嘉納@海法よけ藩国様からの依頼より


船着場に1組の男女がいる。
男の名は嘉納。海法よけ藩国の摂政である。
長い髪を後ろで1つに纏めた独特な髪型に、ラフな服装というこの眼鏡青年はにっかーと女性に笑いかけた。
 嘉納:「うーいす、今日は旅行っす、この前は大変でしたから二人でだらだらしましょう!」
裏表のない彼の笑顔を向けられた女性、名を純子と言う。
なんでも鍋の国の摂政の娘さんだとか?
ある者は彼女の周りには風が吹いていると感じると言う。
春の爽やかな…そよ風のような風を。それは彼女の発する雰囲気なのかも知れない。
純子はにこにこと笑っている。いつものように屈託のない笑みで。
そしてふと、上を見た。視線の先には黒い雲…久しぶりにまとまった雨が降りそうな天気のようである。

 嘉納:「あ~、雨降りそうかな?一応、傘でも買いに行っときます?」
嘉納の言葉ににこにこと笑う純子さん。異存はないようである。
ど~こかに売ってそうな店!ないかな~と2人並んで歩く。
道を行くすがら、空を飛ぶ鳥、道路を横切るカニ…と目に映るもので話し掛ける…が、
 嘉納:「(え~とえ~と…手とか握っても、いいかな?)」
心の中で邪念と葛藤していた。ちろりと彼女の方を見やる。
隣を歩く彼女はいつもどおりの笑顔である。
嘉納の視線に気づいた。にっこりと笑う純子さん。
 嘉納:「(ぼっ!!)」
頬が熱く感じた嘉納、照れ隠しにぽりぽりっと頭をかいた。
言葉に出さなくても心は通じている…2人を見ているとそんな気さえしてくる。

 嘉納:「あ、あの店に入ってみましょうか。」
前方にコンビニを発見!なんと島、唯一のお店らしい。
 店員:「へいらっしゃい!(重低音)」
いかついおっさんが店番をしていた。ひげの似合うムキムキダンディなおっさんだ。
 嘉納:「えーと、かさかさ(ごそごそ」
 店員:「2にゃんにゃんだよ(重低音)」
 嘉納:「じゃあ、一本で」
嘉納は傘を1本だけ買った。さて、船着き場に戻ろうかな?と外に出ると…

  ドザーーーーーッ!!

雨が降っていた。どしゃ降りである。
 嘉納:「はっ、純子さん!?」
視界に映った純子さんはずぶ濡れになっていた。外に立って待っていたせいで。
どうやら、傘を買っている間に雨が降り出してしまったようだ。
嘉納がダッシュで駆け寄ると純子は笑った。
 嘉納:「純子さん、ごめんなさい、店の中で待てばよかったですね(あわてて傘開いて入れます」
心配気にする嘉納。
彼女は心配いらないと言うかのように笑いかけると、濡れた前髪を指で絞った。
髪を伝って雨が雫となって落ちる。
 嘉納:「風邪引いちゃうから、一回着替えを探しましょう(色っぽいとか思った自分をあーあー」
少し顔を赤くしたが、すぐに頭を切り替える。
 嘉納:「え~とえ~と、なにか着替えっと…」
きょろきょろと辺りを見回すと服屋を見つけた…が、あ、サイズとかどうしよう?
(サイズ…その言葉が嘉納の心を躍らせたってなぐあいにそこらの樹に頭打ち付ける)
 嘉納:「えーと、学校にジャージがあるので、とりあえずそれで」
おでこを赤くさせながら爽やかに笑う嘉納。自然に手を握れた。

雨の中を歩く2人の姿。傘は1つ…。
俗に言う”愛々傘”である。
 嘉納:「(あああー、邪念に負けたまたまけた<傘一本
と心の中で叫ぶが、言葉とは裏腹に幸せを感じる…男とは因果な生き物である。
しかし、2人で入るには少しばかり傘が小さすぎたようである。
 純子:「…くしゅん。」
手を繋いで歩く純子がくしゃみをした。雨にずぶ濡れになって少し寒そうである。
 嘉納:「む、すみません、失礼」(おんぶして、純子さんに傘もってもらいます
嘉納は背を屈めると、背中に純子を乗せた。

  密  着  !

 嘉納:「(天にも昇る気持ちとはこのことかぁぁぁっ!?)」
彼女の濡れた服から染み出る雫が背中を濡らしたが、不謹慎にもいつも以上にそばにあるその距離感に感動した。

  テンション上がった! テンション上がった!!

雨の中、彼女を背に乗せ走りだす。純子さんが、きゅっと首にしがみつく。
その細い腕、背中に感じるぬくもり、抱きつかれてるという事実…
 嘉納:「(うおおおおっ、時間よ止まれぇぇぇええええっ!!)」
ハイテンションボーナス、発動!!ああ…男とは単純な生き物である。

学校の校門まで純子さんを背に乗せ走ってきた嘉納。
今の彼は”幸せテンションmax”である。疲れなど感じず走ってきた。
しかし、彼が見たのは門の前にかかった休校日の看板。
 嘉納:「あら、どうしましょうか?純子さ…ん?」
はたと我に返り、門を乗り越えちゃいます?と聞く彼はそこで彼女が震えている事に気がついた。
雨に濡れた服がぴったりと身体に張り付いている。そのせいで体温を奪われてしまったようだ。
 嘉納:「大丈夫ですか、純子さん。」
嘉納は着ている服、上着を脱ぐと彼女に羽織らせた。
少しましになったのか、にっこりと笑う純子。しかし、いつもの笑顔よりは弱々しく感じる。
 嘉納:「(休校日って事は部室の鍵もかかってるかもだなぁ…)やっぱり服屋で服買いましょう。」
言うが早いかまた駆け出す嘉納。先ほど駆けてきた道を再度駆け戻る。
さすがに女の子を背負って往復ダッシュするのは辛い…が、彼は歯を食いしばって駆けた。
好きな女の子のピンチなら即断即決、限界突破!それが彼、嘉納と言う男なのである。

道を駆け戻り服屋へと着いた2人。女の子を背負ったまま店に駆け込んだ。
 嘉納:「店員さん、とりあえず、この子が風邪引いてしまうので服を。えーと、サイズですが、純子さんいくつですか?」
入るなり大声で叫ぶ嘉納。すぐに店員がタオルを持ってやって来たが、純子さんはにこにこ笑うだけで返事がない。
サイズというのを自分でもよく知らないようだと思った嘉納は、店員に似合いそうなサイズを見繕って貰うことにした。
 嘉納:「雨、初めてなんですか? 純子さん(ハンカチとか探しますー」
そう言いながら純子の髪を店員から受け取ったタオルで優しく拭いてあげる嘉納。
雨に濡れてぴったりとなっていた髪が柔らかさを取り戻していく。
 嘉納:「(純子さん、綺麗だなぁ…)」
店員に連れられ楽しそうに服を選ぶ彼女の笑顔を見て、自然と自分の頬も緩んでくる。

服を何着か選んだ彼女は嘉納の方を見てにっこりと笑った。試着したいようである。
 嘉納:「どうぞどうぞ、試着したら見せてくださいねー」
試着室へと消えた彼女を待つ男。心はドキドキのワクワクである。
しばらくして出てきた純子さん。
 嘉納:「おおおおおー、カジュアルもいかすー!(ぐらぐら」
思わず感嘆の声をあげてしまう嘉納。
彼女の着替えた姿は、長いTシャツの上にデニムの上着。
短めのデニムスカートからハイソックスが可愛らしく覗き、また、頭に巻いたバンダナがカラフルに目を引く。
 嘉納:「ナイスセンスっですです、バンダナとかすごいっす、可愛いー(大喜び」
大絶賛する嘉納。事実、彼女は可愛かったのだから正直な反応である。
喜ぶ彼の姿に純子はにこっと笑った。顔が赤い。

 嘉納:「えーと、まずはそれと。他にもきてみますか?(たのしそうでいいなあ」
楽しそうに服を選んでいた純子さんを見ていると自分まで楽しくなってくる。
もっと彼女の笑顔が見たい…そう思った嘉納は他の服も試着してみない?と勧めてみた。
 嘉納:「がんがんいきましょう、時間と幸いにもお金はあるある(応援」
純子さん、迷っている。でも満更でもなさげである。
応援を受け、すぐに別の服を選び始める彼女。
やはり女の子、ファッションに興味あったのかも知れない。
再度試着室へと消えた純子さん。
しばらくして出てきた彼女、今度はタイトスカートにハイヒールだ。上着は肩にさげている。
 嘉納:「おうはああ!(ノックアウトされた」
派手に倒れる嘉納、しかし親指だけが力強く天を向いていた。
にこにこと笑いながらも恥ずかしそうに帽子をかぶる純子さん。
 嘉納:「いいっすいいっす、純子さんの知性がばんばん伝わって美しいっすいやはあー!」
べた褒めに褒めて褒めて褒めまくる嘉納の目の前で純子はよろけた。
 嘉納:「わわっ…と、ハイヒールはなれないとあるけませんもんね」
慌てて立ち上がり彼女を支えると、目が合った。見つめあう2人…。
純子さんは顔を赤くさせたまま、視線をそらせた。照れ隠しなのか?また着替えようとしているようである。
 嘉納:「つぎーつぎー、純子さんのいいところー、もーっと、主に俺が!みてみたいー」
こちらは照れ隠しどころか正直な気持ちを声に出してはしゃぐ。
小笠原にて開かれた2人だけのファッションショー。
外に降る冷たい雨とは対照的に、店の中では暖かな空気が流れていた。

fin


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受注者:猫屋敷兄猫@ナニワアームズ商藩国
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引き渡し日:2007/


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最終更新:2007年12月22日 13:00