集う者たち~宴の準備~


 穏やかな水面を乱しながら、独りの巨人が進む。
「僕が・・・僕がアスカを守らなきゃいけないんだ・・・僕が・・・」
 その中では独りの少年が、守りたい者の名を呟いていた。
 あの後・・・大雷鳳を使い、苦労して二人を埋葬したシンジは、
アスカを探すべく、その場を後にしようとした。だが・・・

「あれ?このメーター・・・」
移動を始めようと、計器類を覗いたシンジの目に一つのメーターが映る。
「これ・・・そうか、燃料が無いんだ」
 心もとなくなってきた燃料に、補給の必要に迫られたシンジ。
彼は慌てて地図を開き、一番の近い補給地点を探し始めた。
そして、数分後。大雷鳳は非常にゆっくりとした動きで、川を越え、森を南下していた。
(まずは補給だ・・・見たことも聞いたことも無いけど、やらなきゃいけないんだ・・・
 そして、アスカを探して・・・守るんだ。僕が、守るんだ!)
決意を胸に巨人は進む。地図に示された補給地点。高台にある基地を目指して。


 その頃、三人の男達が同じ高台を目指し、機体を移動させていた。
「やっと、森に入りましたね」
 一番後ろをいく蒼い機体。それに乗った少年の言葉に、他の二人は頷く。
もっとも、一人はホログラフィーの映像なのだが。
「すまないね。私の機体のせいで、思いのほか時間がかかってしまって」
「いや、先生が居ないと始まらない事ですし、問題ありませんよ」
 遷次郎の呟きに、フォッカーが笑って返す。
「そうですよ。そんな事言ってないで、早く基地へ行きましょう。
 機体の補給もしたいですし・・・」
 マサキはその様子に苦笑しながら・・・苦笑するふりをしながら、そう言った。
(まったくだ・・・このクズのせいで、予定より時間がかかってしまったな。
 ・・・使えるクズでなければ、殺しているところだ)

 そんな内心を知ってか知らずか・・・
「それもそうだな。俺のも、そろそろ弾薬が厳しくなってきてるからな・・・
 急ぎましょうか、先生」
 マサキの言葉に同意すると、フォッカーは遷次郎に声をかけた。
そんな二人を追いながら、マサキは考える。
(ふん、まあいい・・・それよりも問題なのは、基地内に補給目的のクズがいるかも知れんことか。
 ゲームに乗っていないクズならいいが、乗っているクズなら面倒だな・・・)
 そこまで考えて、マサキはほくそえむ。
何者が居ようと首輪の解除をちらつかせれば、どうとでもなる。
それにいざとなれば、あのクズ二人を使えばいいのだ。
(・・・使えるクズを無くすのは、少し惜しいがな)
邪心を胸に冥王は往く。利用できる駒二人と共に、高台にある基地を目指して。


「この野郎!」
 高台にある基地。幾つかの部品の散らばる空間に、男の怒声が響き渡る。
マサキの予測したとおり・・・補給設備のある格納庫内には、三名の参加者達が居た。
「落ち着け、イサム・ダイソン。ただの挑発だ」
「けどよ、こんな野郎、生かしとくわけには・・・」
 そう言いながら、イサムは鎖で縛り上げられている男――ヤザンの襟首を掴みあげる。
「確かに。だが、まだ全ての情報を引き出し終えたわけではない」
 イサムの物騒なセリフを遮り、淡々とした口調でたしなめるヒイロ。
その言葉に肩を竦めつつ、イサムは男の襟首から片手を外す。そして・・・
「チッ・・・なら、一発殴るくらいならいいだろっ!」
 そう言い終わるか終わらないかのうちに、イサムはヤザンの顔面を殴りつけた。
派手な音をたてて、床に投げだされるヤザン。
それを一瞥した後、イサムはドラグナー3へと飛び乗る。
「どこへ行く?」
「ちょっと、基地の中を見てくるだけだ!」
 そう言い残すとイサムは、その機体を動かし格納庫の外へと出て行った。

「・・・さて、お前には幾つか聞きたい事がある」
「正直に答えるかどうかも解らんのにか?」
「嘘をついても構わないが、死ぬほど痛い・・・かもしれんぞ」
 挑発の言葉を吐くヤザンを意に介した風も無く、ヒイロは淡々とそう答えた。


 希望、怒り、哄笑・・・様々な思惑を胸に、彼等はステージへと集う。
そして・・・彼等が目指す舞台の真下。内海へと通ずるドッグ。
半分以上が地下に埋もれたそこに、紅い色の巨体が横たわっていた。
その身の半分を海水に晒す真っ赤な機体の中で、一人の少女が眠っている。
さながら、眠り姫のように・・・さながら、舞台のヒロインのように・・・
狂気を胸に闘将は眠りつづけている。



【碇シンジ 搭乗機体:大雷鳳(第三次スーパーロボット大戦α)
 パイロット状態:良好、全身に筋肉痛
 機体状態:右腕消失。装甲は全体的軽傷(行動に支障なし)。
      背面装甲に亀裂あり。燃料が残り少ない。
 現在位置:H-5川を抜けた森
 第一行動方針:G-6基地で燃料を補給する
 第二行動方針:アスカと合流して、守る
 最終行動方針:生き抜く
 備考1:奇妙な実(アニムスの実?)を所持】


【木原マサキ 搭乗機体:レイズナー/強化型(蒼き流星レイズナー)
 パイロット状態:絶好調
 機体状態:ほぼ損傷なし
 現在位置:F-6森
 第1行動方針:G-6へ 遷次郎を護衛しつつ向かう
 第二行動方針:遷次郎とともに首輪の解析と解除を行う
 最終行動方針:ユーゼスを殺す】

【ロイ・フォッカー 搭乗機体:アルテリオン(第二次スーパーロボット大戦α)
 パイロット状態:多少の疲労。マサキに多少の不信感
 機体状況:弾数残りわずか
 現在位置:F-6森
 第一行動方針:遷次郎を護衛しつつG-6基地へ向かう
 第二行動方針:ユーゼス打倒のた首輪の解析め仲間を集める
 最終行動方針:柿崎の敵を討つ、ゲームを終わらせる】

【司馬遷次郎(マシンファーザー) 搭乗機体:スカーレットモビル(マジンガーZ)
 パイロット状態:良好。B・Dの首輪を入手。首輪解析済み(六割程度)マサキと宙を重ねている節がある。
 機体状態:良好
 現在位置:F-6森
 第一行動方針:G-6基地へ向かい、首輪の解析及び解除を行う
 第二行動方針:マサキを守る
 第三行動方針:ユーゼス打倒のために仲間を集める
 最終行動方針:ゲームを終わらせる
 備考:首輪の解析はマシンファーザーのボディでは六割が限度。
   マシンファーザーの解析結果が正しいかどうかは不明(フェイクの可能性あり)
   だが、解析結果は正しいと信じている】


【イサム・ダイソン 搭乗機体:ドラグナー3型(機甲戦記ドラグナー)
 パイロット状況:疲労
 機体状況:リフター大破 装甲に無数の傷(機体の運用には支障なし) 右腕切断 補給完了
 現在位置:G-6基地
 第一行動方針:気を紛らわせるため、基地を探索
 第二行動方針:アムロ・レイ、ヴィンデル・マウザーの打倒
 第三行動方針:アルマナ・ティクヴァー殺害犯の発見及び打倒
 第四行動方針:アクセル・アルマー、木原マサキとの合流
 最終行動方針:ユーゼス打倒】

【ヒイロ・ユイ 搭乗機体:M9<ガーンズバック>(フルメタル・パニック!)
 パイロット状態:若干疲労、M9から降りている
 機体状況:装甲表面が一部融解。補給完了
 現在位置:G-6基地(格納庫内)
 第一行動方針:ヤザンを尋問し、情報を引き出す
 第二行動方針:トウマの代わりにアルマナの仇打ち
 第三行動方針:アムロ・レイの打倒
 最終行動方針:トウマ、クォヴレーと合流。及び最後まで生き残る】

【ヤザン・ゲーブル 搭乗機体:無し
 パイロット状態:健康。頭痛あり、チェーンで縛り上げられている
 現在位置:G-6基地(格納庫内)
 第一行動方針:隙を見て脱走(可能ならば機体も奪取)
 第二行動方針:どんな機体でも見付ければ即攻撃
 最終行動方針:ゲームに乗る】


【惣流・アスカ・ラングレー 搭乗機体:ダイモス(闘将ダイモス) 
 パイロット状態:気絶中
 機体状況:全体的にかなりの破損。右足は戦闘機動をおこなえば砕ける可能性あり
      後頭部タイヤ破損、左腕損傷、三竜棍と双竜剣を失った。
 現在位置:G-6基地(半地下ドッグ)
 第一行動方針:碇シンジの捜索
 第二行動指針:邪魔する者の排除
 最終行動方針:碇シンジを嬲り殺す
 備考:全てが自分を嘲笑っているように錯覚している。戦闘に関する判断力は冷静(?)】

【二日目 17:00】





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第171話「涙、枯れ果てた後に 碇シンジ 第188話「5分前
第165話「三者三様 木原マサキ 第188話「5分前
第165話「三者三様 ロイ・フォッカー 第188話「5分前
第165話「三者三様 司馬遷次郎 第188話「5分前
第167話「死力戦場 イサム・ダイソン 第188話「5分前
第167話「死力戦場 ヒイロ・ユイ 第188話「5分前
第167話「死力戦場 ヤザン・ケーブル 第188話「5分前
第175話「されど戦いは続く 惣流・アスカ・ラングレー 第188話「5分前


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最終更新:2008年05月31日 18:58