蠢-ugomeki-
【時刻:二日目:12時48分】
(まただ…また何者かがワシの気配をうかがっておる……)
そう感じ取った東方不敗は立ち止まり辺りを見回した、しかし誰もいない。
C-4の森にさしかかろうかという所に、その男はいた。
リオとわかれた後、再びこのおろかな戦いを終わらせえるため、他の参加者を探していたのだ。
だが、しかし――
(何者だ…この妙な感覚…普通の人間の物とはなにか違う…)
なにか、不思議な気配が自分に向けられていることに気がついたのだ。
と、同時に自分の体になにか違和感を感じ取っていた。
何かが――
そう、気配をうかがっている相手に対して反応しているかのようだ――
「やつめ、ワシの体に何かしよったな…」
そう呟き、この戦いの黒幕、ユーゼスの顔を思い浮かべる。
当初から体の異変にはうすうす気がついていた。
病に蝕まれていたはずの体が、なんともなくなっていたかったからだ。
ユーゼスが自分に何かを施したであろう事は明白だ。
(ワシの体を治すことでこのゲームをより盛り上げようとしたのか?……
いや…それだけではあるまい……何か…別の何かがあるはず……)
そう思いながら再び体内に違和感を感じとる、それは西に向かえば向かうほど強まっていくようだ。
(ぬぅぅ…この感覚、何かがワシの意識を飲み込もうとしているのか?……)
自分の意識を少しずつ削り取っていく何かを感じる。
通常の人間ならもう自我を失っているかもしれない。
だが――
「このワシを!東方不敗をなめるでないわぁぁぁぁ!!」
そう誰に言うでもなく一喝し、体の異変を押し黙らせる。
そして――
東方不敗は自分の気配を探っている誰かへと――
西へと向かっていった。
【時刻:二日目:12時52分】
(まさかアルジャーノンの発症を抑えようものがいようとは……)
眼前のモニターに映し出された零影を前にユーゼスはそう呟いた。
そう、東方不敗の体を治療した際この奇病を感染させていたのだ。
目的はベターマンによる戦闘データ、オルトスのデータを集めるためである。
そのデータを得るために最初に色々手を加え、人知を超えた力を持つ物を対戦相手に選んでいたのだ。
即ち、この東方不敗やマジンカイザーのことである。
実際ベターマンはその魔神との戦いで有益なデータをもたらせてくれていた。
だが、しかし――
最もベターマンの力を引き出してくれるであろう、その男は――
なんと言うことか!!アルジャーノンを発症するどころか押さえ込んだのである。
(ベターマンではなくこの男の生体機構を調べるべきだったか?……)
そんな気すらしてくる。
「まぁ、よい……感染させたのはこの男だけではないのだからな……
今はまだ発症していないようだが……そのうち変化が現れるであろう……」
そういって別のモニターが映し出された。
(それに――)
そう、発症していないとはいえ、ベターマン・ラミアはこの男から何かを感じ取っているようだ。
戦闘になる可能性もまだ充分にある。
また、リンカージェルと同じく実自体も所々に配置してある、たとえ戦闘が回避されたとしても
オルトスのデータが得られるのは時間の問題だろう。
データを得てしまえば無理をすることはない、障壁を越えられはしないだろうが、
ベターマンの最終目的は我の撲滅ではないのだ。
なんなら元の世界に送り返してやってもいい。
「くくっ……」
思わず笑みがこぼれる、だがユーゼスはその計画の僅かなほころびに気がついていなかった。
ベターマンが打倒される可能性に――
そして――
首輪を解析しうる者の存在を――
空間を打ち破る者の存在を――
彼らと共にベターマンが向かってくる可能性を――
【時刻:二日目:12時58分】
それは今森の中に潜んでいた――
さっきから何かを探っているようだ――
何度も何度も――
それが自分の倒すべき相手であるかを確認するかのように――
しばらくして――
それは意を決したかのように――
静かに――
東へと向かっていった――
【東方不敗 搭乗機体:零影(忍者戦士飛影)
パイロット状況:良好
機体状況:良好(タールで汚れて迷彩色っぽくなった)
現在位置:C-4(森の手前)
第一行動方針:自分の気配を窺っているものの捜索・確認
第二行動方針:ゲームに乗った者とウルベを倒す
最終行動方針:必ずユーゼスを倒す】
【ベターマン・ラミア 搭乗機体:無し
パイロット状況:良好
機体状況:無し
現在位置:B-4(森の中)
第一行動方針:アルジャーノンが発症したものを滅ぼす
第二行動方針:他の参加者に接触し情報を得る
第三行動方針:リンカージェル、フォルテの実を得、オルトスの実を精製する
最終行動方針:元の世界に戻ってカンケルを滅ぼす
備考:フォルテの実 残り2個 アクアの実 残り1個 ネブラの実 残り2個】
最終更新:2008年05月31日 18:43