豊国 ミロ@レンジャー連邦さんからのご依頼品


彼がその日、辿り着いた国は、赤・ピンク・白が、主な彩りを見せていた。
華やぎ色鮮やかなその国では、すれ違う人々にも笑顔の花が咲き乱れ、その笑顔はこの国内の幸せな雰囲気に彩りを加えていた。

2月という月を、彼は毎年旅をする月と決めていた。
同族の者達の中には2月を『ラブシーズン』と呼ぶ者もいたが、彼にとっては旅の月だ。
世界を周り、知らない文化や人種に触れ、薬草などの植物採取をする。
長く生きてきた彼には、この世界の移り行く歴史を見て回る旅でもあった。


来たものをも幸せにするこの国は、愛をうたう藩王・霰矢蝶子陛下が統べる国、にゃんにゃん共和国レンジャー連邦。
最近、無事婿(?)を迎えたとか迎えないとかで、殊更に愛に満ち溢れていた。
『ピンク色の雰囲気』というものを若干苦手とする彼-バルク・ドッケンも、この国の雰囲気は心温かくなるのか、不思議と居心地が悪くない。むしろ慈愛を感じていた。


ふと、雑踏の中、微かに聞こえる声。
バルクは人込みの中、立ち止まり振り向く。
彼の目に飛び込んだのは二つに分けて結わいだくせっ毛を揺らしながら自分へと近付く豊国ミロの姿だった。
「バルクさぁーん!お久しぶりです!」
冬にも温かさを届ける太陽のような柔らかい笑顔を見せながら近付くミロを、微かに懐かしむように見つめたバルク。自然と笑みを零す。
「こんにちは、お久しぶりです」
元気そうなその姿に互いが安堵した。
二人の再会はそれくらい久しいものだったのだ。

落ち合った二人は挨拶もそこそこに、ミロお勧めの喫茶店へと入っていった。

 ++++++++

先程まで歩いていた商店街の雑踏と変わり、落ち着いた雰囲気は、バルクに安らぎを与える。
目の前にはミロが頼んでくれた『ロイヤルミルクティー』という飲み物が置かれている。
触れ慣れない飲み物だが、湯気からの香りに成分を嗅ぎ取る。
「牛の乳ですね」
「搾りたてらしいです。『季節のおすすめ~愛の炎ココア~』とかもありましたが…このお茶の方が胃に優しいと思います」
「ココアであれば、恋の薬ですね」
「恋の薬だったんですか。…あらまあ、しまったー。バルクさんに飲ませてしまえばよかった!」
『ざんねん~』と、おどけて微笑むミロ。
二人はクスクス笑い合いながら、バルクの旅のことなどを穏やかに話した。


最近、バルクはこの世界の人々に触れ、よく聞く言葉がある。
『恋』『恋愛』『恋心』などである。
この世界との文化の違いが色濃く出た部分でもあった。

バルクが愛をもたないわけではない。
いや、むしろバルクを知っているミロなどは、バルクが深い愛を持っていることを知っている。
懐深く無限に注ぐ子供達への愛は、子供達の心に優しさと愛の雨を降らし潤い満たすものだと、ミロは知っているのだ。
しかし色恋沙汰になると、からっきしだった。
触れ合うことの喜びを分かち合う、と言われてもどうしてもピンとこないバルク。

今もミロが「手をつなぎたいなぁ、とか…」ともらしたのを聞き、優しく自らの手をミロに向けて差し出してみた。
ミロの求めるものが一体何かはまだ、よく判っていないが…

テーブル越しに差し出された手を、真っ赤になりながら優しくつなぐミロ。
触れた肌から伝わるモノに、バルク様にまた会えて良かった、と心から思う。

ミロのドキドキと安堵、そして喜びが手を伝いバルクにも流れてきて、優しく微笑んだ。
えへへー、と照れ笑うミロがかわいらしい。
ふと、子供達への愛とは違う何かがバルクの心に流れたが、本人は自覚していなかった。

テーブル越しに繋ぎ合う手。目の前には、はにかむミロ。
繋いだ手をそのままに優しく笑うバルク。
「うれしいのなら良かった」
「うーん」
優しく笑うバルクとは違い、少しだけ難しい表情を覗かせるミロ。
しかし難しい表情は一瞬で、パッとおどけた。
「今後の希望としては、バルクさんのほうも嬉しいと思ってくれるようになるといいなあと思います」
くるくると色んな表情を見せるミロをバルクは笑った。愛おしむ笑みで。
ミロもバルクを愛おしく見つめた。
「だって好きな相手が喜んでいると、倍嬉しくなりますから」
にこにこなミロに少し押されるバルク。
「なかなか大変ですね」
「そうですね、でも、その大変なのが楽しいですよ。これはもう…恋以外では感じられないものだと思いますから!」
意気揚々とバルクに伝えるミロのなんたる輝かしいことか。
その眩しさが、昔は苦手だったが今は…そうひとりごち、お茶をすすりながらミロを見た。

「今日は、貴女に会えて良かった」
「私もです!バルク様との一時、幸せな時間でした!」
また会いたい。
そんな言葉を飲み込み、バルクはミロと共に喫茶店を出た。

 ++++++++

国境近くまで見送ってくれたミロの姿が見えなくなった頃合いで、バルクは振り向く。
「この旅が終わったら、必ずまた…」
また、あの温かい太陽の笑みに会いにこよう。

ミロの笑顔を胸に、バルクは再び旅を続けた。

作品への一言コメント

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  • 撃 沈 しました…(////) 客観的に見ると、そうか、こんなに少女漫画ぽい…展開だったんですね…あああなんだか恥ずかしい!しかしこんなにかわいく描写していただけてものすごく嬉しいです。この度は素敵な作品を本当にありがとうございました! -- 豊国 ミロ@レンジャー連邦 (2008-04-03 03:23:45)
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最終更新:2008年04月03日 03:23