多岐川佑華@FEG様からのご依頼品



 ただ君の笑顔が見たいから

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「ショウ君を可愛く書いて欲しいんだ」
「何言ってんだお前」
「じゃあかっこよく書いて欲しいんだ」
「だから、何言ってんだよ」
「ショウ君は可愛くてかっこいいじゃないか(くわぁぁ)!!」
「ならお前が書けよ」
「ヤダなぁ、私が書いても萌えないじゃないか」
「………………(この人どうしよう、という顔で見ている)」

 ある執筆者と依頼人の会話


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 さて、この度小カトー・タキガワが。
 元々いる第六世界の学校のテストで。追試となった。
 が、何とか辛うじて合格した。らしい。
 それを聞きつけた金村は、彼を彼の好きな所に連れて行ってあげようと思い立った。いや、テスト期間はテストが全部終了するまではずっと空気がピリピリして神経尖らせているだろうし。勉強が好きじゃない人間にとっては気疲れする期間だから、彼を彼の好きな所に連れて行って気晴らしさせてあげようと思い立ったのだ。
「でもショウ君の好きな所かぁ………」

 タキガワ一族は、戦闘機やロボットが大好き。

「となったら、ショウ君はやっぱ戦闘機だよねぇ………」

 ここらで戦闘機見れる所と言ったら………。金村は早速自身の端末からナショナルネットに接続し、検索を開始した。
 サイボーグでよかったと思える点は、調べたい事はすぐ検索をかけられるという点だ。別に産業スパイとか考えてないもん、観光だもん単なる。
 あ、ショウ君にお弁当も持ってってどっか程よいところで食べよう。そんな事も思い立った。
 そして、なるべく笑顔でいよう。泣いてばっかもイカンだろ、やっぱ。
 思いながら早速小カトーに約束を取り付けようと出かける事にした。


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 その日は抜けるような青空だった。いくら手を伸ばしても届かないような、深い深い青。

「すっげー」

 飛行場の正面に金村と小カトーはいた。小カトーは真上で飛行機が飛ぶ度に歓声をあげ、子供のように瞳を輝かせていた。
青い空に真っ白な飛行機雲はよく映えた。
 飛行機のエンジン音が耳に痛く、何回か耳を塞いでしまったが、横で嬉しそうな小カトーを見ているうちに音も気にならなくなった。
 本当は、何かイベント事がある時に行きたかったのだが、生憎今日は訓練の離発着位しか見られなかった。

 でも、まあいっか。
 きらきらした、でも真剣な目でそれを見てる貴方とうんと近い距離。

「あの雲は、新型だろうなあ・・・」
「新型? 分かるの?」
「うん。どうでもいいけど、何で俺をこんなところに?」
「うん」

 金村はにこっと笑って言った。

「ショウ君この間テストの事言ってたから。テスト終わったんならショウ君好きそうなとこに行ってみたいなあと思ったの」

 思えば、いつも私が貴方と会う度に振り回していたし。自分でやっといてキョどるしかできなかったし。
 ささやかな謝罪は心の中に留めるだけにしておいた。

「そっかー、お前いい奴だな」

 感動して、また瞳をきらきらさせた。わんこのようって言ったら怒られるのかな。

「うん。その顔が見たかったんだぁ」

 何か、今なら世界のどんな理不尽にも笑って耐えられそうな気がした。
 ホント、泣くより笑ってる方がずっと楽しい。


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 変な奴。
 これが、小カトーの金村佑華に対する「第一印象」だった。
 今横でにこにこ笑っている金村の状態を、確かテストで何かあったような。国語の読解の文章の中で。何だったかなー、と思ったけど口には出さないでおいた。
「初めて会った」時、自分が記憶をなくしていて、なくす前の自分を知っていると名乗った奴。
 正直、今でも自分が記憶をなくしているのか分からないし、自覚はない。
 けど、あの時顔が腫れるまでわあわあ泣かれたのには。まいったし、心が痛んだ。

「うん。その顔が見たかったんだぁ」

 そのぱぁっと笑えば。こないだあんなに泣いてたのは何だったのかとも思ったが、つられて笑った。

「ま、俺相変わらず昔のこととか覚えてないんだけどな」

 何となく、彼女の泣いた顔はもう見たくないなぁ。笑顔の金村を見てそう思ってから言った。

「いいよ、覚えてなくても。私が覚えてるし。思い出はまた作れるから」

 貴方いなくなる事の方が忘れられるより怖いから。

 その言葉に、

「ごめんなー」

 素直に謝罪したら、

「別にいいよー」

 ちょっと、照れ隠しも兼ねて青空を見上げて、ようやく思いついた言葉は

 泣いたカラスがもう笑った。

 でも、口には出さないでおく事にした。

 ただ、天気のいい空を飛ぶ新型機は何回見てもかっこいいものはかっこよかったし、横でにこにこ笑う女の子がいる。

 前、彼女は自分と何か約束をしたと聞くけど。
 多分それが忘れた記憶。うんうんうなって頭を絞ってみたけど、やっぱり思い出す事ができなかった。
 だから、もう1度約束をする事にした。

 草原で寝っ転びながら飛行機の腹を見ていると

「飛行機、免許取るの?」
「ん。多分ね。家業だし」
「そっかー。取ったら乗せてくれる? ショウ君運転してるの、乗ってみたい」
「OK」
「うん。約束」

 寝転んだまま指を出して、新しい約束をした。

 もう、忘れないから。
 また一緒に出かけて、一緒に笑おう。





 貴方の 君の
 笑顔が見たいから。





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 疲れました。燃え尽きました、色々と。




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最終更新:2008年06月02日 22:51