竜乃麻衣@FEGさんからのご依頼品


竜乃さんの恋が叶う事を心より応援してます。  by金村佑華

/*/

 惚れた腫れたと人は言うが。
 惚れた腫れたが人の負け。
 惚れられたもん勝ち人生は。

 竜乃麻衣の惚れた人間、(名は是空とおると言うが)とにかく相手が悪かった。
 第一、この是空とおると言う人間、いわゆるエースと呼ばれる人種であった。エースと言うものは、とにかく多方面から命を狙われる。何回FEG消滅の危機になったか数えれば、キリと言うものがない。しかも世界移動存在な為、足を生やして追いかけてきた事件から逃げたり逆に追いかけたりしてすぐにどこかに行ってしまう。心配している身としては心配し過ぎて体が持たないと言うものである。
 第二に、この是空とおる、原素子ラブであった。原素子は現在行方不明。何かにつけて彼女の話題をした日には、無限にへこんでどん底まで落ちてしまうので、どう彼を扱えばいいのか分からず、文字通り腫れた物扱いするしかなくなってしまうのである。
 第三に、(これは竜乃自身の問題なのだが)自身の幸せは是空の幸せである。是空の幸せは、原とラブラブになる事。つまり、需要と供給がバラバラな為、竜乃は自身の心の落ち着く先がどこなのかが分からないのだった。
 人を好きになると途端に物事が見えなくなるものである。
 傍から見れば分かりやすい事でも、当事者からは何も見えなくなるものである。


/*/


 その日、竜乃は教室にいた。
 目の前には、意中の相手と、ペンギン。
「私を弟子にしてください! 私の心を鍛えてください!!」
 ハードボイルドなペンギンに直談判していた。
 先にも述べた通り、是空は気まぐれにいなくなる。
 その度に心配で口から心臓が飛び出そうな思いをしているのだ。
 鍛えたくもなるものである。
 ペンギンは、じっとりとした目で是空を睨んだ。
 是空の視線はどこを向いているのかは、ちょっと分からない。
「藩王さま、すぐどっかに行ってしまうから、そんな事で挫けたくないんです。あ、藩王さまはホットココアでも飲んで落ち着いてくださいな」
 竜乃は仏のような笑みを浮かべていた。
 何かを必至になって耐えている、そんな笑みである。
 世の中、それを健気と言う。
「俺エースだし」
 是空は口笛でも吹きたそうに口を尖らせた。
「だからどうした!!! エースだろうが藩王だろうがだからどうした!」
 竜乃はクワァァッっと叫ぶ。
「我慢したければ、正座でもしていたらどうだ」
 ペンギンの一言に竜乃は深呼吸した後、正座をした。
 それを見たペンギンはくすりと笑った。かのように見えた。


 竜乃は心配しているのである。
 是空は向こう見ずな性格だ。
 何かあったらすぐに消えてしまう。いなくなってしまう。
 その時置いていかれる身としては、心配で胃に穴が相手も仕方ない話である。

「藩王さまがどこかへ行ってしまうのは、仕方ないです。止める資格なんかないの、わかってます」
「素直すぎるのも問題だな。だから挫けるんだろう」
「えー? 私、素直ですか? すごいひねくれ者だと思ってますけど」
「正座している」
「目上の人の事を聞くのは、当然の事じゃないですかー」
 ペンギンとのやりとりを見ている是空の方を見た。
 是空は目を逸らしたので、またも「むぅ~」っと言う顔を竜乃はした。
 開き直った竜乃は、ペンギンに迫った。
「ましてや、これからハードボイルドペンギンさまの弟子になりたい、って思っているんですから」
「俺は弟子はとらん」
「それじゃ、私の先生になってください! 弟子じゃなくてもいいですー! 藩王さまと同じくらい強くなりたいんですー!」
 ペンギンが「フム」と顎をしゃくる中、「楽しくないぞー。辛いだけだぞー」と是空が茶々を入れる。
 竜乃は(我慢我慢)と口の中で唱え、ペンギンの目を見た。
「藩王さまと一緒にいられなくても、どっかでお役に立てるように、強くなりたいんで。どうせ追いかけても、逃げられるだけだから……」
「逃げてない逃げてない」
「横からちゃちを入れるな」
 是空が再度茶々を入れる。
 竜乃は溜まらず声を荒げた。
「じゃぁ、なんでお祭りの時に逃げ出したんですか――! あの時から決心したんです! 逃げられてもいいから、藩王さまのためになるようなことをしようって!」
 竜乃の発言に是空が途端、目を彷徨わせた。
「無意識に逃げているとかないだろうな」
 ペンギンの発言に、是空はさらに視線を彷徨わせる。
 是空のその表情を見て、竜乃はしばし考えた後、笑った。
 菩薩のように。
「なんとなくわかりました……やっぱり、私、強くなりたいです」
 竜乃の言葉に、ペンギンは答えた。
「強いと言うのは才能が大部分を決める。訓練は才能に及ばない」
「才能ですか…才能、あるのかな……」
 竜乃は考え込んだ。
「せめて、藩王さまが誰かにやられるくらいだったら、私がトドメさせるくらいの力でいいんだけどなー」
「まあ、あれば鍛えられているだろうな」
「いらないいらない。そんな力いらない」
「まぁ、トドメは置いておきまして」
「えー」
 何でもいいが、何故この人はイチイチ茶々を入れるのか。

「それくらいの力がなかったら、藩王さま追っかけられないじゃないですかー!」
「いや、俺追いかけなくても。強い子だしペンギンや猫の次くらい」
「せっかく皆で遊ぼうって時に、なんでいなくなっちゃったりしてるんですかー! ぎゃーす! 結局、私達が追っかけるハメになったんじゃないですかー!」
「いやもう。ぶっちゃけ疲れていた。死にたくなるのはエースのかかる甘い誘惑だ」
「その時にトドメをさしに行く力がほしいです。ぶっちゃけ」
「ぶっちゃけいらない」
 この主従漫才をペンギンは面白そうに見ていた。
「エースだろうが国のおーさまだろうが、だからどうした!ですもん!」
「そりゃそうだ。肩書きでゲームやるわけじゃないな」
「大体「だからどうした!」って言葉教えてくれたの、藩王さまじゃないですか!」
 何でもいいが、「だからどうした!」はニーギのセリフであり、是空が気に入って多用しているだけである。是空は再々度視線を彷徨わせた。
「だから私も「だからどうした!」って叫びながら、藩王さまの役に立ちたいって思ったし、トドメだってさしにいきますもん! ニーギちゃん見習って、世界移動してでも助けに行くんですからね!」
「とどめさされちゃかなわないな」
 ようやく、是空も観念したようである。
「だから、知らない所でピンチになっちゃ嫌です」
「善処します」
「……こんな私でも、強くなれますか? ハードボイルドペンギンさま?」
 先程から面白がって見ていたペンギンの方に、竜乃は「ヨイショ」と姿勢を替えた。
「是空に弟子入りすればどうだ」
 ペンギンの一言に、竜乃はキョトンとした。
「弟子にしてくれるんですか? 藩王さま?」
 竜乃の視線に、是空は頭をかきむしった。
「ペンギンのほうがいい先生だ。おい、そこの鳥類、仕事しろ」
「鳥類……いや、確かにペンギンも鳥の仲間ですが……」
「そろそろ結婚したらどうだ」
 ペンギンは今度は是空の方を向いて言った。
「原さんと藩王さまの結婚?」
 あ、地雷踏んだ。
 是空は途端、涙目になった。
「しますとも、原さんと、超原さんと。まいもーとーこー! うわーん」
 そのまま走って逃げていった。
 またもまたも竜乃は頭を抱えた。

 この取り扱い注意の藩王さま、いっつもコレなんだもんなあ。
「原さんの話題出すと、すぐコレだもんなー。むー」
「あれで結婚できないと思うが」
「早いところ、原さんと藩王さまを結婚させてあげたいから、強くなりたいんだけどなー」
「………」
 ペンギンは黙って煙草を吸った。
「どうにかなりませんか? ハードボイルドペンギンさま……」
「原と是空か?」
「はい」
「さてな。男の女のことまでは捜査の範囲外だ」
「ふたり次第、ですか……」
「今、原さんはどうしているんでしょうね……帰ってきてほしいな」
「………」
 ペンギンは答えなかった。
「そろそろ藩王さま追いかけないと、また逃げられちゃうかな」
「藩王さまー!とっとと国に帰りますよ――! みんな帰りを待ってるんですからね――――!」
「そうだな。国に縛りつけていたほうがいい」
「だから、いろんな意味で強くなりたいんですけどね……」
 そのまま竜乃は是空の元へ走っていった
「藩王さま大好きですタックル――!」をかける為に
ペンギンは微笑んで、竜乃の恋を見守っていた。


 惚れた腫れたと人は言うが。
 惚れた腫れたが人の負け。
 惚れられたもん勝ち人生は。



 竜乃のぐるぐるは、まだまだこれからである。


作品への一言コメント

感想などをお寄せ下さい。(名前の入力は無しでも可能です)


  • お礼が遅くなりましたが、ありがとうございます。まだまだ現在進行形のぐるぐる中ですが、このSSを励みにもういっちょ行ってきます! -- 竜乃麻衣@FEG (2008-01-14 00:55:08)
名前:
コメント:




counter: -
yesterday: -

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2008年01月14日 00:55