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「鍵は揃えど未だ気付かず」(2009/02/19 (木) 21:28:51) の最新版変更点
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*&color(red){鍵は揃えど未だ気付かず}
「……トウマ、俺たちが逃げている間に例の放送が入ったようだが……お前、内容は聞いてたか?」
バグ・ニューマンの追跡から逃れて十数分後。
ようやく追跡を振り切ったと安堵して、クォヴレーはトウマに話しかける。
「……悪い。あの時は逃げ出すだけで精一杯だったから、放送聞いてる余裕は無かった」
「そうか……」
トウマから返ってきた答えを聞いて、クォヴレーは苦々しげな表情を見せた。
「そういうお前は……って、その顔だと聞く必要もないか。お前も聞いてなかったんだな」
「……すまん」
「いいさ、お互い様だ」
その言葉に反し、表情は晴れない。だが、それも当然だ。
ただでさえ“ハズレ”の機体を寄越されて苦戦は避けられないのに、それに加えて情報まで失った。
こういうのを、泣きっ面に蜂というのだろう。
「まったく……ついてねぇなあ……」
肩を落とし、溜息一つ。このゲームが始まってからこっち、状況としては最悪と言えた。
……だが、実の所。この最悪な状況を打開する鍵は、この場に存在していたのだ。
その事実に、鍵の持ち主が未だ気付いていないだけで。
「それにしても、不公平だよなぁ……」
「何が、だ?」
「他の連中にはマトモなロボットが支給されてるみたいなのに、俺たちは車とバイクだぜ?
コイツを不公平といわず、何を不公平と言えばいいんだよ」
「そう言われても、俺が今までに接触したのは、お前を除けば先程の男くらいだ。
他の参加者に支給された機体の事を言われてもな」
「はぁ……そいつがボルフォッグみたいに変形する車だったらなぁ……」
「変形?」
「ああ……普段は車になってるのに、いざとなれば人間型に変形。
そういうロボット、ちょっと知ってたもんでな」
愚痴る口調でトウマは言う。
……だが、気付かない。自分の言葉が、正鵠を射ていた事に。
「ふむ……変形、か……」
「なあ……その車、本当に何かあるんじゃないのか?
もしこれがただの車だとしたら、ビームなんかついてないはずだし……」
「それは……確かに、な」
トウマの言葉にクォヴレーは頷く。
そう、かもしれない。
この車を指して、ユーゼスは確かに“強力な機体”と言った。
あの時は奴の皮肉かと思ったものだが……トウマの言葉が正しいとなれば、それにも納得がいく。
「マニュアル、念入りに読んでみろよ。ひょっとしたら、隠された機能とか……」
「いや、それが……」
……だが、もしそうなのだとしたら。
クォヴレー・ゴードンは、とんでもない過ちを犯したことになる。
「ど、どうした!? なにか、まずい事でもあったのか!?」
クォヴレーが沈みこんだ表情になったのを見て、トウマは慌てて声をかける。
それに、クォヴレーは――
「マニュアルは……無い。単なる車の運転教本だと思って、窓から捨ててしまった」
「なっ……!」
答え難い事を、ごくあっさりと答えていた。
「どうすんだよ、お前……」
「……どうしようもないな」
「そんな、他人事みたいに……」
「ことさら意味も無く不安になってみた所で、現状の打破には繋がらないだろう?」
「そりゃ、そうかもしれないけど……お前なぁ……」
はぁと溜息を吐きながら、トウマは思わず頭を抱える。
「……どの辺りに捨てたのか、覚えてるか?」
「いや、全く。それに今からマニュアルを拾いに行くのは危険すぎる。
せっかく振り切ったあの男と、鉢合わせしてしまう可能性もあるからな」
「くっ……打つ手無し、か……」
「そのようだな」
「お前……自分の事だろうが……」
「それを言われると辛いな……」
はぁ。今度は二人、示し合わせたように溜息を吐く。
……今の二人の状況を端的に言い表すとするのなら、八方ふさがりと言うやつだろう。
だが、繰り返し言おう。状況は彼らが思うほど、悪い事ばかりではなかったりする。
そう。トウマは、気付いていなかった。
この状況を打ち破る鍵を、自分が握っている事に。
かつて、トウマが大雷凰と共に挑んだ戦いより以前。地球圏を舞台に繰り広げられた戦いがあった。
そして当時の戦いには、トウマと出会った事の無い、数多くの戦士たちが参加していた。
それは例えば、勝利の名前を関する白き戦士。
それは例えば、海と大地の挟間より浮上した者達。
それは例えば、木星の支配者と戦った宇宙海賊。
それは例えば、原子力を力の源とする巨人。
トウマは彼らとの直接的な面識こそ無かったが、その戦い振りは資料や伝聞で知らされていた。
特に某筋金入りのスーパーロボットマニアなどは、こちらが聞いてもいない事を詳しく教えてくれたものだった。
掛け声、必殺技、操縦方法。当時の仲間達を通じて知った知識の数々を、彼は惜し気も無く披露していった。
そして、彼が詳しく教えてくれた機体の中に、その名前は存在した。
コズモレンジャーJ9の変形戦闘メカ――“ブライガー”の名前が。
そう、トウマは知っていたのだ。
本人が気付いていないだけで、ブライガーへの変形機能を作動させるキーワードを、彼は確かに知っていたのだ。
「それにしても……なぁーんか、引っ掛かるんだよなぁ、その車……」
……だが、彼は未だ気付かない。自分の記憶に、その機体を目覚めさせる鍵が存在する事に。
「……それよりトウマ、これからの方針を話し合わないか?」
ブライサンダーを見て頭を悩ませるトウマに、クォヴレーは淡々と話しかける。
「方針、ねえ……で、具体的にはどうするつもりなんだ?」
「……考えが、ある」
「考え?」
「ああ。俺は、この近くで様子を伺うべきだと思っている」
周囲に広がる見渡しの良い平地。
身を隠す場所の無いその場所で、クォヴレーはそうトウマに告げる。
「こんな、だだっ広い平地でか? もし、誰かに見付かったら……」
「……危険だろうな。俺達には戦う力が無い。
もし、俺達を見付けたのが戦う気になっている人間だとしたら、そこで終わりになる可能性は低くない」
「だったら……!」
この戦う力が無い状況で、それがどれだけ危険な事か。
それを諭そうとするトウマの声を、しかしクォヴレーは遮って言う。
「……だが、戦う気の無い人間が俺達を見付けたらどうする?」
「どうするって、そりゃ……」
「バイクと車だ。こちらに戦う意思が無い事……いや、戦う力自体が無い事は納得してもらえるだろう。
携帯食料辺りと引き換えに、情報を聞き出す事が出来るかもしれない」
クォヴレーの言葉には、それなりの説得力があった。
この状況下で、バイクと車の組み合わせを脅威に思う人間はまずいない。
戦う気の無い人間ならば、恐らく見過ごしてくれる事だろう。
クォヴレーの言うとおり、情報の交換に応じてくれる事も考えられなくはない。
「それは、そうかもしれないが……」
「それに、むやみやたらに動き回っていれば、禁止エリアに足を踏み入れる可能性が高くなる」
「う……」
「勿論、この場所が禁止エリアである可能性もあるわけだが、決して高い確立ではない。
闇雲に動き回らないでいた方が、まだ安全性は高いだろう」
……説き伏せられて、トウマは頷く。
クォヴレーの案は、確かに悪い考えではなかった。
自分達の状況を考えれば、むしろ最善の案かもしれない。
しかし、それは……。
「なあ……それって、運任せにならないか?」
「そうなるな」
そう、運任せだった。
これから自分達が接触する人間が、必ずしも戦う意思を持たない人間だとは限らない。
自分達の今居る場所が、禁止エリアでない可能性が無い訳でもない。
「まったく……」
今日、何度目になるかもわからない溜息。
だが、トウマの腹は決まっていた。
「……いいさ。その考え、乗ってやる。こうなりゃ一蓮托生だしな」
にやり。笑って、頷き合う。
この選択が吉と出るか、凶と出るか――
それを知る者は、誰一人としていなかった。
【クォヴレー・ゴードン 搭乗機体:ブライサンダー(銀河旋風ブライガー)
パイロット状態:良好
機体状態:良好(変形不能)
現在位置:C-7
第一行動方針:この場に留まり誰かと接触する
第二行動方針:なんとか記憶を取り戻したい
最終行動方針:ユーゼスを倒す】
【トウマ・カノウ 搭乗機体:ワルキューレ(GEAR戦士 電童)
パイロット状態:良好
機体状況:良好
現在位置:C-7
第一行動方針:クォヴレーの案に付き合う
第二行動方針:アルマナの発見、保護
最終行動方針:ユーゼスを倒す
備考:副指令変装セットを一式、ベーゴマ爆弾を2個、メジャーを一つ所持しています】
【時刻19:40】
※同一作品の人物以外とは面識がない(バンプレオリについてはオリ同士のみ)という設定により破棄
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| 第101話「[[いんたぁみっしょん]]」| 時系列順| -|
| 前回| 登場人物追跡| 次回|
| 第71話「[[俺の力・お前の力]]」| クォヴレー・ゴードン| -|
| 第71話「[[俺の力・お前の力]]」| トウマ・カノウ| -|
[[リストに戻る>IF(1)]]
[[IFネタトップに戻る>IFネタ]]
[[投下時期を参照する>IF投下順]]
[[時系列を参照する>IF時系列順]]
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*&color(red){鍵は揃えど未だ気付かず}
「……トウマ、俺たちが逃げている間に例の放送が入ったようだが……お前、内容は聞いてたか?」
バグ・ニューマンの追跡から逃れて十数分後。
ようやく追跡を振り切ったと安堵して、クォヴレーはトウマに話しかける。
「……悪い。あの時は逃げ出すだけで精一杯だったから、放送聞いてる余裕は無かった」
「そうか……」
トウマから返ってきた答えを聞いて、クォヴレーは苦々しげな表情を見せた。
「そういうお前は……って、その顔だと聞く必要もないか。お前も聞いてなかったんだな」
「……すまん」
「いいさ、お互い様だ」
その言葉に反し、表情は晴れない。だが、それも当然だ。
ただでさえ“ハズレ”の機体を寄越されて苦戦は避けられないのに、それに加えて情報まで失った。
こういうのを、泣きっ面に蜂というのだろう。
「まったく……ついてねぇなあ……」
肩を落とし、溜息一つ。このゲームが始まってからこっち、状況としては最悪と言えた。
……だが、実の所。この最悪な状況を打開する鍵は、この場に存在していたのだ。
その事実に、鍵の持ち主が未だ気付いていないだけで。
「それにしても、不公平だよなぁ……」
「何が、だ?」
「他の連中にはマトモなロボットが支給されてるみたいなのに、俺たちは車とバイクだぜ?
コイツを不公平といわず、何を不公平と言えばいいんだよ」
「そう言われても、俺が今までに接触したのは、お前を除けば先程の男くらいだ。
他の参加者に支給された機体の事を言われてもな」
「はぁ……そいつがボルフォッグみたいに変形する車だったらなぁ……」
「変形?」
「ああ……普段は車になってるのに、いざとなれば人間型に変形。
そういうロボット、ちょっと知ってたもんでな」
愚痴る口調でトウマは言う。
……だが、気付かない。自分の言葉が、正鵠を射ていた事に。
「ふむ……変形、か……」
「なあ……その車、本当に何かあるんじゃないのか?
もしこれがただの車だとしたら、ビームなんかついてないはずだし……」
「それは……確かに、な」
トウマの言葉にクォヴレーは頷く。
そう、かもしれない。
この車を指して、ユーゼスは確かに“強力な機体”と言った。
あの時は奴の皮肉かと思ったものだが……トウマの言葉が正しいとなれば、それにも納得がいく。
「マニュアル、念入りに読んでみろよ。ひょっとしたら、隠された機能とか……」
「いや、それが……」
……だが、もしそうなのだとしたら。
クォヴレー・ゴードンは、とんでもない過ちを犯したことになる。
「ど、どうした!? なにか、まずい事でもあったのか!?」
クォヴレーが沈みこんだ表情になったのを見て、トウマは慌てて声をかける。
それに、クォヴレーは――
「マニュアルは……無い。単なる車の運転教本だと思って、窓から捨ててしまった」
「なっ……!」
答え難い事を、ごくあっさりと答えていた。
「どうすんだよ、お前……」
「……どうしようもないな」
「そんな、他人事みたいに……」
「ことさら意味も無く不安になってみた所で、現状の打破には繋がらないだろう?」
「そりゃ、そうかもしれないけど……お前なぁ……」
はぁと溜息を吐きながら、トウマは思わず頭を抱える。
「……どの辺りに捨てたのか、覚えてるか?」
「いや、全く。それに今からマニュアルを拾いに行くのは危険すぎる。
せっかく振り切ったあの男と、鉢合わせしてしまう可能性もあるからな」
「くっ……打つ手無し、か……」
「そのようだな」
「お前……自分の事だろうが……」
「それを言われると辛いな……」
はぁ。今度は二人、示し合わせたように溜息を吐く。
……今の二人の状況を端的に言い表すとするのなら、八方ふさがりと言うやつだろう。
だが、繰り返し言おう。状況は彼らが思うほど、悪い事ばかりではなかったりする。
そう。トウマは、気付いていなかった。
この状況を打ち破る鍵を、自分が握っている事に。
かつて、トウマが大雷凰と共に挑んだ戦いより以前。地球圏を舞台に繰り広げられた戦いがあった。
そして当時の戦いには、トウマと出会った事の無い、数多くの戦士たちが参加していた。
それは例えば、勝利の名前を関する白き戦士。
それは例えば、海と大地の挟間より浮上した者達。
それは例えば、木星の支配者と戦った宇宙海賊。
それは例えば、原子力を力の源とする巨人。
トウマは彼らとの直接的な面識こそ無かったが、その戦い振りは資料や伝聞で知らされていた。
特に某筋金入りのスーパーロボットマニアなどは、こちらが聞いてもいない事を詳しく教えてくれたものだった。
掛け声、必殺技、操縦方法。当時の仲間達を通じて知った知識の数々を、彼は惜し気も無く披露していった。
そして、彼が詳しく教えてくれた機体の中に、その名前は存在した。
コズモレンジャーJ9の変形戦闘メカ――“ブライガー”の名前が。
そう、トウマは知っていたのだ。
本人が気付いていないだけで、ブライガーへの変形機能を作動させるキーワードを、彼は確かに知っていたのだ。
「それにしても……なぁーんか、引っ掛かるんだよなぁ、その車……」
……だが、彼は未だ気付かない。自分の記憶に、その機体を目覚めさせる鍵が存在する事に。
「……それよりトウマ、これからの方針を話し合わないか?」
ブライサンダーを見て頭を悩ませるトウマに、クォヴレーは淡々と話しかける。
「方針、ねえ……で、具体的にはどうするつもりなんだ?」
「……考えが、ある」
「考え?」
「ああ。俺は、この近くで様子を伺うべきだと思っている」
周囲に広がる見渡しの良い平地。
身を隠す場所の無いその場所で、クォヴレーはそうトウマに告げる。
「こんな、だだっ広い平地でか? もし、誰かに見付かったら……」
「……危険だろうな。俺達には戦う力が無い。
もし、俺達を見付けたのが戦う気になっている人間だとしたら、そこで終わりになる可能性は低くない」
「だったら……!」
この戦う力が無い状況で、それがどれだけ危険な事か。
それを諭そうとするトウマの声を、しかしクォヴレーは遮って言う。
「……だが、戦う気の無い人間が俺達を見付けたらどうする?」
「どうするって、そりゃ……」
「バイクと車だ。こちらに戦う意思が無い事……いや、戦う力自体が無い事は納得してもらえるだろう。
携帯食料辺りと引き換えに、情報を聞き出す事が出来るかもしれない」
クォヴレーの言葉には、それなりの説得力があった。
この状況下で、バイクと車の組み合わせを脅威に思う人間はまずいない。
戦う気の無い人間ならば、恐らく見過ごしてくれる事だろう。
クォヴレーの言うとおり、情報の交換に応じてくれる事も考えられなくはない。
「それは、そうかもしれないが……」
「それに、むやみやたらに動き回っていれば、禁止エリアに足を踏み入れる可能性が高くなる」
「う……」
「勿論、この場所が禁止エリアである可能性もあるわけだが、決して高い確立ではない。
闇雲に動き回らないでいた方が、まだ安全性は高いだろう」
……説き伏せられて、トウマは頷く。
クォヴレーの案は、確かに悪い考えではなかった。
自分達の状況を考えれば、むしろ最善の案かもしれない。
しかし、それは……。
「なあ……それって、運任せにならないか?」
「そうなるな」
そう、運任せだった。
これから自分達が接触する人間が、必ずしも戦う意思を持たない人間だとは限らない。
自分達の今居る場所が、禁止エリアでない可能性が無い訳でもない。
「まったく……」
今日、何度目になるかもわからない溜息。
だが、トウマの腹は決まっていた。
「……いいさ。その考え、乗ってやる。こうなりゃ一蓮托生だしな」
にやり。笑って、頷き合う。
この選択が吉と出るか、凶と出るか――
それを知る者は、誰一人としていなかった。
【クォヴレー・ゴードン 搭乗機体:ブライサンダー(銀河旋風ブライガー)
パイロット状態:良好
機体状態:良好(変形不能)
現在位置:C-7
第一行動方針:この場に留まり誰かと接触する
第二行動方針:なんとか記憶を取り戻したい
最終行動方針:ユーゼスを倒す】
【トウマ・カノウ 搭乗機体:ワルキューレ(GEAR戦士 電童)
パイロット状態:良好
機体状況:良好
現在位置:C-7
第一行動方針:クォヴレーの案に付き合う
第二行動方針:アルマナの発見、保護
最終行動方針:ユーゼスを倒す
備考:副指令変装セットを一式、ベーゴマ爆弾を2個、メジャーを一つ所持しています】
【時刻19:40】
※同一作品の人物以外とは面識がない(バンプレオリについてはオリ同士のみ)という設定により破棄
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