爽やかでない朝


早朝、まだ日が昇ったばかりの廃墟をヒュッケバインガンナーとV2ガンダムが慎重に進んでいた。
「本当に大丈夫かね?」
タシロ・タツミは共に行動するラトゥーニ・スゥボータ少尉に声をかける。
「大丈夫です。体調に支障はありません」
気丈に答える。その声は出合った頃の明るさを失っていた。友人から攻撃された心の傷は大きいのだろう。
怪我はたいした事ないと言っていたが、大事を取って夜間は身を隠していたのだ。
「そうではない。再び彼女を前にした時、キミは………」
タシロが懸念するのはゼオラの事。ラトゥーニの親しい友人だったらしいが、恋人に死なれ錯乱状態に陥っていたのだ。
このような状況では無理もないとタシロは思う。しかし放っておくわけにも行かなかった。
「以前にも同じ様な事がありました。みんなに凄く迷惑かけたけれど、ちゃんと立ち直ってくれました。大事な友達なんです。
 ちょっと思い込みが激しくて、アラドを大好きなだけなんです。ゼオラは必ず立ち直りますから」
シッカリとはしているが、悲壮な声だった。相手の事を理解している分、尚更辛いのだろう。
「しかし、もし万が一………」
「その時は………私が止めます」
「………そうか。では何も言うまい」
(想像以上に強い意思と責任感を持つ子だ。それが裏目に出なければ良いが)
シッカリした人間ほど自分を追い詰める。そして重圧に押しつぶされた若者をタシロは数多く知っていた。
(こんな状況だからこそ、我々大人が正しく振舞わねばならない。殺人ゲームなどもってのほかだ)
タシロは改めて主催者に怒りを燃やすと共に、他の子供達は無事なのだろうかと思う。
そんな心中を嘲笑うかのように朝の放送が新たな死者を読み上げていった。



【タシロ・タツミ 搭乗機体ヒュッケバインmk-3ガンナー(パンプレオリ)
 パイロット状況:上半身打撲
 機体状況:Gインパクトキャノン二門使用不可、前面の装甲がかなりはがれる
 位置:B-1廃墟
 第一行動方針:精神不安定なゼオラをどうにかする。
 最終行動目標:ゲームから可能な限りのプレイヤーとともに生還
        (いざというときは、自分が犠牲になる覚悟がある)】

【ラトゥーニ・スゥボータ 搭乗機体V2アサルトバスターガンダム(機動戦士Vガンダム)
 パイロット状況:頭部に包帯(傷は大した事はない)
 機体状況:盾が大きく破損(おそらく使い物にならない)アサルトパーツ一部破損
 位置:B-1廃墟
 第一行動方針:リュウセイや仲間と合流する。
 第二行動方針:精神不安定なゼオラをどうにかする。
 最終行動目標:ゲームから可能な限りのプレイヤーとともに生還】

【時刻:6:00】





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最終更新:2008年05月30日 15:32