ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

使い魔は手に入れたい-8

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よく物を知っているもの、いわゆる知識人が人にものを教えることを渋ることがある。
知っているんだから渋らずに教えてもいいじゃないかと思うのが一般の認識だ。
私自身そう思っていた。知っているなら教えればいい。それで損害が出るなら教えるのを渋るのは当たり前だが出ないのなら教えても問題が無いだろうと。
だが間違いだった。今ではそんなことを微塵も思っていない。
だから過去形なのだ。
「見てください。包丁です!」
「ああ、よくできてるよ」
知識を独占したいという気持ち、他人が知らないことを知っているという優越感。
それはとても気持ちのいいものだ。
しかしそれは他人に教えることによって他人を自分と同等のところに押し上げてしまう。自分しか知らないという優越感が無くなってしまう。
さらに他人がそれを基にして自分が知らないところまで辿り着いたとしたら?
自分が多大な労力と時間を犠牲に長年蓄えてきた知識を他人が極短い時間で知りさらにその先へ行く。
それは長年の時を経て辿り着いた地位からの転落にならない。自分が相手より下になったに他ならない。それは物凄く腹が立つことだ。
きっと教えることを渋る知識人たちはそう思っているはずだ。
そして今自分がそう思っている。
「ほら見てください!最高傑作パピヨンマスクです!」
「蝶・サイコー……」
どうやって作るんだよそんなもん……
シエスタはとても嬉しそうな眩しい笑顔を浮かべ最高傑作とやらを私に見せてきた。
もはやあやとり教室はシエスタの独壇場であり、私が口を挟むところなどありはしなかった。
むしろ私が教えられる立場だった。

シエスタとあやとりを初めて10分、シエスタは基本を完璧に理解し二人あやとりは完璧にこなせるようになった。
シエスタとあやとりを初めて20分、シエスタは私が知っている一人あやとりの形を全て覚えた。
シエスタがあやとりを初めて40分、シエスタが二人あやとりで私が知らない形を作り始めた。とるのに苦労した。
シエスタがあやとりを初めて50分、シエスタの作る形はもはやとり方が理解できなくなり私の負けが確定した。
そして今、シエスタは一人あやとりで常人では辿り着けない領域に突入していた。次々と新しい形をつく出そうと必死で糸をコチョコチョといじくっている。
必死であやとりを頑張る給仕姿の少女。結構様になっている。
その手はなめらかに糸を操り顔は新たな何かを期待するかのように輝いている。
「面白いですねあやとりって。紐一本でこんなことができるなんて」
「そうだな」
しかしこっちはイライラしている。
そこまでできるのお前だけだっつーの!なんでそこまでできるんだよ!
俺の努力ってなんだったの!?
そんな気持ちで一杯だった。勿論表には出さない。
今ここにいてイライラするよりルイズの部屋に行ったほうがいいな。
ベッドが名残惜しいが仕方が無い。シエスタがいないだけマシだ。
どうせこのイライラは一時的な感情だから明日には収まるだろう。続くとしたらもうシエスタの顔も見れなくなるな。
別にそれでも良いけど。
「さて、それじゃあもう戻るとするか」
「え?戻るって?」
「ルイズの部屋にだ。元々あそこが私の部屋だからな」
「あ、そうでしたね。残念です。あと少しでパピヨンマスクも超えるものができそうな気がしたんですけど」
駄目だこいつ……早く何とかしないと……。……吉良違いな気がする。私はこんなキャラじゃない。
そんなことを思っているとシエスタが紐を私に渡してくる。
正直今日はこの紐であやとりをしたくないな。
しかし持ってこさせたのは私だ。それをいらないといえば好感度が下がるのは確実。捨てるにしてもどこかで見られたり捨ててある紐を発見される可能性がある。
ではどうするか。
結論、渡された紐をシエスタの首に掛ける。
「え?」

シエスタは勿論驚くような顔をした。
「持ってろよ。そうすればいつでも練習できるだろ」
「ヨシカゲさん……。ありがとうございます」
「別にいいさ」
計算どおりシエスタは紐を受け取る。見事に厄介払いできてよかった。
それを確認して私は部屋を出る。じゃあなベッド。気持ちよく眠れたよ。
そして私はルイズの部屋に戻っていった。
ルイズの部屋のドアを開ける。
「ヨ、ヨシカゲ!?」
「なにをそんなに驚いているんだ?」
部屋にいたルイズが驚きの声を上げる。どうでも良いけどな。
久しぶりのルイズの部屋は最後に見たときとなんら変わりは無かった。
「も、もう怪我はいいの!?」
「今日が完治予定だっただろ。ポンフリーから聞いてなかったのか?」
「……聞いてない」
言ってなかったのかあのアマ。
「そういえば今日はどうして来てすぐにどっかに行ったんだ?」
「え!べ、別にあんたの裸が恥ずかしかったわけじゃないわよ!?あんたより優先する用事があったのよ!」
恥ずかしかったのか。初心だな。局所が隠れてたっていうのに。
しかしそんなことは言わない。どうせ言ったら怒鳴るだろうしな。
「そんなことより、はいこれ!」
そういってルイズは何か押し付けてくる。また小包だった。
開いてみると中には帽子と手袋が入っていた。なるほど。あのとき届けにきたのか。
早速手袋をつける。帽子は室内なので被らない。手袋はどうやら完璧に新品みたいだな。前のと感触が違う。
「ありがとう」
「こ、これぐらい当然よ!」
「そうか」
さて、もうすぐ昼飯時だな。厨房にはどんな料理があるか楽しみだな。いや、どうせシエスタがいるから今日は行かないでおこう。
ルイズの出す餌で我慢するか。
そして昼食時、ルイズへの疑惑を深める重大な事件は起きた。


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