ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ラ・ロシェールにて-2

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感情と言っても様々なものがある。
感情とは人や動物が物事などに感じて抱く気持ちのことだ。
その中でも何か理不尽だと感じる出来事が起こったとき、あるいは納得できないことが起こったときなどに抱きやすい感情は怒りである。
怒りとは、何らかの不満・不平に対する感情的な反応であり、宗教では、怒りを人間の最もネガティブな感情と捉える。
キリスト教では、七つの大罪のひとつとされ、仏教では、怒りは人間を地獄界の精神状態に追いやり、死んだ後最悪の条件に転生すると考えられている。
そして行き過ぎた怒りはやがて憎悪へと変化する。
憎悪は自分の人格や尊厳を傷つけるものとして許しがたく、そうした行動が既に取り消しがたいものであればその他人の存在そのものに対して激しい怒りをを感じ、
なんらかの報復を試みたいと考える感情のことだ。
しかしそういった強い感情こそが力をより大きくする。人間や動物の区別無く、何か一つに絞られた感情は時として普段考えれない力を呼び覚ます。
そして精神は感情によって助長され爆発し、精神の爆発は肉体を超え限界を上回る。
何が言いたいのかといえば、強い感情を持つものは強いのだ。

悲鳴は咽喉に上がってきた血によって止まる。
それを咳き込みながら吐き出す。しかし血は口だけでなく右頬からも流れ出る。
右頬といってもその人物には頬と呼べるものは無かった。抉り取られたかのように肉が見え血が流れ歯と歯茎がむき出しになっている。
よく見ると胸と腹から血を流し足元に広がっている。それなりに長く美しかったであろう髪は血がべっとりと付いておりもう落ちそうに無い。
そして右手が無かった。
その人物の名は『土くれ』のフーケといい、盗賊をしていた。
『土くれ』という二つ名は、盗みを働く際に錬金を使い防御魔法のかかった壁などを土くれに変える為付けられたもので、盗賊と言ってもその行動は、
怪盗や愉快犯の類のものだった。

しかしあるとき右手を斬られ捕まってしまった。
そして牢獄で牢獄で死刑を待つ身だったフーケはレコン・キスタの貴族の一人に脱獄を手引きされ自分もレコン・キスタの一員になった。
別に望んでレコン・キスタに入ったわけではない。それしか生きる道が無かっただけのことだ。
レコン・キスタ初めての任務が傭兵たちを雇いアルビオンへ向かうラ・ヴァリエールの娘の一行を襲うことだった。
フーケはその中にヨシカゲというラ・ヴァリエールの娘の使い魔がいることを聞いていた。
ヨシカゲといえば自分の右手を斬りおとした張本人だ。
右手を失ったのは痛かったし怒りを感じていた。しかしこれだけで済んでよかったとも思っている。
本当なら殺されていてもおかしくない。あの男はそういった目をしていた。
だからと言って許すかといえば答えは『NO』だ。自由の身になった今報復しないワケがない。そして現に報復しようとしていた。
だがヨシカゲを殺そうしたとき謎の攻撃を受け満足に動けないほどの重傷を負ってしまったのだ。
フーケは血溜まり自分の顔を映し無くなった頬に震えながら手を伸ばす。
何かの幻覚とかそういったものでは無いことは触れてすぐにわかった。いや、触れなくてもわかっていたのだ。ただ信じたくなかっただけ。
自分の美貌には自信を持っていた。この顔、この身体で幾人もの男の目を釘付けにしてきたのだ。
その顔がこんな無残なものに成り果てるなんて、信じたくなかったのだ。
たしかに自分は今まで悪事を働いてきた。でもここまでボロボロにされるほどのことか?
そんなことを考えていると笑い声が聞こえてきた。とても愉快で何もかもうまく言っているというような笑い声だった。
自分も前はそういう笑い声が出せただろう。しかしもう出せることは無い。
情けない悲鳴が聞こえてきた。目を向けると傭兵の服に火が燃え移っておりそれを慌てて消そうとしていた。
その程度で悲鳴を上げるのか。
他の傭兵に目を向けると逃げ出したりおろおろしていたりと役に立たない連中ばかりだった。

その間にもさらに笑い声が強くなる。『女神の杵』亭から熱風が吹きつける。
この笑い声が耳障りだった。役に立たない連中が目障りだった。吹きつける熱風が肌を焦がした。
「壊そう」
フーケはそう呟いた今ここにあるものは全て気に入らない。
この笑い声を発する人間を殺そう。役に立たない傭兵たちを殺そう。この熱風を蹴散らそう。
とにかく目に映るものを壊せば気に入らないものはなくなるはずだ。
近くに転がっていた杖を見つけ、杖をとるために体を動かす。全身が激痛によって悲鳴を上げる。しかしそれに構わず杖をとりたちがる。
そして呪文を唱え杖を振る。すると胸と腹の傷に粘土が張り付き血が出るのを抑えた。
自分の足元を見ると血溜まりが出来ていた。このままでは死んでしまうだろうと断言できるほどに。服も血に染まって赤い。
しかしフーケにはなぜか自分は死なないという自信があった。何故かは解らないが体に溢れんばかりの力を感じる。激痛が全身を襲う。しかしそれを喜んで受け入れる。
その痛みが自分に力を与えてくれる気がした。
そしてゴーレムを作り出す。いつもより強く!より硬く!
完成したゴーレムはいつものゴーレムより一回り大きかった。そしてきっといつもより頑丈だろう。そういった確信があった。
その肩に乗りながらフーケはゴーレムに命令を下す。ゴーレムは拳を振り上げ、傭兵たちを叩き潰した。
そしてゴーレムの足を蹴り上げさせる。何人もの傭兵が足にぶつかり死んでいく。
フーケはそれを嗤いながら見ていた。そしてもう自分は後には戻れないと自覚した。
無いはずの右手がジクジクと痛んだ。


キュルケたちは呆然としていた。傭兵たちが復活したゴーレムに次々と殺されていく。
そのゴーレムは身の丈40メイルほどもある。驚くべき大きさだ。しかし呆然とするのはそれが理由ではなかった。
そのゴーレムが殺していく傭兵たちだ。
ゴーレムが腕を振るたび、足を踏み出すたび傭兵たちはごみ屑のように吹き飛び、踏み潰された。
吹き飛ばされた傭兵たちはひどい有様だった。血まみれになり臓物が飛び出している死体、壁に叩きつけられている死体。ぐちゃぐちゃに踏み潰された死体。
上半身が無い死体。下半身が無い死体。そして響き渡る振動と耳を劈くような悲鳴、建物が崩れる音。
「なにこれ……」
キュルケが本当に呆然といった感じで呟く。
そしてまたゴーレムに矢を射っていた何人かがゴーレムに弾き飛ばされ死んでいく。
ギーシュはその光景を見ながら突然視線が低くなったことに気づいた。
そしてそれが自分の腰が抜けているのだと気が付いたときにはすでに咽喉から絞り上げるような悲鳴を上げていた。


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