは寝覚めが悪かった。マリコルヌの愛の言葉が五月蝿かったからではない。
なぜなら変な夢をみてしまったからである。それは昔の夢…

そこは小船の上。ルイズは小さな頃、嫌なことがあると此処に逃げていた。
そうしたら憧れの子爵様が迎えに来てくれるのだ。
しかしここからが昔の出来事と異なっている。
子爵様がヴァリヴァリと半分に裂けて中から黒いウジャウジャ。
つまりフー・ファイターズが現れる。
更には湖全体が真っ黒になり盛り上がってくる。
そうして飲み込まれてしまうのだ。湖の中へと…

ルイズは目が覚めた。
傍らにはカムフラージュの為にフー・ファイターズがつくっておいた、フー・ファイターズ(下っ端)がいる。
フー・ファイターズ本体に比べると少々不細工な作りになっており、人語も喋らない。
このことを知っているのは、ルイズのほかにオールド・オスマン、マリコルヌ、タバサ、そしてコルベールである。
因みにコルベールは前回のフーケ事件の報告の際に、出番がなく空気と化していたが、一応部屋にはいたので知っているのである。
そして以上が今朝のできごとである。


 第一話(11) 王女のために! その②

時は戻って、アンリエッタが学院に到着。
主に男子がアンリエッタ姫殿下、女子が魔法衛士隊隊長ワルドを見ている。
正確には少し違うが、それはルイズも例外ではない。例え寝覚めが悪くたって見てしまう。寧ろ例外は別のところにいる。
まずは勿論無関心なタバサ。次にルイズを見つめているマリコルヌ。
そしてお互いに抱き合い、熱い口づけを繰り返す、ギーシュ・モンモランシーのバカップルである。
この四人を除いて大抵の人物が盛り上がったお出迎えが終わり、そうこうしている内に夜になる。
夜と言ったらアンリエッタの時間である。
フードを被り、見つからないようにと親友ルイズの部屋に向かう。
そうして部屋の前に着き、規則正しいノックをする。
そうしたら扉が開く。………はずである。
普通は開く、例え規則正しいノックじゃあなくても。
だけど開かなかった。だから無理やり開けた。
そうするとアンリエッタの目の前には、見たことのないグチュグチュした黒い化け物がいる。
アンリエッタは勢いよく扉を閉め、扉を背にして考える。
「えーっと、あれは…そうよ!きっとルイズの使い魔さんなんだわ!昔から何だか変わってたところがあったし…。」
そう考えてアンリエッタはルイズの部屋に入る。不法侵入だ。そんでもって話しかける。
「今晩は、使い魔さん。」
「フショアアァァァア。」
「ルイズはお元気ですか?」
「フーフォアアァァアア。」
暫くこんな感じでやりとりが行われた後、アンリエッタは会話が成立していないことに漸く気が付いた。


 第一話(11) 王女のために! その③

その頃ルイズは…
FFと一緒にマリコルヌと外にいた。
「おーいルイズ、僕のルイズ。」
マリコルヌが話しかけてもルイズは心此処に在らずだ。
「なんなら私の水を分けてあげようか?」
コップに注いだ水を差し出すFF。やはりルイズの反応はない。
なんだかんだで延々と惚けたあと、ルイズは自分の部屋に向かって歩き出した。
部屋の前に到着し、ドアを開けてルイズはあることに気が付いた。
誰かが自分のベッドで寝ていることを。ちなみに横ではFF下っ端が突っ立っている。
ルイズは誰だろうと思って近づいてみる。
そうするとどこかで見たことのある人物であることがわかる。
(姫様!姫様が寝てる。)
そこでタイミングよくアンリエッタが目を覚ます。
「…んっ、……!!ルイズ、ルイズ、懐かしいルイズ。本当にお久しぶりね。」
「ひ、姫殿下、恐ればせながら何故このような下賎な場所に!?」
「そんなに畏まらないでちょうだい、ルイズ・フランソワーズ。わたくしたちはお友達ではなかったの?」
「もったいないお言葉でございますわ、姫殿下。」
ルイズはとても緊張した面持ちで話している。
それをよく思わないようで、アンリエッタはそのことを悲しみルイズに以前のように話すように懇願した。
アンリエッタの懇願に対してルイズは、感無量と言った感じで表情にその心のうちを映した。


 第一話(11) 王女のために! その④

「どうかされたのですか、姫様?」
数分の間、懐かしい話に花を咲かせていた二人であったが、突然アンリエッタの表情に影が差していることに気付き、ルイズが切り出した。
「わたくし、結婚するのよ…。」
「………おめでとうございます。」
先ほどの表情から、結婚はアンリエッタが望んだものでなく政略結婚であることをルイズは察した。
素直に喜ぶことのできることではないが、ルイズは形式的に祝福をする。
「…それで、…そのことで頼みたいことがあるのです……。」
「何ですか、姫様?」
「…このことは誰にも話してはいけません。わたくしにはあなたみたいに頼める人はほとんどいないのです。」
「もちろんです、姫様!なんなりとお申し付けください。」
ルイズはやる気満々だ。
「わたくしはゲルマニア皇帝に嫁ぐことになったのですが…」
「あの成り上がりのゲルマニアにですか!?……」
ルイズはもう少しでゲルマニア批判を続けるところであったが、キュルケのことを思い出し、しょんぼりと押し黙ってしまった。
だがそんなことはお構いなしと言うか、天然で気付いていないアンリエッタは最近の政治情勢を語りだした。
話を要約するとアルビオン王家が反乱軍の貴族派によって倒されそうだということと、貴族派はこの婚姻を基とした同盟を望んでいないという事である。
「もしかして婚姻を妨げる材料がアルビオンにあるということですか?」
気を取り直したルイズが心配そうに尋ねる。
「おぉ、始祖ブリミルよ…。この不幸な姫をお許しください………。」
ルイズは私が何とかするとでも言わんばかりに興奮している。
そこでアンリエッタは告げた。アルビオン皇太子ウェールズにしたためた、とある一通の手紙の存在を…。


 第一話(11) 王女のために! その⑤

「それを取り返してくればいいんですね?」
ルイズは自分がやることを理解した。『愛=理解』だ。しかしアンリエッタは心配そうに手を握り言った。
「いいえ、やっぱり駄目よルイズ…。無理よ、無理だわ。あんな危険な所にお友達であるあなたを行かせるだなんて…。きっとわたくしはあせっていて混乱していたんだわ。今のことは聞かなかったことにしてください。」
しかしルイズはやる気満々だ。
「大丈夫です!姫様の頼みであるのならば、たとえ蛙や蝸牛の中にだって行きますわ!それになによりお友達ではありませんか。私に任せてください。」
ルイズのこの言葉を聞き、アンリエッタは感動してルイズに抱きついた。
「あぁルイズ、わたくしの大切なお友達…。絶対に生きて帰ってきてくださいね。」
「もちろんです、姫様。大船に乗った気でいてください。明日の早朝には出発いたします。」
それを聞いたアンリエッタは自らの指から水のルビーをはずし、ルイズに渡した。
「もし、旅の途中でお金に困ったらこれを質にでも入れてください。あなたの成功を祈っています。始祖のご加護がありますように…」
ルイズが頷いて返事をし、アンリエッタが退出をしようとしたとき、窓から丸いものが突っ込んできた。マリコルヌだ。
「僕のルイズ、さっきは元気がないようだったけど大丈夫かい?」
二人はきょとんとしている。するとマリコルヌが小瓶を取り出してルイズに渡した。
「これは元気の出る香水だよ。ミス・モンモランシに譲ってもらったんだ。早く君の笑顔を見せてね、僕のルイズ。」
因みにマリコルヌはアンリエッタに気付いていない。そこでアンリエッタは口を挿んだ。
「あなたはもしかしてルイズの恋人なのですか?優しい恋人を持ってよかったですね、ルイズ。」
「ちちち、違います姫様!こいつはただのクラスメイトです!!けけけ決してそのような関係じゃあありません。」
そしてマリコルヌもアンリエッタに気が付き、跪く。
「ひ、姫殿下、どうしてこのような場所に!?」
「ルイズに用があったのです。…そうだわ、貴方もルイズに付いていってくれませんか?ルイズととても仲が良さそうですし、きっととても信頼できる人なのでしょうね。」
「ひ、姫様、こいつとは姫様の思っているような関係じゃあありませんわ!」
「そんなに照れなくてもいいのよ、ルイズ。言わなくてもわかってますから。」
「姫様ったら~。本当に違うんですってばー!!」
結局アンリエッタには理解してもらえず、マリコルヌもお供することに決まってしまい、ルイズはため息をもらすのだった。


 第一話(11) 王女のために! その⑥

「オスマン学院長、では、こちらをお願いします。」
「うむ、確かに受け取ったわい。」
ルイズの部屋から出たアンリエッタが向かったのはオスマンのところであった。
城の中には貴族派の内通者がいるらしく、最近は重要な書類や古くからある貴重なものまで盗難が続いているという。
だから密かにアンリエッタは、始祖の祈祷書を数少ない信頼の置けるものの一人、オスマンに預けにきたのだ。
「では、ルイズが帰ってきたらしっかり渡してくださいね。巫女と詔についての説明も宜しく頼みます。…それじゃあわたくしはもう一人訪ねに行かなければなりませんので。」
そういってアンリエッタはオスマンのところをあとにした。
次にアンリエッタが向かったのは魔法衛士隊隊長ワルドのところだ。
「これはこれは姫殿下、どのようなご用件で?」
「あなたに頼みたい任務があります。」
「ふむ、何でも仰ってください。どんな任務でもこなしてみせましょう。」
ワルドのこの言葉を心強く感じ、手紙奪還の任務を話す。
するとドアを突き破り衛兵が入ってきた。
「アンリエッタ姫殿下、大人しくこちらまで来てください。」
アンリエッタはこの衛兵がアルビオンの手先だとすぐに理解した。
メイジ二人にたった一人で挑むなんて頭脳がマヌケとしか思えないのだが、衛兵は手を差し出す。
ドアの側にアンリエッタがいたのでワルドと衛兵に挟まれる形になっている。
緊迫する空間。ワルドはその二つ名『閃光』の如く、素早く呪文を唱えエア・ニードルを発生させて一直線上に向かっていく。
このような場所でライトニング・クラウドは使い辛いし、エア・カッターでは巻き込んでしまう恐れがあるからだ。
「ワルド子爵、早くあの賊を捕らえてください!」
ワルドのエア・ニードルが対象の心臓に突き刺さる。
アンリエッタは一瞬で終わるだろうと思っていた。だからアンリエッタ自身は杖をしまったままだったのだ。
しかし、それが間違いだと言うことにそのあとすぐに思い知ることとなった。


 第一話(11) 王女のために! その⑦

相手の衛兵は無傷だ。なんともない。血の一滴すらも流していない。
それもそのはずである。当然の結果だ。
ワルドの攻撃の対象は衛兵ではなく……
アンリエッタだったのだ!!!
アンリエッタは一瞬で終わると思っていた、衛兵相手に…。ワルドはスクウェアクラスだ。
だからそう思っていた。それが間違いだったのだ。
いや、一瞬で終わったことには違いなかった。ただしアンリエッタがであるが。
「い…ったい、…な、な…にをする…んで…すか………」
アンリエッタは心臓を突き刺され、胸の位置からその綺麗な服は真っ赤な鮮血に染まっていった。
ワルドが杖を引き抜くと、アンリエッタは力なくその場に倒れた。
「死とは身近な友人だということを、彼女は自身で理解をしてくれたようだ。」
先ほどの衛兵が近づいてくる。その顔は、グロテスクにもグチャグチャになって新たな形を形成していっている。
その顔はいつのまにかレコン・キスタ軍の総司令官オリヴァー・クロムウェルのものとなっていった。
「まさかレコン・キスタ総司令官がこんなところにいるとは思うまい。」
そう言いながらアンリエッタの遺体に近づく。そうすると先ほどまで息絶えていたはずのアンリエッタが起き上がり、クロムウェルに跪く。
クロムウェルが靴を嘗めろと言うと靴を嘗めた。これにはワルドも内心顔を歪めた。
「この虚無の力と先住魔法クヌムがあれば、我らの勝利に間違いはないだろう。そう思わないかね、ワルド子爵。」
汚れた笑いが響き、衛兵は仕事に戻っていった。

to be continued…

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