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#2010年クリスマスプレゼント」(2010/12/24 (金) 23:38:32) の最新版変更点

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#ref(present.jpg) *プレゼント要点 ・手作りのオルゴールです。 ・オーソドックスな木目調。 ・元々はFVBの古いからくり店で販売されているもの。 ・クリスマスらしく、「もろびとこぞりて」のメロディーが流れます。 *SS もういくつ寝ると……………… 子供の頃、歳が暮れはじめると良く歌っていた歌を思い出しながら、シグレは手を止めて窓を開けた。 手を動かし始めたときに傾きかけていた日はすっかり落ち、外には暗闇が広がっている。 空を仰ぐと、星は見えない。 代わりに見えるのは、綺羅びやかな装飾に輝く、威圧的な「なにか」――いわゆる“宇宙怪獣”だ。 (星の見えない空か) 今に始まったことではないが、改めて空を見て少し陰鬱な気分になった。 FVB、そしてシグレ自身にとって、夜の空の先にある宇宙は“海”だった。 生命が生まれた始まりの場所であり、そして未来へ繋がる果てのない道。 (これから、どうなるんだろうな) 戸惑いと不安の中でそんな風に思って、今度は手元に目を落とす。 机の上には、ここしばらくの間、手を動かして作っていたオルゴールがあった。 すっかり宇宙の国となったFVBだが、一方では古くから続くローテクのからくり国家という側面もある。 一部の第七世界人がアンティークとして持っている“花時計”など、その代表格だ。 このオルゴールもそういったからくりの一つで、まだからくり立国を考えていた40年ほど前から続く、数少ないオルゴール店で購入したキットだった。 オルゴールを作るのは初めてだったので少し手間取ったが、まあまあの出来…………だと思う。 外箱は割とオーソドックスな部類になるであろう、木目の入った宝石箱型。 内箱には、ピンクのバラのコサージュを入れた。 曲は色々迷ったが、結局「もろびとこぞりて」にした。 子供の頃から一番好きなクリスマスソングだ。 オルゴールを箱に入れて包装し、シグレは席を立った。 冬の地上のむき出しの空気は、ひどく冷たい。 進むためには一歩一歩歩く必要があり、その度に体の重さと気だるさを感じる。 浮くことが出来ないから、翔ぶことも出来ないのだ。 久しぶりに地上を歩きながら、ここが宇宙ではないという当たり前のことを、文字通り肌で感じていた。 そして、自分がそう感じていることが、ふとおかしくなった。 違和感を感じるのは、当然といえば当然だ。 常時運行艦を作った十年以上前から、シグレはずっと無重量の宇宙で生活していた。 遠征や政務、外交のために地上に戻ってくることは度々あったが、その生活時間の大半は宇宙で過ごしている。 しかし、運行艦に移るまでシグレは――多くの人間がそうであるように――地上から宇宙を「そら」として見上げていた。 今ではそんな日々があったことが信じられないくらいに、地上に違和感を感じている自分がいるのがおかしかったのだ。 不思議なことだと思うが、その理由は明白だ。 いや、それだけではない。 今自分が何故ここにいるのか。 何をしなければいけないのか。 何をしたいのか。 今のシグレにとって、全ては自明の理だった。 彼女―――エステルがいる。 それが今の自分を形作る全てだ。 重力の煩わしさを跳ね返すように確かな足取りで歩を進めながら、ふと、昔地上の道を彼女と一緒に歩いたことを思い出した。 あの時は近くはなく、さりとて離れることもない微妙な距離で、彼女は重力に不慣れだった。 そしてそれから第一世界で3年。ニューワールドでは36年。 時間が経っても、今でも自分は彼女と共にある。 それが、シグレにとって一番大切なことだった。 イラスト:猫野和錆さん SS:アキラ・フィーリ・シグレ艦氏族

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