決意
【午前六時間際 エリアF-2】
廃墟に入ってから随分と時間がたつ。
ジョシュア・ラドクリフは依然、イキマとの合流を果たせていない。
「どこに…」
放送の直前ということもあり、焦りが生じる。
嫌な予感というものは、一度現れると振り払うのは困難だ。
何かあったんじゃ?
あのとき一緒に残っていれば。
二人で逃げるべきだった。
脳裏に、次々と疑念がよぎる。
「さあ、お待ちかねの第二回放送だ」
と。
放送が終わりの無い疑念を止めてくれた。
あれだけ毛嫌いしていた主催者に助けられるとは。
自嘲しつつ、放送に耳を傾ける。
「――それでは、楽しいバトルロワイアルの再開だ。張り切って殺し合いに励んでくれたまえ」
イキマの名は無い。
良かった。あいつはまだ生きている。
イキマの探し人が死んだことは気がかりだが、とりあえずはイキマとの合流を。
センサーの範囲は最大に。
正史とは真逆の使命を与えられた機体は、朝日を浴びながら走り去った。
【同刻 エリアE-2】
イキマは、ようやく廃墟にたどり着いた。
彼の機体はジョシュアを探すことなく、廃墟の中で静止している。
考えたいことが多すぎた。
鋼鉄ジーグ。
幾度と無く、主の日本奪還を阻止された、自分の宿敵。
正直、イキマは彼との協力すら、考えていた。
元の世界では敵だった。
――それがどうした。
奴と協力するなど無理だ。
――やってみなければわからない。
奴は、ヒミカ様の敵だ。
――あいつが俺と敵対する理由は元の世界にはあったが、ここには存在しない。
アルマナとジョシュア。この二人と出会ってから、徐々にそのような考えが芽生えてきた。
それが、蓋を開けてみればなんだ。
「奴は、俺と会うこともなく、誰とも知らない奴に殺されちまった…」
バラン・ドバン。
顔も声もわからない。
手がかりは、その名前だけ。
あの姫様も無茶な願いをしてくれたものだ。
だが、叶えてやりたかった。
生きながらえることが叶わぬのなら、せめて彼女の願いぐら叶えてやりたかった。
それくらい、叶えてくれたっていいじゃないか。
ゼ・バルマリィとやらの神様は残酷だ。
自分の巫女さんの願いさえ叶えてくれないなんて。
――イキマ。
声が、聞こえた気がした。
――妾じゃ、イキマ。
「ヒミカ…様?」
確かに聞こえた。
聞き間違えることなどあるはずも無い、自分の生涯を捧げた方。
――そうじゃ。
――イキマ。残念なのも、悔しいのもわかる。じゃがな? お前がそれでどうする。
――お前には、そこで出来た新しい仲間が居る。
――その仲間が、お前を信じて探して居るというのに、そのように腑抜けていてどうする。
――立って歩け。仲間を探せ。
――遅くとも良い。必ず妾の下へ帰って来るのだ。
――それでは…な。
声はそれっきりだった。
恐らくは、精神が錯乱していたことが原因の幻聴だろう。
それでも、その声は、彼に力を与えた。
「必ず…必ず戻ります。ヒミカ様。
ジョシュア…今すぐ行く。くれぐれも、死ぬな」
廃墟から、青い天使が飛翔する。
【ジョシュア・ラドクリフ 支給機体:ガンダム試作二号機(機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY)
機体状況:良好
パイロット状態:良好
現在位置:F-2西部
第一行動方針:イキマと合流するため、廃墟内の捜索
第二行動方針:主催者打倒の為の仲間を探す
最終行動方針:イキマと共に主催者打倒】
【イキマ 搭乗機体:ノルス・レイ(魔装機神)
パイロット状況:良好(ジーグ、バランの死を克服)
機体状況:右腕を中心に破損(移動に問題なし)
現在位置:E-2中部
第一行動方針:ジョシュアと合流するため、廃墟内の捜索
第二行動方針:主催者打倒の為の仲間を探す
最終行動方針:ジョシュアと共に主催者打倒】
【時刻:6:10頃】
最終更新:2008年05月30日 16:18