NO.207 東西 天狐@akiharu国さんからの依頼

要点:火焔が良いところスキーでかっこいいところ、げふー、となっているところ、おみやげ物屋のシーンのどれかからお願いします

東西天狐は結城火焔に好意を持っている人間の一人である。ありていに言うと火焔大好きな人である。
結城火焔は世紀のスーパーガールで美少女ハンターである。あとついでに山岳騎兵でもある。

「スキー?」
「うん、このパンフレットにスキー場載ってたから」
今回の話はそんなところから始まったような気がする。他愛もない会話だった。
「でも小笠原には流石に雪はないと思うんだけど…」
「そんな事ない。ほらここにしっかり載ってる」
結城火焔が取り出した記事にはでかでかと文字が書いてある。
「何々、『冬のカニ鍋食べ放題。激安20にゃんにゃん(わんわん)』…?」
「そっちじゃないその隣!」
「あ、ごめんごめん。ええと『宰相府主催スキー旅行。白銀の世界が貴方を呼んでいる』か。え、でもこれって」
「うん、あと5分で出発だから早く行くよ」
「えー!」
「あ、コガは連れてけないからちゃんと預けておいてね」
「えー!」
驚いた天狐の目には紹介記事の横に書かれた『※ なおお食事券所持のお客様にはバーベキュー食べ放題!』という一文が止まることはなかった。
それから先はまさに強行軍であった。1分で藩王であるakiharuに連絡し、2分で身の回りの物を用意すると大急ぎでバスに乗り込んだのである。
(車中でレンタルでいいのに、とか言われて凄いへこむ事になる)

火焔のスキー板がエッジを立てるごとに、雪が空中に舞う。天狐の目にはその姿が(日光がそれに反射して物理的に)まぶしく映った。
ゴーグルに隠れた表情がにやり、と笑うと勢いそのままに1m近い段差から空中へと飛び出した。そのまま空中で360度回転すると見事な着地を決める。
「滑るの上手ですねえ。もしかして上級者です?」
「ううん?訓練でやっただけ」
ざば、と天狐の前で止まるとゴーグルを外して答える火焔。超余裕である。
「おかえりー。訓練でスキーやるんだ。」
「山岳騎兵の必須科目よ?」
へへーん、と自慢げに豊かな胸を張っている。ああ可愛いなあ可愛いなあといつもの如く思う天狐であった
「あ、なるほど。広島だけじゃないものね。かっこいいー。実はスキー初めてなんだよ」
「そうなんだ?ま、女心もわかんないところだしね」
「・・・分かるように頑張るから、滑り方教えてくれないですか?」
しくしくしくと涙を流す天狐。雪山までこんなこと言われないかんのかとちょっと泣けた。
「いいわよ?でも、厳しいからね」
「ふふふ、望むところだ!と言うわけで先生、お願いします」

「まず基礎理論、傾けない限りは、倒れない。OK?」
「まっすぐ立つように心がける、ってことかな?」
頷く火焔を見て、天狐はよろよろと立ち上がる。
「速度を落とす時は、ハの字に広げる」
カタカナのハという字を手で作ってみせる火焔。
「ハの字?・・・・あ、スキー板の形か。なるほど」
素直にハの字に動かしてみる。どうも安定性が悪いのか股関節が両方に引っ張られる感覚だった。
「ん?逆だとまずいのか」
「ま、どうしようもなくなったら、こけて、逆だとひねるよ。足首」
「なるほどおおおおお」
叫びながら天狐は転げていく。ごきぐしゃぼてん。
「・・・・・なるほど、こけたら取り敢えずは止まるね」
うんうん、と頷く天狐、これで手と足の向いている先がまるで逆というミステリアスな体勢で答えてなければ、普通出会った。
「よし。完璧だ。体はまっすぐどうしようもなくなったらこける!」
「普通はハの字ですべって尻もちつける方法でおしえるんだけどね」
でも山岳騎兵はこけるより速度上げたほうがいい時、多いしと呟く
「止まったほうが危険が大きいってこと?」
「幻獣は骨折じゃすまないわよ?」
「・・・なるほど。確かに掴まるよりはマシだ」
想像してぞ、とする天狐に向かって火焔は微笑む。じゃ、レッスン1ねと口が動く。
「こけたら看病してあげる。やってみなさい」
「よし、なら安心だ!」
1どころかいきなり実践であったがどきどきしっぱなしの天狐にはどうでもいい事であった。

数十分後-
ぴしっと決まった滑りを見せる天狐の姿があった。1d100で3を出したくらい見事である。
その姿を見た火焔はよし、と笑った。
「おおー速い速いー!」
火焔ちゃーん、滑れてるよーと手を振ってはしゃいでいる。
とはいえ隣を滑っている火焔が気付かないうちに誘導しているおかげでもあるらしい。
「楽しいねえ!」
「うんいいぞ。天狐」
天狐の笑顔ににかっと笑う火焔。その姿に天狐はああ幸せだなーと心の底から震えている。
「なんだか病み付きになりそうだよー」
その言葉にふうん、と
「軽く、上のほうから下までいってみよっか」
「了解」
山頂を見て30分くらいかな、と呟く火焔。どうやら目測をして所要時間を出したらしい。
かなり上の方までリフトで上がると下を目指して滑り出した。針葉樹の脇を少しずつ滑っていく。
先ほどと同様に、火焔は天狐が危険なところに行かないようフォローをしつつ一緒に降りていく。
「結構うまいじゃない?」
「教え方がうまいのと、後は直感?」
そう嘯きつつハの字ボーゲンで滑る横を、火焔がしゃっしゃっとシャープに滑っていく。
ここで天狐の胸にほんのわずか、漢のプライドというけちな炎が灯った。
さっき上手く行ったんだからここでカッコいいとこ見せたい。そういう欲がほんのわずか浮かんだのを否定する事はできないと後に天狐は語る。
「・・・・・・そっちの滑り方のほうがかっこいいね」
「速度、出過ぎるけど。まあ、少しやってみたら?コンディション悪くないし」
火焔の言うとおり、ゲレンデのコンディションはかなりいい。普通に滑る人間ならば何の問題もなく滑れる状態であった。
「よし。じゃあやってみるか!今日の俺はいけるはずだ!」
ハの字ボーゲンから板を揃えてのスタイルに変える。途端に1.3倍ほどのスピードが出てきた。
よく言われる風を切って滑る感覚である。
だが天狐は忘れていた。彼は今日始めてスキーをした男であり、その腕前は普通に滑る人間よりもかなり下の方だったということを。
早い早い、と言った次の瞬間、そこにはこぶが見えていた。お約束どおり空を飛ぶ天狐
「速いはやーーーーーーーってうわああああああ」
「ジャンプはまだ早いかなぁ」
「ノオオオオオオオオオオ!!!!そういうことは先にってぎゃー」
華麗に着地した火焔と対照的に高速回転しながらあっという間に雪の塊となった天狐はごろごろと転がり続けていく。
そしてその先には更にお約束どおり樹齢数十年くらいであろう立派な杉の樹の根元があるのだった。
ずでんぼしゃめきぼきめめたぁっ

「生きてる?」
「・・・・・・・・なんとか。ちょっとぼーっとしてるけど痛いところはないよ」
倒れたまま右手を上げる天狐。
明らかに体の前面と180度別の方向を向いてる首を無視して火焔は微笑んだ。
「じゃ、ゆっくりおりましょ?」
ごきゅ
おもいっきり首を捻って元の方向に戻してあげると火焔は手を貸した。
「ハイ、そうします。今日の所はハの字でいくよ」
そうね、と言って二人はゲレンデを降りていった。

この後、宰相府藩国冬の園においてBBQ大食い女王として長く名を残すことになるとはこのときの天狐は知る由もない
二人の歴史が、また、一ページ…


作品への一言コメント

感想などをお寄せ下さい。(名前の入力は無しでも可能です)

  • 一言。たかはらさんなんでわたしのこころがよめるんですか -- 東西 天狐@akiharu国 (2008-02-22 00:04:29)
名前:
コメント:





counter: -
yesterday: -

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2008年02月22日 00:04