650 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/10(月) 22:44:00.54 ID:InyIoTDR0
ついに未来のベーシストとなるべく、僕はベースを始めた
まだ肌寒い、うっすら雪の残る3月のことだった
高校1年だった僕はアルバイトで貯めたお金で通販で購入し、届いたその日からひたすら練習した
GLAYやラルクのベーシストに憧れて始めたのだが、ベースマガジンを読み始めてから洋楽なんかも聴くようになったんだ
フリーとか、ジャコとかね

でも、楽器を始めたホントの理由はクラスの人気者になりたかったからだ
去年の文化祭でステージで演奏していたヤツらがうらやましくてたまらなかった
ホント、最初はそんな単純な理由だった
だけど普段とても地味だった僕が楽器を手にしたところで誰も関心を示さなかった

だけどそんな僕にも大きな人生の転機が訪れた
「なあ、ベースのヤツが抜けちゃってさ、お前ベースやってんだろ?助っ人として入ってくれよ」
それは願ってもいない機会だった
その日から僕はついにバンドデビューを果たした
やっぱり、楽器は1人よりみんなであわせた方が全然楽しい
それまで友達が少なかった僕もバンドメンバーと連むようになってからはだいぶ明るい性格になったと思う
夏休みは文化祭に向けてひたすらバンド練に明け暮れた
やる曲はB'zとか、ゴイステとかだったけど、正直簡単だった
だけど楽しかった

そして文化祭本番、僕らは大成功をおさめた



654 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2007/12/10(月) 22:46:43.89 ID:InyIoTDR0
でもその後すぐに解散してしまったんだ

いまでも思うけど、どうしてバンドで驚くほど上手くいかなくなるんだろう
あんなに仲良かったのに、いつの間にか口も聞かなくなってしまった
そして僕はまた1人で練習をするようになった
ジャズにも手を出し始めて、いまじゃあポールチェンバースこそ自分の最もリスペクトするベーシストとなった


そんなある日、文化祭が終わって二週間くらい立ってからのことだった
僕はまたしても人生の転機を迎えることとなった



660 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/10(月) 22:50:34.82 ID:InyIoTDR0
「ねぇ、××くんベース弾けるんだよね?良かったら教えてくれない?」
それはまさしく僕が夢にまでみていた展開…そう、ついに女の子に教えてくれといわれたのだ
しかも可愛い…
ギターならよくあることだが、普通ベースを女の子がやりたいから教えてくれというだろうか
信じられなかったけど、もちろん僕はOKした
「…じゃあ、来週の水曜の放課後音楽室でいいかしら?」

僕は水曜日が待ち遠しくてたまらなかった

ベースの練習にいつも以上に念入りにやった
そして複数の教本を本屋で立ち読みしてどうやって教えるか、100回は脳内シュミレーションをしたのだ
そしてついに当日がやってきた
学校に楽器を持っていくのは文化祭以来だが、なんだか周りの目をやたら気にしてしまってしょうがなかった


そして運命の放課後、僕は音楽室にガチガチに緊張しながら入っていった
彼女はもうすでにきていて椅子に座って練習していた

664 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/10(月) 22:54:30.48 ID:InyIoTDR0
「やぁ」と僕はぎこちない挨拶をしてベースを取り出す

…しかしどうやって会話を繋げようか…さすがにそこまでは考えてみなかった

「ねぇ、××君ってジャズとか好きなの?」
突然彼女から聞かれた質問、少し驚きがありながらも僕はよく聴くと答えた

そこからの僕らはまるでやたらテンションの高い友達としゃべっているように会話は止まることはなかった

彼女はビル エヴァンスが好きらしい
そこで少しはピアノが弾けるのでビルを弾こうとしたが、ジャズピアノの難しさに挫折したんだという


そんなときにマーカス ミラーを聴いてベースも悪くないと思い、始めることにしたらしい
僕に教えてくれと頼んだのはバンド練習のときにとても渋い、ジャズっぽいフレーズを弾いていたのでジャズに詳しいのかと思い、話が合いそうだと思ってお願いしたとのことだ
そう言われたときはちょっと照れくさかったけど、うちの学校は最近じゃあEXILEだの、ORANGE RANGEだとかを聴いてる人しかいないのでジャズを聴いてる人がいたのは単純に嬉しかった
意気投合した僕らはベースを触っている時間よりもしゃべってる時間の方が長かった



671 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/10(月) 23:01:09.88 ID:InyIoTDR0
結局暗くなるまでしゃべって2人で学校を帰った
来週もお願いしたいといわれた時は小さくガッツポーズしてた

そんなこんなで僕はほぼ毎週ベースを教えるようになった
もちろん、話してばっかりだったが、ほとんど弾けなかった彼女は簡単なスラップができるまでになった
僕より上達が早かったので正直、自分より上手くなりそうで焦った
おまけに音楽理論にやたら詳しい
ピアノをやっていたからとはいうものの、ソルフェージュまで知っていたのは驚きだ
当然僕だって知らなかったのに…
しかし、話を聞いているとどうやら彼女は本格的にジャズをやりたいらしい

そのため、毎日のように楽典を読んで勉強しているとのことだ
そしてなんだかいつの間にか僕が教わることの方が多くなった気がする…
そうなると僕はもう用無しになってしまうじゃないか
もし、彼女から来週はもういい、今までありがとうといわれたらどうしよう とそんなことばかり考えていた
そう、僕は彼女のことが好きになっていた
もう12月…人肌さみしい時期…クリスマスは彼女はどうするんだろう…彼氏はいないって言ってたけど…あと数回で冬休みに入ってしまう
そうなったらもう、彼女とは何もなく終わってしまうような、そんな気がした


679 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/10(月) 23:06:11.10 ID:InyIoTDR0
だけど、僕は何にも行動をおこさないまま、結局冬休み前の最後の水曜日が来てしまった
皮肉なことに、次の水曜日はクリスマスじゃないか…
どうしよう…おもいきって告白しようか…でも傷つくのは怖い…このまま何も言わなければ3学期も一緒に練習してくれるかもしれない
だけど…だけど…










「ねぇ、来週も…いいかな…」


688 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/10(月) 23:09:29.18 ID:InyIoTDR0
それは突然の、彼女からの言葉だった

「…あ、無理言ってゴメンね…そういえば来週の水曜日ってクリスマスじゃん!!××君、用事あるよね…」

「僕はいつでも暇だよ」
僕は少し震えた声でそう答えた




女の子が、クリスマスを忘れるはずない…
これはつまり彼女も僕のことが…





来週こそ、気持ちを伝えよう

693 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/10(月) 23:14:09.75 ID:InyIoTDR0
ついにクリスマス当日がやってきた
僕は一足早く学校へ行く
冬休みに入った学校にはほとんど人影がなかった
さすがに部活もやっているとこは少なく、何だかこの建物には僕1人しかいないように思えた
だいたい彼女が来るかどうかもわからない
もしかしたら、突然来れないとか言われるかもしれない

…そんな不安もあったが彼女は来てくれた
いつものように、まるで今日も普段と変わらぬ学校生活があったかのように…



697 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/10(月) 23:15:09.84 ID:InyIoTDR0
音楽室に現れた彼女は何だかいつもより綺麗に見えた
先生に会うわけじゃないから、少し化粧品したんだとはにかみながら彼女は言った

それからしばらく2人でベースの練習を始めた
もはや僕の教えることは何もなかったが、正確なリズムで弾けているかどうかをお互いにチェックし合ったりした
一通り練習すると普段ならまた雑談を始める
だけどこの日ばかりはなかなかしゃべることがなかった
お互いに無言のままの状態が続く…

今言わなければ…

「あのさ……」















僕らしかいない音楽室は2人だけの空間だ
当たり前だけど、でもこの日ばかりは周りの景色が少し違って見えた

699 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/10(月) 23:15:50.31 ID:InyIoTDR0
その後、僕らは手をつなぎながら、寄り道をしながら帰った

そう、今日は僕らにとって記念すべき日となったんだ

嬉しいかった
すごく嬉しかった
彼女が泣きながら僕の言ったことに頷いてくれたんだから

これからはいつまでも一緒だって、いつまでも2人でベースを弾いていようって、約束をしたんだ

いつまでも…
いつまでも…

あれから数ヶ月、僕は人生の絶頂期にあった
学校は一緒に帰って、休みの日はデートして、だけど毎週水曜日は相変わらずベースを音楽室で弾いた
これは彼女が「いつまでもあの時の気持ちを忘れないようにするために音楽室で練習を続けよう」と言ったからだ
このころにはエレキベースだけでは満足しなくなった彼女はこっそり音楽準備室からウッドベースを弾くようになった

そういえばコントラバスとウッドベースの違いってただ大きさが違うだけなのだろうか?
ウッドベースじゃなくてコントラバスじゃないか疑問に思ったんだが…

706 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2007/12/10(月) 23:20:37.19 ID:InyIoTDR0
4月になった

僕らは高校3年生だ
そう、今年からはもう受験生になる
周りの奴らは予備校だとかに通ったり、毎日授業中寝ていたやつが突然勉強に目覚めたり…
遅刻早退を繰り返したり粋がって先生にかくれてタバコをすったりするヤツらが最近じゃあ本当の馬鹿に思える

それだけ周りの環境は変わってきた

僕もまた例外ではない
地元の私立大学に入るため、勉強を本格的に始めるようになった



そして彼女もまた僕と同じ大学に行きたいと行っている
今の成績なら指定校推薦でいけると先生も言ってたらしい
そんなわけで余裕綽々のようだ
しかしそれでも彼女は毎日一生懸命に勉強をしていた
最初はただ彼女の性格が真面目だから勉強しているんだと思った

でも、僕は気づき始めた

それが確信に変わったのは5月…6月…7月…そして夏休みに入ってからのことだった


707 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/10(月) 23:21:39.26 ID:InyIoTDR0
このころになるとお互いの家に遊びにいくようになった
そして彼女の家に何度か遊びにいくうちにある有名音楽大学のパンフレットが目につくようになった
彼女にわざと何のパンフレットか聞くと「なんでもない」と言って机の引き出しにしまいこんでしまう
そしてもう一つ気になったのはパンフレットと一緒においてあった、何も記入されてない進路希望調査のプリントだった

ホントは夏休み前に提出しなければいけないはずなのに… 真面目な彼女に限って忘れることなんてないはず
っていうよりも今の時期にこのプリントを提出しないなんて、まず普通に有り得ない

僕には一緒の大学へ行こうと言ってたけど、やっぱり彼女にも目指す大学はあったのだ…

直接本人に聞いた方が早いけど、ひょっとしたらそれが彼女を苦しめるかもしれない

考えたあげく、彼女の友人に何となく探りをいれてみることにした


たまたま僕と同じクラスの子だったのでメールアドレスは知っていた

それにこれまでも彼女のことについていろいろと相談に乗ってもらってたし…

メールはすぐに返ってきた
どうやら進路については相当悩んでいたらしい
僕と同じ大学か、例の有名音楽大学のジャズ科に行くか…
そんなの、自分の好きな大学へ行けばいいのにって思ったけど、音大は東京にある
ここから毎日通うには東京は遠すぎた
だからもし入るのなら上京して一人暮らしをしなくてはならないのだ

そうなると僕になかなか会えなくなってしまう
それで悩んでいたのだ


710 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2007/12/10(月) 23:22:24.22 ID:InyIoTDR0
だけど、いくらなんでも彼氏彼女の事情で自分の夢を諦めてほしくなかった

まだ僕らが付き合う前に彼女が自分で言ってたじゃないか…
将来は本格的にジャズをやりたいって…つまり、プロのジャズミュージシャンになるんだと


もう夏休みが終わるころに進路にどうしようか迷うわけにはいかない

まして、僕の行きたい大学と音大ではあまりに違いすぎる
というより、あの倍率の高い学校に今から目指すのは遅すぎるかもしれない
でもそれが彼女の夢なら止めるつもりはない
それでも諦めるというなら…


714 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2007/12/10(月) 23:23:39.29 ID:InyIoTDR0
僕は彼女に思い切って言った。
「音大に行きなよ」

彼女はびっくりしてこちらを向いたがみるみる目に涙を浮かべて


「一緒にいたいと思わないの?」

と言った。

僕は返事を躊躇していたら、

「もういい!!」

と言って走り去ってしまった。


それ以来彼女には会っていない‥




思い返せばセックスはしたけど、あれだけやりたかった
亀甲縛りや放置プレイはできなかった。涙が止まらなかった。

とりあえず今は、当時二股かけていたもう一人の彼女とスカトロまで行ったから悔いはないけど。

反省は、していない

724 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/10(月) 23:29:13.50 ID:InyIoTDR0
8月に入った

僕らはこの日、花火大会に出かけた

でも僕は花火を別に見に来たわけではない
彼女から本心を聞き出したかったのだ

しかし何となく、進路の話しをしようとすると彼女は上手くかわすのだ
…結局聞き出せず、帰り道になってしまった

「ねぇ、大学どうするの?」
僕はこの日4回目にしてとうとう直球に質問をした
そうでもしなければ無理だと思ったからだ


727 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/10(月) 23:31:07.38 ID:InyIoTDR0
「…だから、私はアナタと同じだって言ったでしょ?心配しなくて平気よ」
さすがに少しイライラしたような口調だった

「…でも、本当にそれでいいのかな…もし僕が違う大学に行くって言っても、君は迷わず地元の大学に行くのかな?」

彼女は無言だった
「行きたいんでしょ?…音大に…」
彼女はやっぱり気づかれていたかという顔をしてため息をついた
「でも入るのは簡単じゃないし、楽器や音楽理論も今のままじゃ実技試験で確実に落とされるわ」

「だからこれからでも勉強すればいいじゃないか」
僕は強くそう言った
だって、絶対に彼女の夢を壊したくなかった
彼女の音楽に対する想いはだれよりも僕が一番知っていたんだから…

730 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/10(月) 23:31:52.51 ID:InyIoTDR0
僕はもし音大に行くとなるとしばらく会えなくなることも知っているということも彼女に伝えた
それでも彼女が縦に首をふろうとはしない

長い沈黙が流れた

そりゃあ音大に行くかどうかを悩んでいるのは僕のことだけじゃないと思う
親元を離れて暮らすわけだし、お金もかかるし、難しい問題はいろいろあると思う…
でも僕のことで一番の障害になるのなら、僕は身を引くつもりだ
遠距離恋愛だって構わないと思ってる

732 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/10(月) 23:32:32.48 ID:InyIoTDR0
この日はここで会話は止まってしまった

僕は悩んだ
彼女が今まさに悩んでいるように、僕も必死で考えて、考えて、そして僕なりの答えを彼女に伝えることにした

次の日、僕は音楽室でまた練習しようと言った

この日はここで会話は止まってしまった夏休み中の学校は冬休みのときより周りはにぎやかだった
部活、補修など結構たくさんの人が来ていた
そして僕らは音楽室で相変わらずいつものように練習を始める

一通り練習したあと、またいつもの雑談を始める

だけどこの日は違っていた
あのクリスマスのときの2人みたいな沈黙が続く
でもあの頃とはまた少し違った
そう思ってたのは僕だけかもしれないけど

735 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/10(月) 23:34:06.18 ID:InyIoTDR0
「…あのさあ、」




この時の自分が一瞬クリスマスと重なった

でも、違うんだ






「…僕達、別れよう」










738 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2007/12/10(月) 23:34:56.59 ID:InyIoTDR0
ホントは別れたくない
今でも彼女が好きだ

だから彼女の目指す夢の支障になりたくないと思ったんだ


「…なんで……」



彼女はそう言って泣き出す
そして僕は何も答えなかった
今にして思えば言葉が足らなさすぎた

僕のことで夢を諦めてほしくないとか、嫌いだから別れるわけじゃないとか、言うことはたくさんあった
でもこれ以上しゃべると自分が泣きそうになるので何も言えなかった

ホントに情けない…

15分くらいたったくらいだろうか…
突然彼女は音楽室を飛び出して行った

1人残された僕は今まで我慢していた涙が溢れだした

そしてそのまま1人で日が暮れるまでベースを弾き続けた

なんでこんな極論に至ったかといえば、やっぱりこうするのが一番だと思ったからだ




742 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/10(月) 23:36:11.88 ID:InyIoTDR0
このまま続けても中途半端になるだけだし、勉強にだってお互い身が入らないだろうし…
僕の勝手な思いこみだろうか…?


先生がそろそろ部屋に鍵をかけると行ったときにようやく僕は思い腰をあげた
ひょっとしたら、また彼女がここに戻ってくると思ってギリギリまで粘ったが、やっぱり来ない

結局ベースをしまって僕は1人で帰った



もう、音楽室であのときのように2人で弾くことはないんだ…




いまどきの女子高生なのに、やたら音楽の趣味は渋いし、ベースだって周りじゃあポップスばっかり弾いるのに、ジャコの曲を無理して弾こうとして…

ホントに変わった子だった…でも好きだったんだ

744 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/10(月) 23:36:42.32 ID:InyIoTDR0
それから彼女と連絡をとることは一切なかった








4月に入った






僕は地元の大学に無事入ることができた



そして彼女はどうやら音大を受験してみごと合格したようだ
何だかんだ、やっぱり行きたかったんじゃないか…


こうして僕らは別々の道を歩みだした

746 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/10(月) 23:37:18.08 ID:InyIoTDR0
月日はさらに流れてその約2年後…つまり、今に至るわけなんだが、僕はというとバンドを組んで、ライブハウスのチケットを売りさばくのに苦労している
もちろんロックバンドだが、ジャズをやめたわけじゃない
大学のサークルでジャズをやっている
ちなみに僕はベースからギターに持ち替えた
始めたきっかけは、ただベースだけよりギターも弾けたほうがいいからなんだけど、本当はいつかプロになって、他のミュージシャンとセッションしたときに僕はギター、そしてその横で彼女がベースを弾く…

そんなひそかな夢を持ってコード理論とスケールに日々悪戦苦闘している



752 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/10(月) 23:38:06.87 ID:InyIoTDR0
まあ夢のまた夢だけどね
彼女は僕のことを最低な男って思ってるだろうし…
だけど今、幸せでいるならばそれでいいと思ってる

彼女と過ごした音楽室の日々は僕にとってかけがえのない時間だ

もちろん、もう高校に行くことはないけど、今でも時々夢を見る







あの頃と何も変わらない音楽室に入って行くとそこには彼女があの頃と変わらずベースを弾いている

そしてお互いに向かい合って彼女が言う

「じゃあ、始めましょ」


754 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/10(月) 23:38:48.27 ID:InyIoTDR0
ちょっとモテたいと思って始めたベース

こんな地味な楽器じゃあやってもしょうがないと思ってた時期もあった

彼女と出会ってお互いに助け合うという大切さを知り、痛みも知った

ホント、楽器を始めなかった自分は今ごろどうなってたんだろう…



755 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/10(月) 23:39:25.68 ID:InyIoTDR0
それから彼女は今どうしているかといえば、どうやら新しい彼氏が出来たらしい


そりゃあ当然といえば当然だ
あんな可愛いくていい子をほっとく男がいないはずがない

でも、今を必死で生きてる僕にはそんなことにショックをうけてる暇はない


早くノルマの20枚のチケットを売らなければいけないし、とにかく過去を引きずるつもりはない
夢は見るけどね…















終わり

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最終更新:2007年12月11日 00:52