壊れたつがい


「ア、アラドが死んだ?嘘・・・・・嘘よ・・・・」
廃墟に白髪の少女の声が響いた。ゼオラは目を手で覆いうなだれる。、
死ぬ間際でもないのに今までの記憶が走馬灯のように駆けていく。
記憶といってもスクールでの厳しい訓練、人体実験つらいことばかり思い出した。
しかし、その中にある小さな思い出、オウカ姉さま、ラト、そしていつも一緒にいた
アラドがいたからこそ、いままでやっていけたのかもしれない。
今、彼女は自分のアラドへの感情を本当に理解した。「恋」だったのだ。
気付けたのは良いが、自分が恋していたアラドはもう会えない、虚無と絶望が彼女を包んだ
(死のう)
彼女はそう思った。でも、アラドは自分を守れなかった私を許してくれるだろうか・・・
そうだ、アラドへの手向けをしなければいけない。悲しみが段々薄れていく。逆にある決意が頭に浮かんだ。
(アラドを殺した奴、アラドを殺したこのゲームの主催者、そしてそれを止めなかった他人。)
(みんな殺してやろう。)
いつの間にか彼女の頬に伝っていた涙は止まった。しかし瞳は悲しみにも絶望にも似て似つかぬ狂気の目であった。

「アラドが・・・・ううっ・・・」
その隣にいたラトゥーニも涙こそ堪えているものの深い悲しみの顔をしている。隙を見せている。
攻撃するなら今だ。しかし、ラトとの交流も深かったので、どうしても、撃つのをためらってしまう。
(ラトは・・・・どうしましょう・・・)
彼女の迷っている時。タシロは悲しんでいる少女二人をどう接すればよいか考てえいた。
彼女たちは深く悲しんでいる。死亡者放送の最初からショックを受けていたことから、
アラドという人物と親しかったののだろう・・・ここで声をかけても慰めにもならないは知っている。
むしろ反感を買うかもしれない。しかし、これ以上犠牲者を増やさないためにも、行動を起こさねばならないのだ。
タシロは注意を払いつつ、タシロは意を決し声をかける。
「ゼオラ君、ラトゥーニ君。今は悲しいかもしれないが君たちが生き残ることこそがアラド君への・・・」
タシロの言いかけの言葉が、元来精神操作などで不安定なゼオラの憎悪に火をつけた。
(あいつ、気安くアラドのことを・・・・許せない・・・・!)
ゼオラは考えるのを中断し、半ば脊髄反射的にガンナーにゼオライマーの手を向けた。
「アンタに・・・アンタに何がわかるって言うのよ!!」
その手から衝撃波が走った。そのスピードは速く今の近距離で避けられるものではない。
(くっ、やはり私が浅はかだったか・・・・・)
彼女はゼオラ君はやはり、精神的に不安定な状態だったようだ。直感的に死を悟ったタシロは自分の迂闊さを悔いた。
「危ないっ!」
一瞬だった、ラトゥーニのガンダムがそのシールドでガンナーを庇ったのだ。シールドは一瞬で大きくひび割れ、砕けた。
しかしあの強固そうな盾でも加減無しの衝撃波は100%防ぎきれなかったようだ。

「きゃあああああ!」
「うおおおおおっ!」
2機は轟音と共に砂埃を上げ後方の廃墟へ吹き飛んだ。高い砂埃がボロボロのストリートに上がる。
「えっ!?ラト・・・ラトォォォォォ!」
ゼオラはあの攻撃では二人は死んだだろうと思った。しかし、今ラトを殺す気はなかった。
今度は自分の手でただ一人残った仲間を手にかけてしまった。どうしようもない悲しみがゼオラを突き抜けた。
「アアッ、アアッ、アラドが死んだ?ラトも死んだ?・・・いやああああああああああああああああああ!」
ゼオラは狂ったような悲鳴をあげ、さらにボロボロとなった廃墟の反対方向へゼオライマーを疾走させた。
しばらくして、砂埃と瓦礫の中から二機のロボットが姿を表した。ガンダムは動いていない
タシロは安全を確認すると、すぐガンナーを降りガンダムのコックピットをあけた。
ラトゥーニは頭部から血を流しているものの、ただ気絶をしているだけのようだ。
ラトゥーニをコックピットから出し、横にさせるが、タシロの顔には安著の表情は見えない。
「いかんな、今の彼女を放っておけばさらに犠牲者が出るかもしれん・・・・・」
幸いにも自分をかばってくれたラトゥーニは気を失っているだけのようだ。
一刻も早く彼女を止めなければいけない。こうなってしまった責任を感じつつ、タシロはそう思った。



【タシロ・タツミ 搭乗機体ヒュッケバインmk-3ガンナー(パンプレオリ)】パイロット状況:上半身打撲
 機体状況:Gインパクトキャノン二門使用不可、前面の装甲がかなりはがれる
 位置:B-1廃墟
 第一行動方針:精神不安定なゼオラをどうにかする。
 最終行動目標:ゲームから可能な限りのプレイヤーとともに生還
        (いざというときは、自分が犠牲になる覚悟がある)】

【ラトゥーニ・スゥボータ 搭乗機体V2アサルトバスターガンダム(機動戦士Vガンダム)】
 パイロット状況:被弾の衝撃により頭をぶつけ気絶、少し頭部出血。(一時間もあれば目覚める)
 機体状況:盾が大きく破損(おそらく使い物にならない) アサルトパーツ一部破損
 位置:B-1廃墟
 第一行動方針:リュウセイと仲間を集める。
 最終行動目標:ゲームから可能な限りのプレイヤーとともに生還】

【ゼオラ・シュバイツァー 搭乗機体:ゼオライマー(冥王計画ゼオライマー)
 パイロット状況:精神崩壊  (ラトとタシロは死んだと思っている)
 機体状況:左腕損傷大、次元連結システムは問題無し
 現在位置:B-1から疾走中
 第一行動方針: ???
 最終行動方針: ???】

【初日 18:20】





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第77話「不信と決意 タシロ・タツミ 第133話「爽やかでない朝
第77話「不信と決意 ラトゥーニ・スゥボータ 第133話「爽やかでない朝
第77話「不信と決意 ゼオラ・シュバイツァー 第102話「対なす少女


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最終更新:2008年05月30日 04:18