内と外の悪鬼


ズプリ…
うまく町の周りを抜け、C-8にたどり着いたマサキは光の壁に突き進んでいく。
レイズナーが光の壁に乗り込まれていく。
しかし、恐怖もとくにはない。先ほど――思い出すのも忌々しいが、
黒い大型の機体に会う前、偵察の時にこの壁については調べているからだ。
レイズナーの顔の辺り、つまりコクピットが壁に抜けるのと同時だった。
「前方遠距離ニ機動兵器ノ反応3。戦闘ハ確認デキズ」
「ほう・・・以前の戦闘の可能性はどうだ?」
「周囲ニ熱源発生ノ可能性0。機体の損傷確認デキズ」
「ッ! 一度の壁の向こうに戻るぞ」
「READY」
「ふむ…3機か…しかも、戦闘をしていない、か」
そうこぼした後、後ろをちらりと見る。当然そこにはルリの死体。
「奴らの悪評をまくにも、クズを集めるためにも接触は必要だが…どうしたものか…?」
接触するためには、どうしても死体が足かせになる。さて、どうしたものかと2,3分悩んだマサキだったが、
「そうだな…うまく悪評をまくためにも、ごまかすためにもこれならいけるか…ククク」
顔に邪悪な意思を湛え、ルリの死体を自分の膝に置く。幸い、まだ腐乱などはしていない
「むんっ!」
ベギン。ルリの奥歯を強引にへし折る。そして、その奥歯を取ったところを指で少しかき回す。すると、
死体とは言え、口から血が漏れるようにたれ、頬を染める。
「ククッこれでいい。…あとは通信機を周波数を少しずらせ、レイ。
 あくまで少しぼやける程度だ… 最大速度で接近するぞ。何か確認されるたびに逐一報告しろ」
「READY」
レイズナーは壁に向けて全力で飛び始めた。

「出来るだけ助けを求める人の力になりたいんです!」
プレシアが鼻息荒く宣言したのは3時間前だ。二回目の放送が流れ、新たな犠牲者の名前が読み上げられるのを聞いたプレシアは、
この忌まわしきゲームに巻き込まれて困っている人間を助けたいと言い出したのだ。
ガルドは時間をかけて、丁寧に、丁寧に説得をした。
ゲームが始まって一日も経っていないのに既に24名の死者が出ている事から、ゲームは予想以上にハイペースだと考えられる。
それは多くの人間が殺し合いに参加しているという証拠であり、プレシアが戦いを避けたいならば不用意に動くべきではない。
そもそも、プレシアは戦えないし、チーフも動力の出力が未だ上がらずとても戦闘は出来そうにない。
もしゲームに乗った人間に襲われたらどうするんだ?
しかしプレシアは譲らなかった。曰く誰もが戦いを望むわけではない、戦いは新たな憎しみを生むだけだ・・・確かに正論だ。
しかし、それを逆手に取り全てを奪うヤカラもまた存在するということもわかっているだろうに、
どこまでも純粋に人を信じようとする。
確かに、戦いが憎しみを生む事は、他でもないガルド自身が分かっている事でもある。
プレシアの意見を青臭い理想論だと感じつつも、ガルドはそれを面と向かって指摘できないでいた。
真っ向から戦いを否定するプレシアの眩しさに、一度汚れてしまった自分は引け目を感じているのかもしれない。
ちょっとした巡り合わせで助けたプレシアと過ごすうちに、ガルドは心の澱が澄んでいくようにも思えたのだ。
(俺は…イサムを探さねばいかん。しかし、この娘を放り出すわけにもいかん)
すまんな、もう少し待ってくれと心の中でイサムに向けてガルドは言う。
そう、これでいいのだ。もし、この場を離れてイサムを見つけたとしても、イサムは必ずこう言うだろうから。
「なんでその場に残らなかったんだ、バカヤロウ!」、と。
心なしか、そんな気はないのに自分が笑っている気がする
逡巡の末、ガルドは助けを求める人を探す為、移動することに同意した。

「レーダー右に反応1。何かが近付いてくる…!」
真っ先にそれに気付いたのはチーフだった。
「少し後ろに下がっていろ!」
今戦えるのは、そうガルドだけなのだ。ガルドが2人の機体よりも一歩前に出てカバーする。
「ええと、通信機はこれだから…通信を試して見ます!」
プレシア既に話し合いをする気満々だ。相手はかなり高速で、そろそろ通信可能エリアに入ってくる。
「私はプレシア・ゼノキサスです!そちらのパイロットさん聞こえますか?」
プレシアが通信機をONにして声を張り上げる。
通信機に写る、返ってきた声と姿は…
「どいてくれ!怪我人が乗っているんだ!」
あせっている青年と、その膝に乗る口から血を流し、グッタリしている1人の少女だった。
「ええっ!?一体どうしたんですか!?」
流石の彼女もこの展開は予想外だったのだろう。声が若干裏返っている。
「信用させるようなことを言ってきて、信頼して降りたら機体を奪うために襲われたんだ!
クォヴレーとトウマ、それにイングラムとかいう三人組だった!」
「と、とり合えずここからだと…E-1あたりがものがありそうな場所で一番近いですから一緒に行きませんか!?」
咄嗟のことながら、しっかりと人のことを考え、行動を示唆できる。他の2人は若干戸惑っていた。
「い…いいんですか?」
向こうの青年も若干戸惑っている。まさか、一緒に行こうという答えが出るとは思わなかったのだろう。
「…まて、何故そうなったんだ?あとその子の名前をこちらに教えてくれないか?知り合いかもしれん」
チーフが口を開く。
「そんなこと言ってるば…」
「待て」
プレシアが何か言おうとするのをガルドが止める。
「美久です!氷室美久!目の前で殴られたんです!」
青年はどこかテンパった様子ながら間髪入れずに応えた。
「…そうか。スマン勘違いだったようだ」
プレシアもここで質問の意味が理解できた。
もし、既に放送で呼ばれている名前や、応えるのに詰まるようなら何かしろの警戒がいる。
通信機では、正確に生きているかどうかまではチェックできない以上、
用心のため、そこのあたりをチーフはチェックしたのだろう。
「急ぎましょう!」
青年が急かす。
「最期に、君の名前を教えてくれないか?」
チーフが問いかける。その質問に、青年はイラツキながらも答えた
「木原マサキです!」

ガイキングがE-1廃墟の左端にたたずんでいる。
剣鉄也に取って、二回目の放送は殺すべき人数が10数人減った、という以外に何の意味も無かった。
ふと、目を上げる。すると…レーダーに4つ影。こちらに向かって来ている。
先ほどまで、少し虚ろであるとさえいえた目が急にらんらんと輝き始める。
「狙えないこともないな…ハイドロブレイザーをぶちかますか?いや…それだと逃がす恐れがあるな。こうするとするか。」
ガイキングは、目の前の湖に飛び込んだ。水中をガイキングがうごめく。
(よし…ここだな)
鉄也は、水中で大きく壁になる、つまり直上に来るまでレーダーに引っかからない位置に移動した。
(さぁ来い…!)
水中でガイキングの目が光り輝いた

「水上か…」
「急ぎますから、チーフさん機体ごとグランゾンに乗ってください!」
こちらは、何も知らない4人組。
ガルドとチーフはマサキを完全に信用しているわけではないため、
距離をとってはいるが行動を起こさないためか今は様子を見るしかない。
「わかった、そちらに乗ろう」
湖を飛び越えるだけの出力がないため、そう言ってグランゾンの背中にブルースライダーの要領で乗る。
4機が中ほどまで言ったとき――
「レーダーに反応!真下だ!」
またもや真っ先に気付いたのはチーフであった。しかし、さっきと決定的に違うことは、
「いたな…!」
鉄也が静かに呟く。狙うは4機のうち、2つの光点が重なっているものだ。
ガイキングはそちらを向きなおし、
「はずしはしない……!」
胸部は多少傷ついてはいるが、発射には問題ない。
「ハイドロ!ブレェェェイザァァァァアア!!!」
50万度の超高温の火球が水を蒸発させ、泡を振りまきながら、グランゾンとチーフに迫る!
「え!?」
プレシアもそれに気付き、歪曲フィールドを形成する。
歪曲フィールドとは…エネルギーの位相を恣意的にずらすことでエネルギーを拡散させ、熱量や衝撃を分散させるフィールドである。
つまり、エネルギーそのものには強いのである。
しかし、それでもハイドロブレイザーの威力は消しきれず、グランゾンに歪曲フィールドを突破した力が襲う!
強い衝撃が機体にかかるが、堅牢な装甲のためか、ほとんど傷がつかない。しかし――
「なっ!?」
グランゾンが直立に近い姿勢になった上に、この衝撃。チーフが見る見るうちに水面に吸い込まれていく…!
「チーフさん!?」
プレシアが叫ぶが、もう遅い。チーフは水中に落ちていく。

水中――
「く!?深度250m…まだ活動可能域だ…相手が水中に引きずり込もうとしていたのは明白…急いで脱出せねば…」
チーフが素早く現状を確認。動こうとするが…
ゴボリ…
気泡の音がたち、そちらを振り向く。しかし、何もいない。
ゴボリ…
今度は右から音がする。そちらを向けば…今メインカメラから何か黒い影が逃げるのが見えた。
ゴボリ…
今度はすぐ後ろ…!
振り向く時間もない。無重力に近い状況下だからできるサブミッション。
太い左腕でチーフの左腕をはさみ、両足を絡めるように右腕を挟む。次の瞬間…
バギバギバキバキッィ!!
ガイキングは体を伸ばし、テムジンの両腕を千切りとる。
「ぐっ!しかし、まだだ!」
思い切り地面を蹴り、跳躍しようとする。しかし…
「角!?」
テムジンは角に挟まれうまく飛ぶことが出来ない。
「パラァァァァイザァァァアア!!」
「ぐああああああああああああ!!!」

水上――
「チーフさんが…!助けないと!」
プレシアが言う。
「だが…この機体では…水中は無理だ」
ガルドが苦々しげにつぶやく。
「僕のも…この気密性では…それにムチャな操縦は美久が…!」
マサキもそう鎮痛な面持ちでつぶやく。
「私が行きます!」
プレシアが宣言するかのように言う。
「大丈夫なのか?」
ガルドが声をかける。プレシアは戦えないといっていた。しかし、今から行くところは、間違いなく戦場だ。
彼女に行かせていいものなのか…?
「助けてすぐ戻ります!」
「でも…(戦えない!?見ただけもそれなりに性能は高そうだが…チックズが)」
相手の技量によっては、それも難しいかもしれない。
完全に理想論だ。しかし、この娘はそれを信じ、今チーフを助けるにはそれしかない…!
「わかった。俺たちはここにいる。……急いで、必ず戻るんだ」
納得したわけではない。しかし、これしかなく、彼女が信じるもののためになら…
「はい!」
そう答え、グランゾンは水中に降りていった。

「どこ…?どこなの?」
水中に入ったグランゾンは急いでチーフを探す。そのとき――
「ぐああああああああああああ!!!」
「!」
通信機から、チーフの苦痛の絶叫が響き渡る。
「チーフさん…そんな――お願い、生きてて…!」
まさか――そんな思いが頭によぎる。グランゾンは全速でその場に急行していた。
そして、目の前にあるのは…
「チーフさん!?大丈夫ですか?返事をしてください!」
両腕をもがれ、黒く焼け爛れるように機体がくすんでいるテムジンがいた。
――罠かもしれない――そんな思いが頭によぎるが、気にしてる場合ではない。今は一刻を争うのだ。
「チーフさん!?」
さらに声をかける。すると、
「う、うう…」
呻くような、力のない声が聞こえる。どうやら、気絶してるだけのようだ。
「大丈夫ですか!?今上に…」
「うおおおおおおおおおおっ!!」
グランゾンが戻ろうと浮上する時を狙って、物陰からガイキングがザンバーで襲い掛かるが――
グランゾンはまるで何もなかったかの様に消えてしまった。
グランゾンが使ったのはネオ・ドライブ。空間跳躍を除けば、1日一回しか使用できないものの、超高速で移動できる代物だ。

「だ…大丈夫なんでしょうか?」
「わからん…だが、信じるしかない」
そんなことを話していた二人の前に、突然グランゾンが現れる。
「「!」」
「急いでください!ここから離れます!」
「わ、わかりました!」
しかし、ガイキングはそれを許さなかった。
爆音をたて、水中から悪鬼がせりあがる!
かなり近い位置で静止するガイキング。
逃げようと背を向ければ、相手の攻撃をまともに食らう事は確実だった。
先制攻撃を仕掛けてきている。それに加え、右腕は既に無く、身体のそこかしこに傷がある
。左手は幅広の剣を持っている。どこからどう見ても、戦闘して来たことが見て取れる。
それでも――
「私はプレシア・ゼノキサスです!そちらのパイロットさん聞こえますか?」
プレシアが外部スピーカーをONにして声を張り上げる。
「俺は剣鉄也だ。」
ガイキングから低い男の声が聞こえた。どこまでも暗く、冷たい声にガルドは畏怖を感じる。
プレシアも男の冷たい声に気勢を削がれながらも、果敢に言葉を続けた。
「違います!私達は戦うつもりはありません!あなたも戦って傷ついたんでしょう?無益な争いはやめて下さい!
私達が出来ることならお手伝いしますから・・・」
「ならば死ね」
再び低い声が返ってくる。
「どうして!何故戦わなければならないんですか!」
「何故戦う?誓いのためだ」
そう言ってガイキングはダイターンザンバーを構える。
「待ってください!僕達には戦う理由はありません!」
マサキがそう言うのを聞くと、鉄也は声を荒げた。
「俺は勝ってもとの世界に戻り、ミケーネと戦う!そのためならば誰であろうと殺す!」
有無を言わさぬ口調に、プレシアが怯む。ガルドはブラックサレナをグランゾンの前に進めた。
「見逃してはくれないのか」
「生き残り、勝つためだ。逃がすわけにはいかん」

一片の曇りすら感じられない鉄也の声を聞き、ガルドは静かに覚悟を決め、他のみんなに通信を開く。
「お前達は町のほうに戻れ。そこなら処置できる薬か何かがあるはずだ。
 俺がこいつを食い止める。俺があいつに突進するのが合図だ。いいな?」
「ガルドさん、何言ってるの!?ガルドさんだけ置いて逃げるなんてできないよ!」
案の定のプレシアの反論に、マサキが口を挟んだ。
「この距離じゃ3人とも逃げるのは無理です!でも…一人が食い止める事が出来れば、残り二人は逃げられる。
この子がいる限り、僕は戦えない。君だって、その機体を抱いたまま戦うことは出来ない。これしかないんだ…!」
「でも…!」
「ガルドさんがどんな気持ちでいったかわからないのか!君は急げば、その人、チーフさんを助けられるかもしれない!
 でも、時間がたてば危険になる!これ以上はないんだ!
(故人の一種として意志を通し、命をネタに使いって揺さぶり、思想を限定させ選択肢を縮める…基本だが、有効だな。
 こんな状況でなければ新参者の俺では効果が薄かっただろうが…死体も役に立つ…ククク)」
マサキが語尾を強くし、きつく、どこか諭すように言う。
ガルドも畳み掛けるように言った。
「大丈夫だ、プレシア。俺もお前も、まだやらねばならんことがある。必ず生き残る。約束だ」
「本当に、約束してくれる?」
「ああ。俺は約束を破ったことが無いんだ。心配するな」
俺も筋金入りの嘘付きだな・・・とガルドは自嘲する。だが、死ぬ気が無いというのは間違いない。
(俺は、イサムに会うためにも、この娘のためにも、死ぬわけにはいかん…!)
「かならず、戻ります!ですから…!
 (駄目押しの誘導だ。先んじての他者の同意の上での行動の決定。
 このガルドとかいうクズはやや疑っていたようだが、この状況ではどうもできまい)」
「私もかならず、かならず戻ります!」
プレシアも叫ぶ。
「了解だ。期待している。では行くぞ。3、2、1、GO!」
カウントダウンと同時に猛然と高機動型ブラックサレナはガイキングへ向けて突進した。
木原マサキの顔には邪悪な笑みが張り付いていた。

ブラックサレナとガイキングの戦いは始まって5分になろうとしていた。
ガイキングの攻撃をかわしながら体当たりを繰り返すブラックサレナだが、固い装甲に阻まれる。
しかも突進のタイミングを、段々と読まれて来ている事をガルドは感じていた。反応が良くなってきているのだ。
もし突進を正面で受け止められたら、どんな反撃を食らうか分からない。
この5分間戦いは落ち着いていた。しかし、ついに――23回目の突撃。唐突に勝負の分かれ目が訪れた。
ガイキングがザンバーをほうり捨てる
(スマン…かならずあとで拾うからな…!)
そして、高機動型ブラックサレナの突起をつかみ、
「うおおおおお!!」
そのまま水面に叩き落すかのように下に振るう!
「っぐ!?」
おそらく。先ほど水中に来なかったことから、水中に落とそうとしているのだろう。
「……まだだ!まだやらせん!」
ガルドの声とともにブラックサレナは高機動用パーツをパージする。
ガイキングのつかんだパーツは体を離れ、
(いまだ…!)
最大の危機が最大のチャンスに変わった。
片腕しかない腕を振り切り、落とすためブースターをふかしきった直後…がら空きの胴体が目の前に!
「おおおおおおおッッ!」
雄叫びと共に、体当たりがガイキングの胸部を抉る。踏ん張りが利かないガイキング。
真昼だと言うのに流星が空に流れた。
体当たりの衝撃を受け流せず食らい、空を2機がもつれあいビルに突っ込む。
「っぐ!?そう来るか…ならしっかりつかんでおけよ…!」
鉄也の声とともにガイキングの胸、まさにブラックサレナとせりあう場所にエネルギーが集束する。
気付いてブラックサレナも急制動で離れようとするが、
「食らえ!ハイドロ!ブレイザァァァッ!!」
空気が圧縮され、轟音を撒き散らす!
「直撃だけは避けて見せよう…!」
しかし、ガルドも諦めない。ギリギリで急旋回し、どうにか右肩が持っていかれるだけですんだ。
「バランサーが破損…!着水するしかないか」
そのままブラックサレナは深層に落ちていく。しかし、
(まだだ。まだやってみせる)
もはや肩がかけ、安定したブースターは飛行はこの形態では出来ない。
そう思ったガルドは残っていたブラックサレナのパーツをパージ。
ついにエステバリス・Cの姿が現れる。エステバリス・Cは初期ロットでいう0Gフレームを基本としているため、
重力下だけでなく、重力の少ない状況水中などでもきちんと行動できる。が、
(このままでは勝ち目はない。なにかないのか…?)
状況そのものは好転しない。武器は今となってはハンドガンのみ同然。
かならず相手は水中に入ってくるだろう。ガルドは水中戦など当然やったことがない。周りを見回すエステバリス。そして、
(あれは…)
ガルドはそれを見つけた。

「装甲がひしゃげはしたが、内蔵火器については問題なし。まだまだいけるな。」
チェックを終えたガイキングが起き上がる。こちらの思う通り、水中に落とすことには成功した。
あとは、追い詰めて倒す…!
そう思い、ガイキングが水面に出たときだった。
「これを失敗したらあとがない…!いくぞ…!」
水面、ガイキングの目の前に突然腕が現れ、
ドォン!
水中からのハンドガンの連射が腕にあたり、腕がはじける。咄嗟にとまるガイキング。
続いて、ライフルタイプの火器が水面に飛び出し、それもまたハンドガンにより爆発。
周りに暴発したエネルギーが撒き散らされる。防除姿勢をとり厚い装甲でガイキングも防ぐ
「く!?」
さらに…黒い、大きな何かが水面にまたも現れ、爆発。今度は回りに煙というか。爆炎を撒き散らす。
ガルドが投げたのは、テムジンの腕、武器、そして、無事だったブラックサレナの左肩。
1発目で動きを止め、
2発目で姿勢を変えさせ、動きを制限、
3発目で目をくらます。
そして、4発目。ガルド自身…!
「おおおおおおっ!」
煙の中からディストーションフィールドを張ったエステバリスが最大出力で姿をあらわす。
(これ以上胴体へのダメージはまずい!)
ガイキングは胴体をひねり、ギリギリでエルテバリスを回避。カウンターや反撃などできようもない。
(俺の、勝ちだ)
ガルドが珍しく笑う。そのままエステバリスは街に全速で突っ込んでいく。
煙が晴れ、ガイキングが姿勢を立て直した頃には、既にエステバリスは廃墟の中に消えていた。
このまま追おうかと思ったが、鉄也はやめた。深追いで奇襲を受けることになる恐れがあったからだ。
(ザンバーを拾いに行こう)
鉄也はそう思って水底に入っていった。



【プレシア=ゼノキサス 搭乗機体:グランゾン(スーパーロボット大戦OG)
 パイロット状況:健康
 機体状況:良好
 現在位置:C-1
 第一行動方針: チーフの救出
 第二行動方針:助けられる人は助ける
 最終行動方針:まだ決めていない】

【ガルド・ゴア・ボーマン 搭乗機体:エステバリス・C(劇場版ナデシコ)
 パイロット状況:良好
 機体状況:良好
 現在位置:E-1の市街地
 第一行動方針: プレシア、イサムの障害の排除及び2人との合流(必要なら、主催者、自分自身も含まれる)
 最終行動方針:イサムの生還】

【チーフ 搭乗機体:テムジン747J(電脳戦機バーチャロンマーズ)
 パイロット状況:気絶
 機体状況:Vコンバーター不調『Mドライブ+S32X(レプリカ)』 両腕断絶、装甲表面に損傷
 現在位置:C-1
 第一行動方針:ハッターを捜索し、Vコンバーターを修復
 第二行動方針:ゲームからの脱出(手段は問わない)
 備考1:チーフは機体内に存在。
 備考2:機体不調に合わせ、旧式OSで稼動中。低出力だが機動に問題は無い】

【剣鉄也 搭乗機体:ガイキング後期型(大空魔竜ガイキング)
 パイロット状態:マーダー化
 機体状態:胸部に大きな破損があるが、武器の使用には問題なし。右腕切断。ダイターンザンバー所持
 現在位置:E-1 水中
 第一行動方針:他の参加者の発見および殺害
 最終行動方針:ゲームで勝つ】

【木原マサキ 搭乗機体:レイズナー/強化型(蒼き流星レイズナー)
 パイロット状態:絶好調
 機体状態:ほぼ損傷なし
 現在位置:C-1
 第1行動方針:良い自機の回収
 第二行動方針:使えるクズを集める
 最終行動方針:ユーゼスを殺す】





前回 第147話「内と外の悪鬼」 次回
第146話「二人の共感、一人の違和感 投下順 第148話「北へ。
第142話「立ち止まる事無く、振り返る事無く 時系列順 第159話「そして狩人は息を潜める

前回 登場人物追跡 次回
第120話「情けは人の為ならず プレシア・ゼノサキス 第161話「誓い
第120話「情けは人の為ならず ガルド・ゴア・ボーマン 第174話「The Game Must Go on
第120話「情けは人の為ならず チーフ 第161話「誓い
第119話「戦闘マシーン 剣鉄也 第170話「遭遇、狂気、破滅。そして…
第139話「冥王と巨人のダンス 木原マサキ 第161話「誓い


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最終更新:2008年05月30日 16:01