川原雅様からのご依頼品


光太郎の一計

作:1100230 玄霧弦耶


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兄貴の様子が可笑しい。
帰ってくるなり「コウ、後で学校に行ってあげてくれない?」と言ったっきり引込んじまった。
『また兄貴の同級生と何かあったのか?』とか少し考えたのがいけなかった。手遅れだ。

「うわ、兄貴なんだよこの量」

「え? ああ、作りすぎちゃった」

「うそだ、絶対嘘だ!どうすんだよこんなに!」

「コウ、育ち盛りだよね」

こういうときの兄貴は大抵、自分か他人かに怒ってる。
多分、今回は十中八九自分にだ。・・・それはそれとして、こいつはどうしたもんか。
と、眼の前の敵をどうやってやっつけるか考えようとしたところにチャイムも鳴らさずに兄貴の友達が入ってきた。

毎度毎度思うけど、兄貴はいつの間にか友達とかが多くなってる気がする。
ついこの間いきなり帰ってきたと思ったら学校にも行ってるし、まったく性質の違いそうなヤツが友達になってたりするし。
俺が暫く寝込んでた間のことは皆あんまり言わないけど、そのときに何かあったんだろうか。
まぁ、この話はみんなが余りいい顔しないし、長くなるからやめておくか。


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兄貴と兄貴の友達・・・千葉昇、だったかな。名前。
その友達が何かとてもいいことがあったみたいに兄貴に何か言ってる。
なんか意味深な会話をしてるけど、目の前の強大な敵の方が気になって入ってこない。
さて、こいつをどうやってやっつけたものか・・・

『ピンポーン』

っと、お客さんか。今日は多いなー。兄貴の機嫌が悪いのとなんか関係あるんだろうか?
あるんだろうなぁ。

「はーい」

扉を開ける。見知った顔だった。

「あ、兄貴の同級生じゃねえか」

「こ、こんばんは」

ピンときた。きっとこの二人、というか一人が原因か。

「兄貴ー」

「風邪だって言って」

もちろん、ついさっきまで大量に料理を作ってたからそんなわけは無い。
兄貴が本当に風邪引いたら「コウに移しちゃいけないから」とか言って暫く姿を消すくらいはするしな。

とりあえず、原因じゃないほうに確認を取ってみる。
案の定、想像通りだった。ともかく、そのままほうっておくわけにもいかない。
さてどうするか・・・って、やばい、向こうが泣きそうだ。

「えーと、分かった」

考えるより先に行動することにした。なんというか、女に泣かれるのはやっぱり苦手だ。

「やいやいやい、バカ兄貴、女泣かせてんじゃねえ!」

まだ友達と話してた兄貴へ言うのと同時にぶん殴る。
帰ってきてからこっち、兄貴はだいぶ丈夫になったのかしてものすごく強い。
ヘタに手加減してたら軽くいなされるんで、結果的にはたから見ると大喧嘩に見えるだろう。
見えてくれないと困る。せっかく兄貴と殴り合いまでするんだからな。

玄関で騒ぐ声、突っ込んでくる気配。
よし、バッチリだ。
つっこんできた兄貴の同級生が「兄貴に殴られる位置に割り込む」ように体を少し引く。
目論見どおり、間に割り込んでくる。兄貴のうちおろし気味の拳は華麗に頭にヒットした。

「うわー、兄貴さいてー」

つい、笑みがこぼれる。
兄貴が俺を殺すつもりで殴るわけはないんで、こぶが出来る程度だろう。
大方あの二人、ちょっとした事で喧嘩しただけだろ。兄貴が頭を上げれないことをつくりゃあ直ぐに解決するさ。
多分、あの大量のメシも半分は片付くだろうしな。

やれやれ、あとで兄貴に何されるやら。
ここまで体はったんだから、上手くやってくれよな?


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とまぁ、コレが今回の事の顛末だ。
今頃客間で殴ったところの治療をしてるだろう。

「さーて、一仕事終わったし、少しでも量を減らしておくかな」

「コウ?ちょっといいかい?」

っと、治療が終わったのかして兄貴が話しかけてくる

「あん?どしたのさ」

「今から夏祭りに行くんだけど」

あの昇って人の入れ知恵かね。
ま、夏の間に夜店を回るのもいいもんなんだろうな。よくわかんないけど。

「おー、いいじゃん。行ってきなよ」

「うん。それで、小夜ちゃんにコウが誘ってたって言っておいたから。着付けもしてあげたからね」

一体この兄貴は何を言ってるんだ。

「はぁ!?」

「コウも楽しんでおいで」

・・・はぁ、こう来たか。
兄貴もだいぶ人間らしくなった気がする。
多分、良い事なんだけど・・・コレはねーよなぁ。



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最終更新:2008年01月22日 23:08