ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

Shine On You Crazy Diamond-6

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……気になる。
勝手にすればいいとは思ったもののやはりどうなっているのか気になる。
仕方ないではないか。いくら気に食わないといっても自分の使い魔なのだ。気になって当然だろう。
そういうわけでヴェストリの広場へ足を向ける。広場に向かって進むにつれ少しずつ五月蠅くなっていく。おそらく広場に人が集まっているのだろう。
広場につくと予想通り、そこには人が大勢いた。
貴族同士の決闘は禁止されている。理由なんて簡単だ。魔法は人の命を簡単に奪える。
自分に殺すつもりが無くても相手が死んでしまうということもあるのだ。それが理由で貴族同士のいらぬ軋轢が生まれたりもする。
それを避けるために決闘は禁止されているのだ(そんなこといっても決闘する生徒はいるのだが)。
そして人は刺激を求める。刺激が限定された学院においては決闘はまさに絶好の刺激。
しかもそれが平民と貴族という普通ではなされない決闘だから自然と人が多くなるのは当然だろう。しかもそれをギーシュがやるのだ。
ギーシュといえば派手好きで目立ちたがり屋な奴だ。
結果がわかっていてもギーシュが期待に応えて面白おかしくするだろうという期待もあるのだろう。
だからこんなにも人が集まっているのだ。
しかし予想はしていたがここまで集まっているとは思ってもいなかった。というかもう始まってるようだ。
観衆の間から見てみると思っていた通りヨシカゲがギーシュのゴーレムに攻められている。
必死に避けてはいるがずっとは持たないだろう。
そしてついに顔に攻撃があたりそうになる。しかしそれを腕で庇い衝撃で地面に転がる。そして腕を押えながら蹲った。
「腕でも折れたかな?」
そんなこと言いながら嗤うギーシュ。

それにカチンときてしまう。
「ギーシュ!」
そう叫んでギーシュに近寄ろうとする。この決闘を止めようと思った。自分の使い魔がボロボロにされるのは嫌だったしそれをネタに嗤われるのも嫌だった。
それにギーシュの浮かべる表情が気に入らない。
それはいつもわたしに向けられる表情と一緒だった。周りがわたしをバカにするときの表情と同じだった。
別に向けられたのはわたしじゃない。使い魔だ、それも平民の。しかし使い魔とメイジは一心同体。つまりわたしに向けられたのと同じことだ。
間違ってもヨシカゲに同情したわけではない。絶対に無い。無いと信じたい。
ギーシュは私の声に気づきこちらを向く。
「おおルイ……」
ギーシュが喋りかけてきた瞬間、簡単にいうならバーーーン!という大きな音が聞こえた。
そしてギーシュの手から血が噴出していた。
「うわああああああああああ!」
ギーシュの悲鳴が上がった。その表情は驚きと痛みに歪み、
「痛い痛い痛い痛い!」
ついには地面に膝を突き泣き叫び始めた。
そして驚いたことにヨシカゲがさっきまでの痛そうなそぶりすら見せずに立ち上がるとギーシュに近づきその顔を蹴り飛ばす。
その衝撃でギーシュが地面に転がる。ヨシカゲはさらにギーシュに近づくと血が出ている手を踏みつけ傍に転がっていた杖を手に取るとへし折る。
手を踏まれたことでさらにギーシュの悲鳴が上がった。そしてなんとかヨシカゲから逃げようともがく。しかし手を踏みつけられておりうまくいかない。
そこにヨシカゲは空いていたほうの足を持ち上げるとギーシュの顔を思いっきり踏みつける。そしてギーシュの悲鳴がパタリと止まった。


その時の光景は今でも忘れてはいない。平民が貴族を足蹴にするなどいう光景を忘れれるはずも無い。しかもそれをわたしの使い魔がやったのだから。

この光景を見ていた観衆はまさか平民が勝つなんて!などの類をいいながら騒いでいる。
ギーシュを踏み台にしていたヨシカゲはギーシュが気絶したとわかると、
「私の勝ちだな」
そう言いながら腕の袖から板切れを出し始めた。それなりに厚いが一箇所へこんでいる部分もある。
それを見て気がつく。殴られたときおそらくあれでゴーレムの攻撃を防いだのだ。
そして他の場所からも同じような板切れを出す。後からわかったことだが板切れはまな板を切ったものだった。
それらを放り出すと(何個かはギーシュの上に落ちた)足早にその場から去っていった。
ヨシカゲの闘いを見て少し考えが改まる。ものは使いようだ。準備とその時の状況さえ合えば平民でもメイジを倒せるのだ。
それは実際目の前で証明されたのだ。それがいくら確立が低くても証明されたのだ。それを自分の使い魔が証明したのだ。
……それなりに、いや結構嬉しいかもしれない。いや最高だ!
みんなの驚いた顔や運ばれていくギーシュを見ながらスキップしそうなのを抑えその場を去る。
みんなに一泡拭かせてやった!わたしの使い魔が!メイジと使い魔は一心同体、つまりこのわたしが吹かせてやったのだ!
人気が無い場所へ移動する。よくここで人に見せたくないような表情をする。泣くときとか、泣くときとか、泣くときとか……
しかし今日は違う。泣きに来たのではない。他人に見られたくないことという点では同じだが。
思いっきり息を吸い込む。そして、
「ざまああああみろおおおおおおお!」
貴族らしさを微塵も見せずに叫ぶ。いつも貴族らしくを心がけているわたしには普通考えられない行為だったがそれを気にしないぐらい浮かれていた。
そうしたいぐらい浮かれていたのだ。初めてヨシカゲが使い魔でよかったと本気で思えた。
その時だけだったが。


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