ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

使い魔は手に入れたい-28

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匿名ユーザー

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昼食は(猫に邪魔されることなく)無事終わった。
そして食後なので少しは休憩するのかと思ったがルイズが、
「すぐに出発するわよ」
と宣言した。
今すぐにか?休憩なし?
「休憩しないのか?」
「休憩してたら夕方までに中継所まで着かないわ」
中継所?
聞きなれない単語だな。
「中継所って一体なんだ?」
「あんた、そんなことも知らないの?」
「悪かったな」
知っていたら聞きはしないだろ。
「仕方ないわね。教えてあげるよ。中継所っていうのはね、簡単にいえば旅行者の家って感じかしらね」
「旅行者の家?」
「そう。それで……」
話を大体まとめるとこんなところだ。
馬で1日にいける距離にある、夜を無事に過ごすため、そして馬をちゃんと休ませるための大きな小屋のこと。
野宿は夜盗や獣に襲われて危ないんだそうだ。
旅行者が主に利用するので、旅行者の家というらしい。ちゃんと管理している人が住んでいるそうだ。
私もラ・ロシェールに行く際に利用したらしいがあの時は急いでいたから覚えてないな。
「わかった?あんたも野宿なんてしたくないでしょ?学院を出るのが少し遅かったから少し急がないといけないのよ。
中継所についてから出来るわ」
「はいはい」
私も野宿なんてしたくない。
ちゃんとしたところで眠れるなら眠りたい。
だからここはおとなしく言うことを聞いておくべきだろう。
そういえば、シエスタは私より疲れていたな。声を掛けておいたほうがいいだろう。
途中で倒れられても困る。
「シエスタ、お前は大丈夫か?」
「あ、はい。平気です。十分休憩できましたから」
シエスタの顔を覗き込む。
「へ?あ、ああの!ヨヨヨシカゲさん!?」
「嘘じゃないみたいだな」
「え?」
それを確認できたのですぐに見るのをやめる。シエスタに疲れの色は殆ど見えない。
これなら大丈夫だろう。顔が赤いのは気になるがな。
そういえば私が覗き込んだら赤くなったな。
普通顔が赤くなるのは体温が上昇するからだろう。じゃあどうしてシエスタの体温は上昇した?
特別暑がりだとは思えない。もしそうなら私が顔を覗く前から顔が赤いはずだからな。
考えながら馬へ向かう。
考えられるのは興奮したから。誰に?私に。何故?シエスタは私に『可能性』を見せてくれた人といった。
もしかしたらそれが憧れになったのかもしれない。
そして憧れの人に顔を覗かれたから、興奮して顔が赤くなった。
……強引過ぎるな。
さすがにここまで強引なのはダメだろう。
可能性として、異性慣れしていないから異性に顔を覗かれ恥ずかしくなったから赤面した。もしくは、心の準備もなく不意に顔を覗かれたため思わず赤面した。
この辺りが一番無難だろう。
考えがまとまったところで馬に乗ろうとする。すると最近になってみょんに身近になった視線を感じた。
足元を見るとそこには案の定子猫がいた。
もう慣れたな。
そう思っていると、クスクスと笑い声がしてきた。
顔を上げるとシエスタとルイズが笑いを堪えていた。一体なんだというんだ?
「なんで笑っているんだ?」
「だ、だって。その子猫がヨシカゲのあとをちょこちょこついていってて、まるでひよこみたいで……クスクス」
「ご、ごめんなさい。でもギャップが……フフ」
ルイズとシエスタは必死で笑いを堪えている。
つまりこの猫が私の歩く後についてきていたわけか。それの何が可笑しい。まったく、女のセンスは理解できない。
無視しよう。所詮男と女は違う生き物なのだ。考えが理解できるはずも無い。
そう思い、再び子猫に目を向ける。猫はただこちらを見ているだけだ。まったく、
「前にも言っただろ。一緒に来たいならそう言えって」
私は猫を掴み上げ自分の肩へと乗せ、そのまま乗馬した。
2人の少女の笑い声が聞こえる。女の笑い声なんて幻聴だ。そう信じ込む。
そして中継所を目指し、私たちは再び馬を走らせた。

日が暮れ始めた頃に、私たちは中継所についた。結構疲れたな。早く休みたいものだ。肩に乗っている猫すらすこし重たく感じる。
馬を馬小屋へ連れて行き、馬を休ませる。
そして私たちは中継所の中へ入った。中はそれなりに広く、机と椅子が沢山置いてある。そして何席かはすでに人が使っていた。
入り口の隣にはカウンターのようなところがあり、そこにヒゲをたっぷり蓄えた初老の老人が座っている。
ルイズがその老人の下へ行くので私たちもついていく。
「これはこれは貴族の旦那様ではございませんか。よくいらっしゃいました」
老人はルイズに気がつくとすぐに声をかけてくる。声は見た目に反ししっかりしていて聞き取りやすく、若い感じがする。
「個室は空いているかしら」
「へい。空いておりやす。最近は来る人も少なくて空きっぱなしでございます」
「それじゃあ2部屋お願いね。それでおいくら?」
「へい。2部屋で60スゥになりやす」
ルイズはそれを聞いて財布を取り出し、主人が言ったであろう金額を渡す。
この国の通貨単位はスゥというらしいな。というより泊まるのには金が要るのか。
「ではこちらが部屋の鍵になっておりやす。この鍵についている番号のお部屋に行ってくださいませ。部屋にはそれぞれ番号札がついているんでわかると思いやす。
そこにある階段を登れば個室があるんで」
ルイズは老人から鍵を受け取ると階段へ向かっていく。
私もそれについてく。しかしシエスタは何故か別の方向へ行こうとしていた。
「どこに行くんだシエスタ」
「あ、私は個室を借りるほどのお金が無いので共同部屋に泊まるんです」
「共同部屋?」
「はい、共同部屋っていうのは「泊まらなくてもいいわ」へ?」
シエスタが話そうとすると急にルイズが話しに割り込んでくる。
「シエスタはわたしの部屋に一緒に泊まりなさい」
「そんな!ミス・ヴァリエールと同じ部屋だなんて!恐れ多くて」
「わたしが泊まりなさいって言ってるんだから泊まればいいのよ。初めからそのつもりだったんだから」
「し、しかし」
「それにわたしと一緒いるのにその中の一人だけが共同部屋なんて恥ずかしいじゃない」
「……わかりました。一緒にいさせてもらいます」
「初めからそう言えばいいのよ」
そしてルイズがわたしに鍵を渡してくる。
「これがあんたの部屋の鍵ね」
「あ、ああ」
鍵には2と彫られている。
これがたしか部屋の番号だったな。
しかし、
「その共同部屋っていうのはなんだ?」
「共同部屋っていうのはただで使える部屋のことよ。見ず知らずの人間同士がその部屋に集まって寝るのよ。それでお金を払えば個室が使えるの。
でも大抵みんなお金を使いたくないから共同部屋で寝るのよ。個室を使うのは貴族か余裕のある平民だけね」
「ふーん」
なるほどね。
だから金がないシエスタは共同部屋に行こうとしてたのか。
「ほら、荷物置きに行くわよ。シエスタ、食事は任せたわ。出来たら呼んでちょうだい」
「はい。わかりました」
食事は自分たちで作らないといけないのか。まあ、さすがに作ってくれるわけはないな。
そんなことを思いながら私たちは2階へ上がっていった。

食事は何事も無く終わり、今はそれぞれが部屋にいる。
あとはもう寝るぐらいしかやることは無いからな。
個室は大体ルイズの部屋より少し小さいぐらいだ。共同部屋はこの大きさで何人もが寝るらしい。
共同でなくてよかった。
さて暇だな。猫も眠っているし。
しかし、私には暇を潰すうってつけの相手がいる。それは、
「両手に花だな相棒」
デルフだ。既に抜き放っている。しかし開口一番がそれか。
「花ならもう少し魅力のある女性がいいな。あれじゃ物足りない」
「贅沢言い過ぎだぜ相棒。そんなこと言ってたら罰が当たるぜ」
「そうか?」
「わかんね」
やはりルイズやシエスタといるよりも、デルフと喋るこの瞬間が一番楽しいものだ。
「そういえばよ相棒」
「どうした?」
「どうしてルイズなんか誘ったんだ?本当は心配してなんかじゃねえんだろ?」
「当たり前だ」
しかし今日は言えるだろうか。
「で、その猫がいつの間にか来てたってわけか」
「ああ。本当に厄介だ」
「いいや。相棒は自分で気づいてないだけで猫のことが気に入ってんのさ」
「何をバカなことを……」
今日こそ、今日こそ、
「なあデルフリンガー」
「どうした相棒?」
「そ、その。たた、たまに、だな。名前で……」
「そういや相棒」
「な、なんだ?」
「最近よく俺と喋るよな。結構嬉しいぜ」
ダメだ。言えるわけが無い。
「お、おい。どうした相ぼ……」
慌ててデルフを鞘に収め、ランプを消してベッドに寝転がる。
あんなこと言われたら言い出しにくいに決まっている。
帽子をそこらへんに放り投げる。
デルフにいつか名前で呼ばれたいものだ。心の中でなら簡単に思えるのだがな。
そんなことに思いをはせながら眠りについた。


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