ロッド@ビギナーズ王国様からのご依頼品


波に乗るように、追い越すようにボートが、青い照り返しの中を滑るように進んでいく。ボートの上には少女が一人。ボートは通常ではありえない速度で突き進んでいるのに、彼女の顔にあるのは恐れでは無く嬉しそうな笑顔であった。

 だが、彼女を知っている人ならそれを聞いても、さもありなんと思うだろう。彼女の名はミズキ・ミズヤ。かの名高き火星独立の立役者の中心となった夜明けの船の搭乗員にして、後世に歴史学者たちに絶大な人気と苦笑をもたらす少女である。

 ミズキが急いで向かう先。そこには一人の少年が居る筈であった。

 彼の名はロッド。ビギナーズ王国に所属する移動者の一人にして、ミズキ的には・・・まぁ、他人がとやかく言うのも野暮と言うものである。ただ、誰の目から見てもはっきりしているのはロッドと会うことをミズキが楽しみにしている、ということである。

 「どんなことを話そう」 彼女は考える。二人で会うのは久し振りで、ちょっとドキドキする。この間は他にも二人ほど知らない人が居たし、あの大男に振り回されたからゆっくりできなかったけど。

 彼が去ってから色々あった。新しい夜明けの船のこと、火星独立、そして自分のこと。話したいこと、伝えたいことは沢山あって。

 そして・・・。

 ミズキはそこから先を考えるのを止める。何か恥ずかしい気がしたのと、会えば自然と解決するような気がしたから。

 今は早く会うことに集中しようとする。スロットルを全開まで回す。先ほど湧いた感情と上気した顔の火照りを冷ます様に、風を全身に受ける。

 ・・・らしくないよね、私。 

そう思いはするが、不思議と嫌悪は無かった。ロッドのことを思う時だけに抱くその感情。それを不思議に思いつつ、後で日記に書き留めようと心に決める。

 ・・・もしかして、彼は超能力者なのかも。火星独立の英雄だもん、それぐらいできるのかも。

クスリと笑みが零れる。近づく砂浜には彼の姿。相変わらず、柔らかい物腰の線の細い少年。でも、今のミズキには判る。人は見た目通りでは決して無いことを。

 そして、少年はかつてのホームへと帰還を果たすことになる。淡い想いを抱きあった少女の「おかえり」の言葉と共に。

なお、この日の記述が後世にて、ロッドなる人物が超能力者であると書かれる遠因となるのだが、それはまた別の話である。


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 ログが清純すぎて、凹みました。現役には敵いません(涙) お幸せにっ(地平線へと駆け行く)


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最終更新:2007年12月24日 13:38