ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

使い魔は手に入れたい-31

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匿名ユーザー

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食事も終わり、この家にいるそれぞれが自分たちの好きなことをしていた。
私は自分にあてがわれた部屋のベッドに腰掛け爪を鑢で擦っていた。
もちろん、切った爪の形を整えるためだ。
ちゃんと整えていないと何故だか知らないがイライラする。今まで知らなかったがきっとそういう性分なのだろう。
爪を整え終え立ち上がり、ベッドの近くの小さな机の上に鑢を置いておく。
鑢を返すのは別に明日でも構わないだろう。
わざわざ返しに行くのも面倒くさい。
立ち上がったついでに壁に立て掛けておいたデルフを手に取り再びベッドに腰掛ける。
そしてデルフを鞘から喋れる程度に引き出して自分の隣に置いた。
なぜそんなことをするかというと、もちろんデルフと喋るためだ。
こうしたデルフと喋る時間を最近は頻繁に設けている。
もちろんデルフとの距離をより縮めるためだ。
このまま頻繁に喋るようになればさりげなくデルフと呼びかけれるようになるかもしれない。
あわよくばさりげなく名前で呼ぶようにいえるかもしれないしな。
「おい相棒。あの猫どっか行っちまったぜ」
「知ってるよ。私のところに来たからな」
いつも思うがデルフはどうして喋れるようになった瞬間いつも話しかけてくるのだろうか?
そんなに喋るのが好きなのか?それはそれで別に構わないんだが。
「相棒のところに行ったんならどうして戻ってきてねえんだ?」
「悪戯好きにはお灸も必要だろ?」
「何があったか知らねえけど、やりすぎんなよ。相棒はどうもやりすぎる気があるからな」
デルフがそういうのならそうなのかもしれないな。
「相棒はさ、なんていうか自分のことをあんまり知らないって感じがするな」
「えっ?」
デルフがいきなりそんなことを言い出したので思わず声が出てしまう。
落ち着け私。
「どうしていきなりそんなことを?」
「いんや、なんとなく。ただそんな感じがしただけだ。深い意味なんてねえよ」
デルフを見詰めてみる。
デルフの言う通り私は自分のことをあまり知らない。
私には人生があった、はずだ。
はずというのも私は生前の記憶を殆んど失っているからだ。
そしてデルフは、自分が言うには長く存在し続けたせいで記憶が劣化して忘れていることが多々あるらしい。
それは私と似たような状況ではないだろうか?
だから本能的に私のことを察した……かもしれない。
「どうしたんだ相棒?急に俺を見詰めだしたりなんかして」
「いや、なんでもない」
「ふーん。まあいいけどね」
お前のことを考えていたなどと素直に言えるものか。
まあそんな風にデルフとの会話を楽しんでいると突然ドアが開く音がした。
「誰だ?」
ドアのほうを見てみるとドアが少し開いていた。
ノックの音はしなかった。普通この部屋に来るのはシエスタかルイズくらいなものだろう。
しかしそのどちらもノック位するはずだ。いきなりドアを開けたりはしないだろう。
暫らくドアのほうを向いていたがドアは開いているだけで誰も入ってくる気配が無い。一体どういうことだろうか?
いくらこのドアが軽く押せば開くからといって勝手に開くということは無いだろう。
もしかしてガキの悪戯か?
そう思い始めたとき、ドアの下のほうから何かが出てきた。
それは……ガキ共に渡してきた子猫だった。
ふかふかだった毛はその面影を残さずにあちらこちらに跳ね返っており、憔悴してますと言わんばかりにヒゲは垂れ下がっている。
右の前足にはリボンのような包帯のような何かが絡まっており、それは左の後足に結び付けられていた。
左の前足にもそれはついており、左の前足は尻尾と結び付けられていた。
さらによく見ると右の後足は右の前足に結び付けられている。
いや、好きにはしていいいと言ったが、
「さすがに可哀想だな」
きっとその格好でガキ共から逃れこの部屋までたどり着いたのだろう。
よくここまでそんなものつけながらよくここまでたどり着いたものだ。
立ち上がり猫を抱き上げドアを閉める。
そしてベッドに座ると猫に結び付けてあリボンのような紐を外していく。さすがにこれだけやられていれば、もう何かしようなんて気も失せる。
「やっぱりさ。相棒はその猫が好きなんだって。好きじゃなけりゃ相棒ぜってーそんなことしねえぜ」
私はこの子猫を殺したいと何度も思った。
しかしそれらはその場限りの一時的な感情に過ぎない。
もしその感情を実行に移してもある程度いじめただけで殺しはしなかっただろう。
私は、この猫が好きなんだろうか?
猫の乱れまくった毛を手で撫でながら整える。
今出せる結論としては、私はこの猫を嫌ってはいないな。デルフのように好きなのかどうかはまだ分からない。
「明日からちゃんとメシを食わせてやるさ」
とりあえず様子を見ていればそのうち分かるだろう。
毛を整え終え猫をベッドに置く。猫は余程疲れていたのかすぐに寝息を立て始めた。
それを見ながら私もベッドに横になる。
明日に備えてもう寝てしまおう。
「デルフリンガー。誰かが来たら起こしてくれ。私は寝る」
「あいよ」
デルフの返事を聞きながら私は毛布を被った。
ついでにこっそりと猫にも毛布を被せた。

そして私は夢を見た。


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