No.187 龍鍋 ユウさんからの依頼


「二人はラブラブで出発してるねぇ」
ニコニコとしながら龍鍋ユウが笑った。
「いいですよね」
 竹内優斗も相槌を打つ。

 二人は仲良くしている田鍋とよたろうと若宮康光の二人を観覧車に入れ、二人を鑑賞していた。ちょうど自分達の前の観覧車に二人は乗っているのである。
 幸せと言うものは実にいい。
 空気が和むのである。

 観覧車が回る。浮かび上がる。景色もよく晴れている為、見晴らしが大変いい。
「竹内君も、そんな機会があった時の為に気の利いたセリフ、考えるといいかもよ」
 龍鍋はからかうように言った。
 竹内は少しだけうっとりと上を見た後笑った。
「だめですよぅ僕は」
「ええーそうかなぁ」
 龍鍋は言う。
 竹内君、そんな本人が思うほど格好悪くないのに。
 素でそう思った。
「思うだけでも楽しいんじゃないかな? ほら、見てごらんあの星空を……みたいなカンジで」
 龍鍋は劇がかった手振り身振りをし、空を指差した。
 指差した先には、青い空が広がっている。
 竹内は少し苦笑した。
 そんなに褒めてくれる程魅力があるとは、自分では思えなかったから。
「僕、きっと好きな人の前では何も言えないですから」
 顔を赤らめて言う竹内に、龍鍋はにっこりと笑った。
「うんうん、そういうのもいいねぇ というか上の二人も案外そんな感じなのかも、いま」
 二人が丁度斜め上を見ると、何故か微妙に揺れていた。


 観覧車は回る。浮かび上がる。
 丁度高さが学校が見える所まで浮かび上がってきた。
 龍鍋は「オー」と言って学校を見上げた。
 箱庭みたいだ。そう思った。
「いい眺めだねぇ」
 そう竹内に振ったが。
 ……竹内はとよたろうと若宮の出歯亀をしていた。
 龍鍋は少し吹き出した後、「あはは、竹内君。それ以上はもう見ちゃだめだよー」と言って引き剥がした。
 丁度上の二人が抱き合っているように見えたが、これ以上は野暮と言うものである。
 龍鍋の表情を読み取ったのか、竹内はキョトンとした顔をした。
「なにかあったんですか?」
 竹内が言う。
 龍鍋はちょうどピンク色に見える学校を眺めている所だった。
 龍鍋もキョトンとした顔をした。
「何か? ああ、夕焼けの学校で?」
「いえ、なにかその、他人行儀で」
「ほむほむ」
 龍鍋は席を移動した。
 竹内の隣に座る。
 少しだけ上を見た。
 上の二人はうまくいっているらしい。それはとてもよかった。
 そう思いながら竹内をもう一度見て、のほほんと笑った。
「……あの二人がもし結婚式とかなったら一緒に参加しない? と聞こうと思って、それ言おうかどうか迷ってたの。でもまだそんな事言うの早いかなぁとか思ってねぇ」
 その言葉に、竹内は笑った。
「結婚式、あるならいきたいですね」
「うん、その時はぜひ、それでこの観覧車エピソードを友人代表で話すのさ。お見合いからここまで来たってのもすごい話だよねぇ。ひょんな事からってのはあるもんだ」
「そうですね。もてない男同士ならんでやりますか」
 龍鍋はあははと笑った。


 観覧車が回る。浮かび上がる。
 あともう少しでてっぺんにまで上がる。
 二人はのんびりと上のカップルがうまく行くよう話していた。
 穏やかな空気が二人を包んでいた。


作品への一言コメント

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  • ホンワカ(><) な空間でぇす。ノンビリ穏やか雰囲気が良いですねー。この時はまだ本格的な優斗君ラブゥな直前、もしくは直後の頃なので今読むと色々懐かしいです(この頃はマイル的に今回で終わりだなぁぐらいにしか思ってなかったのよねぇ) -- 龍鍋 ユウ@鍋の国 (2008-03-23 01:57:57)
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引渡し日:2008/03/14


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最終更新:2008年03月23日 01:57