ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

第十話 ルイズの覚悟

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 第十話 ルイズの覚悟 その①

その頃タバサは…
深夜にも関わらず、キュルケに関する手がかりを捜していた。
なぜなら情報がほとんど耳に入ってこないからだ。(実際にはロングビル情報があるが信用していない。)
それに、表情にはあらわさないが、とても焦っていたのだ。
そうしてタバサは広場を歩いていた。横にはシルフィードも一緒だ。
そうこうして歩いているとタバサは異変を感じた。
芝生が不自然に焼け焦げているのだ。調べてみるとそれはとても広域である。
此処で火の魔法の実習がおこなわれたという話は聞いていない。
それに、決闘があったのはヴェストリの広場だ。ここではない。
こんなあからさまに焼け焦げているのにどうして誰も見つけられなかったのだろう。
他の人ならともかく、自分までどうして、とタバサは不思議に思った。
そして焼け焦げたあとを辿ってみると、なにやら文字のようである。
シルフィードに乗って上空から魔法で照らしてみる。
すると文字が浮かび上がってきた。
《ロングビル ハ キケン キュ》
タバサは瞬時に理解した。これはキュルケのメッセージであると。
もうキュルケはこの世にいないであろうということを。
そしてその犯人がロングビルであるということを。
タバサはオールド・オスマンの部屋を訪ねた。

 第十話 ルイズの覚悟 その②

「入りなさい。」
オールド・オスマンの許可をもらい、入室するタバサ。
「こんな夜遅くに一体どうしたね?」
「ミス・ロングビルは何処。」
「質問を質問で返すのは良くないが、まぁ、いいじゃろ。ミス・ロングビルはミス・ヴァリエール、ミスタ・グランドプレと一緒に土くれの…っとこれは禁則事項じゃった。とりあえずお出かけ中じゃ。」
「だいたいわかった。場所は。」
「えーっと、たしか近くの森の小屋で…っと、うっかり言ってしまったわい。」
「二人が危ない。」
そういって部屋を飛び出していくタバサ。
「まぁ、確かにミスタ・ギトー相手はちときつかったのう。しかもフーケだし、とすると土と風のトライアングル以上ってことになるし…。
少々まずかったかもしれんのう。じゃが、持つべきものは友達じゃわい。」


「大丈夫か、ルイズ?」
「わ、私は大丈夫よ。それよりもマリコルヌは?」
「マリコルヌならあそこで気絶してるぞ。」
「よかった、巻き込まれてなくて。」
そこでフー・ファイターズガ見ているのに気付き、
「…かかか、勘違いしないでよね!私はあんなかぜっぴきでも死んでほしくはないだけよ!それだけだからね!」
「今はそれより…」
フー・ファイターズが馬車のほうを見る。
そこには土の口から出てきたロングビルもといフーケがいた。
「フフ、今のはわざと逃がしてあげたのよ。私はいつでもあなたたちを始末できるもの。この先住魔法…ハイプリエステスでねッ!」

 第十話 ルイズの覚悟 その③

「五月蝿いわね!くらいなさい!」
ルイズが失敗魔法を使う。しかしフーケは杖を使わずに、土を隆起させてその身を守る。
「そんなっ、先住魔法が使えるなんてッ!」
フー・ファイターズも応戦するが、全て防がれてしまっている。
なんというか相性が悪すぎる。
ルイズの爆発で崩しても何度でも再生するし、フー・ファイターズに至っては水切れ寸前だ。
フーケだっていつまでも防御だけしているはずはない。
地面から鋭利な刃が伸びてきてルイズを襲う。
そしてルイズの杖を持っている方の腕が切断された。
「ッ…ッッッ………ッ!」
ルイズは悶えている。目からは大量の涙を流し、それでも泣き叫ぶのを堪えている。
貴族の意地というヤツだろう。腕を押さえてはいるが、そこからあふれ出る血は噴水のように噴出し、だんだん緩やかになるも、止まる気配はない。
フー・ファイターズは、その吹き出る血で少しばかり水分補給をしてから、ルイズの腕を己でくっつけて固定し、ルイズを抱え逃走する。
今のままでは適わないのは当然であるし、何よりもルイズを守らなくてはならないと感じたからである。
しかし現実は甘くない。
フー・ファイターズを取り囲むように土が隆起してくる。
フー・ファイターズは死を覚悟した。
すると上空から鋭い氷の塊が降り注いで土を破壊していく。
「間に合った。」

 第十話 ルイズの覚悟 その④

その声にフー・ファイターズは上空を見上げる。
そこにはシルフィードに乗ったタバサがいた。
「きゅいきゅい!(参上なのね。最初からクライマックスなのね!)」
「ウィンディ・アイシクル。」
タバサは先ほどの攻撃をする。
しかしフーケは意図も簡単にそれを防いでみせる。
「無駄よ無駄ァ!杖が必要ない今ッ!どんな攻撃でもッ!瞬時に防御することができるわッ!!」
そのあと、タバサは様々な攻撃を繰り返すが、総て防がれてしまう。
「強い。」
正直タバサも予想外であった。
キュルケを倒したヤツとはいえ、此処まで強いとは思ってもみなかったからである。
実際にはスタンド能力なのだが、杖を使わない魔法はとてつもない脅威である。
杖を奪えば終わり、ということがなくなるからである。
フーケは始末しなくてはならない。タバサが少し考え、本当に僅かだが攻撃が止まっている隙に、フーケはルイズ向かって攻撃を開始した。
「まずはヴァリエール。…使い魔と一緒に、一足先にリタイアよ。」
「まずい。」
タバサが攻撃を再開するが、防御と攻撃を同時にやってみせる。
「やられる。」
「くたばりなさいっ!ゼロ!!破壊の杖の使用方法はあの糞爺をSMプレイでもして聞きだしてやるわ!!」

 第十話 ルイズの覚悟 その⑤

「いいや、くたばるのはお前のほうだフーケ。」
「ハッ!!」
動脈が切られたフーケの首から血が噴出している。
「僕がさっき『くしゃみ』を放った。気絶している僕には、さすがのアンタも警戒を緩めていたようだね。」
「き、貴様ァ!よくもっ!このフーケに対してッ!」
フーケが全攻撃を集中させてマリコルヌに襲い掛かった。
「地獄で詫びろ。僕のルイズに『ゼロ』といったことを。」
「こんの糞デブがァァァァァァッ!」
グサグサグサッ!
フーケの背中に氷が突き刺さる。怒りで総ての攻撃をマリコルヌに向けていて、防御が疎かになっているのをタバサはすかさず狙う。
「キュルケの分。」
「…バ、カな……」
そうして土くれのフーケは絶命した。
タバサがシルフィードで降りてくる。
「乗って。」
ルイズ一行とフーケの遺体を乗せて、シルフィードは学院に向けて出発する。
帰路では、マリコルヌは緊張が解けて眠りに落ち、ルイズはその巨体を枕にして気絶していた。
タバサは人知れず涙を流し、シルフィードは珍しく空気を呼んで黙っていた。
そして、水分が足りなくなってきたフー・ファイターズは…

 第十話 ルイズの覚悟 その⑥

「着いた。降りて。」
丁度朝日が昇る頃、一行は学院に到着した。
「やっぱり君は綺麗だなぁ。」
「ッ…イタッ!ももも、もっと優しく持ってよねッ!」
ルイズをお姫様抱っこして降りてきたマリコルヌ。お姫様抱っこされているルイズ。
「よいしょっと。」
普通に降りるフー・ファイターズ。そこで全員がフリーズした。
「どうして。」
「た、確かに死んでたはずなのにぃッ!」
タバサが驚き、マリコルヌが腰を抜かす。勿論ルイズを抱えたまま。
なぜならそこにはフーケがぴんぴんして立っている姿があるからだ。
しかし、ルイズは感ずいた。
「も、もしかして、フー・ファイターズ?」
「ああ、私だ。」
赫々然々でこの能力と乗っ取った訳を話す。
このあと学院長室に行き、学院長の前でも同じことを話す。
「ふむ、ミス・ロングビルがフーケじゃったとはのう。それに学院内で三人も死者を出してしまうとは…。(ミス・ロングビルを入れたら四人じゃが。)
これは親御さんになんて説明をしたら…。それと、えぇとフー・ファイターズ君じゃったかな。
その体で生活するんじゃろう。みんなにはフーケの正体は話さないでおくわい。あと、フーケの遺体は何者かに盗まれたということでいいかのう。因みに普段はロングビルとして生活をするのがいいじゃろ。」
「ご理解のほどをありがとうございます。」
「うむ。ミス・ヴァリエールとミスタ・グランドプレにはシュヴァリエの爵位を、ミス・タバサには精霊勲章の授与を申請しておいたわい。」
「ありがとうがざいます。」
生返事である。友人の死というものは重いものである。
その重さはその友人とどれだけ親しかったかに比例してくる。
ルイズは打ちのめされていた。


 第十話 ルイズの覚悟 その⑦

フリッグの舞踏会にて。
タバサはやけ食いをしている。ルイズは壁に寄りかかっている。ロングビル(F・F)は水を飲んでいる。
そこにマリコルヌが現れた。
「僕のルイズ、君には悲しい顔は似合わないよ。」
「だって…」
「ミス・ツェルプストーだって君のそんな顔は望んでいないと思うよ。」
「でも…私…」
「僕と踊っていただけませんか、ミス・ヴァリエール。」
「…え?」
聞き返すルイズにマリコルヌは微笑んで繰り返す。
「僕と踊っていただけませんか。笑顔だよ、笑顔。それじゃあミス・ツェルプストーが心配して、君から離れられないよ。」
ルイズは涙を流した。そこにはキュルケを失った悲しみもあるけれど、マリコルヌの優しさに打たれたというのが今は主な理由だ。
そして微笑んで返答する。
「…えぇ、喜んで、ミスタ・グランドプレ。」
二人の踊りが始まる。マリコルヌのぎこちないリード、デブとロリの組み合わせ、しかも此度の舞踏会の主役であるということで二人は周囲の目を引く。
「こここ、今回は、そ、その、特別だからね!基本的には相手にしないわよ!」
赤くなったルイズが言う。
「じゃあいつかは、その特別が普通になるように努力するよ、僕のルイズ。」
更に茹蛸になっていくルイズ。
「あああ、あんたなんか一生無視してやるんだから!」
とか何とか言いながらも、最後まで踊り続ける二人。それをフー・ファイターズが見守って、時間はどんどん過ぎて行く。
二人の時は止まることはないだろう。例え、加速することがあったとしても…。


ゼロの奇妙な使い魔~フー・ファイターズ、使い魔のことを呼ぶならそう呼べ~
   [第一部 その出会い]  完


エピローグ

フリッグの舞踏会と同時刻。場所は広場。
オールド・オスマンは、キュルケの遺体を捜していた。
FFから詳しい場所を聞いていたからだ。
しかし、捜せど捜せど出てこない。
次の日にしようと諦めて帰り、その翌日、キュルケの親から連絡があった。
学院を辞めたといって娘が帰ってきたので、今までお世話になった、ということを伝えてきたのだ。
オールド・オスマンが驚いてキュルケの部屋だったところに行くと、そこはもうもぬけの殻だった。
死んでいるはずの人間が動き出していることにオールド・オスマンは正直恐怖した。
ここはどこぞの寒村ではない。由緒正しき魔法学院なのだ。
オールド・オスマンは、これらの出来事を自らの心に閉まっておくことにした。


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