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嘉納@海法よけ藩国様からのご依頼品



純子は魔法陣の円から浮かび上がった。
 顔を上げると、よく見知った顔と、知らない顔二人。
 純子はいつものように微笑んだ。
 また会えたと微笑んだ。

「えーと、純子さん、一緒にいるのは、友達と呼ぶと涙が出そうな比嘉君、良い奴でなかったらアウトだからセーフだよ」
 嘉納はいつものように純子に気遣いながら、知らない顔を紹介した。
 純子が知らない顔……比嘉劉輝を見ると、彼はあたふたとした顔をしていた。
「だ、大丈夫ですか?」
 いきなり自分が魔法円から出てきたので驚いたのだろう。
 純子はいつものようににこにこと笑った。
「はい」
 嘉納は自分を気遣って寄ってきた。
「ワープ酔いですな、水でうがいします?」
 その言葉に比嘉は反応する。
「え、ワープって酔うんですか?」
「いや、適当に言っただけ。だまされたー」
 二人はキャッキャキャッキャとはしゃいでいた。
 スイトピーと呼ばれた白い人は憮然とした顔をしていたが、純子にはこの二人が微笑ましく見えた。
 いつものようににこにこ笑ったが、嘉納には怒って見えたらしい。
 怪訝な顔でこっちを見た。
「怒ってる?」
 今度はしょげた顔をして見せた。
 純子は首をゆっくり振った。
「何が、ですか?」
「いや、ごめん、ちと最近あえなかったりだから。えーと、手、にぎってもいいかなあ」
 子供みたいだと純子は思った。
 純子はにこにこ笑いながら、手を差し出した。
 嘉納は途端に嬉しそうな笑顔を浮かべ、純子の手を握った。
 こうして、二人は並んで歩いた。
 今日は、お月見。
 お月見の為に用意をしようと、そう嘉納は純子に言った。


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 お月見の用意をしようと、家庭科室に赴いた。
「ういー、純子さん、団子と白玉どっちが好きですか? どっちでも作れるようになったんです、最近」
 嘉納の言葉に、純子は首を傾げた。
「二つには、どんな違いがあるんですか?」
「んー、白玉だと、そうですねえ。冷たくてつるつるで、それと今日みたいな時はシロップをかけてと美味しいです。団子はむっちりもにもにゅで、あんこや、美味しいたれでもふもふした食感がきもちいです」
 嘉納の手振り身振りして説明する様に、純子は微笑んだ。
「どちらでもよさそうですね」
 横で比嘉は感心したように嘉納を見た。
「嘉納さん、料理得意なんですね」
「これからの男はハイッブリット大事なのだよ、比嘉君」
 そう言いながら嘉納は材料を広げ始めた。
「じゃあ、白玉にしましょうか。簡単だし、見た目にきれいだから」
 その言葉に純子はうなずいた。
 嘉納は笑いながら料理の準備を始めた。
 純子は横でそれを見ていた。
 純子はいつものようににこにこ笑いながら嘉納に聞いた。
「どう、つくるんですか?」
「まあ、基本はこの白玉粉に、水をゆっくりといれて、混ぜます。少しずついれるのがこつです、というわけで、ボクが水を入れるので純子さんこねてください」
 純子は言われた通りにボールに入れた白玉粉を見て、首を傾げた。
 どうやってこねるのかが分からないのである。
 後ろで何やら比嘉とスイトピーが話をしているが、今は聞かない事にした。
「どうやってこねるのですか?」
「あー、こうやって、指先で少しずつ混ぜるように」
 嘉納がそう純子に教えていたら、どうも話が終わったらしい。比嘉が近付いてきた。
「……嘉納、ちょっといいか?」
「いいよ」
 嘉納は純子に謝った後、廊下に出て行った。
 純子はにこにこ笑いながら、ボールの白玉粉をこね続けた。
 それを憮然とした顔でスイトピーは見ていた。


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 もう夜である。廊下には誰も人がいない。
「嘉納、あの人ってお前の婚約者……で良いんだよな?」
 比嘉がぽつりと言った。
「なんか、隠してないか?」
「そうなってるね、ちなみに見合いだ、誘拐されそうになったおっと問題になるから秘密な。まあ、まて言いたいことはわかる、俺は変人だ、実力もない、大抵の人間は俺の言動とかは眉をひそめる」
 嘉納は言った。
 今頃は家庭科室で白玉粉をこね続けているであろう純子を思い浮かべた。
 いつものようににこにこした笑顔。
「それを笑っているというのはうれしいが変だ、どっちでもいいというのはで、比嘉君、何か思うことがあるのだろう、言ってくれ」
「今、スイトピーが、一言で言えば変だ、と言ってきた。あっと、俺の観察眼は死んでる。違和感にさえ気付かなかったんで当てにするなよ……どう思う?」
「うん、信用してないから安心しろ、親の仇とかいて親友の中だ。あの白いお嬢さんは正しいんだろう」
 家庭科室の明かりを少しだけ見た後、嘉納は続けた。
「色々考えられる、もしかしなくても望まない事なのかもしれない、それなら俺は何をしてやれるかな、比嘉君」
「聞くまでもないが聞いておこう。どうする?いや、お前はどうしたい?」
 比嘉の問いに、嘉納ははっきりと言った。
「考えるまでもないだろうが、相棒。ああ、玉砕コンビ、力の一号の名にかけて、彼女の幸せの為に、本当の笑顔を」
 その言葉に比嘉は苦笑した。
 その言葉はあまりに彼らしかったのだから。
「とりあえず当面は……ってああ! プリン忘れてたー!」
 そのまま家庭科室に飛んで帰った。
 今度は嘉納が苦笑をする番だった。


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 家庭科室に戻ると、相変わらず純子は白玉粉をこねていた。
 指はふやけているが、それでもやめずにいた。
「純子さん、ありがとう、次はお湯を沸かして。ふやけた指もやわからかそうですてきだね」
 純子はその言葉でようやくボールから離れたが。
 今度はお湯を沸かす事ができずにいた。
「ゆっくりでいいぜ、純子さん、お月様は逃げないから」
 そう言いながら、嘉納はまごつく純子を励ました。
 彼女が自分から助けを求められるよう、彼女が自分で意思表示ができるよう。
 その光景を先ほどからずっと見続けていたスイトピーが、ついに我慢できずに声を荒げた。
「彼女は病人よ。病院につれていったほうがいい」
 その言葉に、嘉納は悲しそうな顔をした。
「……そばにいてやりたいってのは、だめかなあ、スイトピーさん」
 スイトピーは何も答えなかった。
 そのまま家庭科室を出て行ってしまった。
 純子は、ずっとにこにこ笑いながら、お湯を沸かせずにガス台の前に立っていた。
 嘉納は彼女の手を取り、ガスをつけてあげた。
「お湯が沸いたら、次は何をすればいいんですか?」
 純子は言う。
「えーと、だなあ、次は沸かしたお湯に白玉をスプーンでいれて」
 嘉納の言葉に、純子は次々とこねた白玉粉を鍋に入れていった。
「嘉納、料理はいいから……」
 スイトピーを見失い、途方に暮れる比嘉が言う。
 嘉納も、純子を「ごめん」と言って抱きかかえた。


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「俺は白い人に失望されるたちだけど、純子さん、俺はあんたを助けたいよ」
 抱き上げた純子に嘉納はそうもらした。
 純子は微笑んだ。
「私はもう助かってますよ」
「まだまだ、心も助かって、もしかしなくても、俺を張り飛ばすぐらいになって、それが幸せってもんさ」
 嘉納はそう言った。
 純子は、嘉納がしたいようにさせようと、そう思った。
 彼の近くが、居心地良かった。


 結局、どうにか医者に見せたが、精神に異常はないと判断された。





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