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伯牙@伏見藩国様からのご依頼品



/*何かが起こった <Come to an intersection>*/



 では、原点へ向かいましょう。



Side-A -01

 夜のつつましい静けさの中、濃紺の天蓋となった空に白い星々が散らばっている。粉々に砕けたグラス片のような星明かりは、空の底にある大地を照らし、気の遠くなるほどの彼方より一つ一つの眼差しを向けている。
 開け放たれた道場の入り口から差し込んできた光も、そんな、彼方より走り続けた一欠片であった。
 白い光に一人の少女が照らされている。年齢は、まだ中学か、高校生くらいであろうか。背は平均的、手足はすっきりと伸びていて、日頃からスポーツをしているのか、あまり無駄な肉付きはない。薄い黄色のパジャマを着ており、何故か両手で布団を抱えている。
 ふと、彼女は視線をあげた。肩の上で、髪が揺れる。活発そうに開かれた瞳が、やや曇り始めた空を見る。
「うーん。雨とか降んないといいけど」
 明日の登校の事を考えて、神楽坂かすみは小さくつぶやいた。つぶやいた直後、失敗したかな、と考える。あんまり余計な事を言ってると、運のない方に転ぶかもしれない。
 別に、無根拠にそう思ってるわけではない。経験則である。
 なんというか。かすみの家系は、代々運がない。家族で遠足に行ったりすると途中で雨に降られたり、修学旅行に行った時は電車が妙に遅れたり。それが、かすみに限ったことではなくて、彼女の両親、祖父母、それ以前に到るまで連綿と続く一つの歴史になっているのだから、救いようがないというか、もう笑うしかない。
 雨とか降らなといいけど、なんて考えてたりすると、本当にそうなったりするかもしれない。
 いやいや。かすみは反射的に否定する。雨ならいい、雨なら。まかり間違って雷が落ちたりしたらどうしようか。
「うわ、どうしよう」
 どうしようもないのである。漫画みたいにアフロになった自分を想像。
「わー、わーっ!?」
 急いで忘れる事にする。
 ――まあ、そんな想像も冗談で済まないかもしれないくらい、運がない。最近では「運がないのが取り得なの」と笑って話すくらいだ。
 ただ、あんまりに運がないせいか、昔はずいぶん信心深いところがあったらしい。この道場は、その名残であるとか。
「……さて」
 星空眺めるのは終わりにして、そろそろお休みの時間である。かすみは道場のドアを閉め、布団を敷いた。
 自分一人の、静かな空間。窓越しに入ってくる星明かりが唯一の光源。
「うーん。珍しい事してるなぁ」
 ほんと、珍しいのである。
 ただ、たまたまお母さんに聞いた話である。
「えーっと……道場に布団を敷いて一晩を一人で過ごすと」
 ――あれ、なんだっけ。
 なんだったかよくわからないけれど、何かこう、言っていた気がする。それでおもしろそうなので、今日は試しにそれをしてみることにしたのだ。したのだが……。うん。忘れてしまった。
「ま、いっか。今日も疲れたし。もう寝ようっと」
 ことさら明るく言って見せ、かすみは布団に潜り込む。
 目をつむり、息を整える。
 風のざわめきに混じって――誰かの笑い声が、聞いた気が、した。



Side-B 00

伯牙:こんばんはー。小笠原ゲームをお願いしに来ました。
芝村:はい。
芝村:記事をどうぞ。
伯牙:

【予約者の名前】3100702:伯牙:伏見藩国
【実施予定日時】2007/11月/14日 24:00
【ゲームの種別】お小笠原ゲーム
【イベントの種別:消費マイル】
 ・ミニイベント(1時間)×2
【召喚ACE】
 ・Aマホライト時のNPCの女神様(もしくは、その子孫の女子高生):非滞在:10
【合計消費マイル】計30マイル
【参加者:負担するマイル】
 ・3100702:伯牙:伏見藩国:入学済:消費マイル30。
_____________________________________	


伯牙:以上になりますー。
芝村:どんな女神だったっけな。あれか。バスケのあれか。
伯牙:そうですです。
芝村:懐かしいなあ。
伯牙:もう2年とちょっとになる感じですからねぇ。
伯牙:前の質疑ではダイス次第でしたが、やっぱり今もですか?。
芝村:できるよ。
芝村:即興で組みます。
芝村:やった!よろしくお願いしますッ。
芝村:2分くれ。
伯牙:時間は全然大丈夫ですー。



Side-B 02

 伯牙こと鷺坂祐介は曇り空の下、その場所にやってきた。ちょうど朝方、そろそろ遅刻気味な時間帯のためか、通学路に学生の姿は少ない。いても、慌てて駆けていく者ばかりだ。
 そんな中、黒髪を掻いてその場に立つ者が一人いる。その人物こと伯牙は、こんな時間帯にもかかわらず落ち着いている風に見える。
 あるいは。何かを探すように景色を取り込む焦げ茶色の瞳には、別の何かが見えていたのかもしれない。
 いや、見えていた。
 彼はただ、足下に転がっているバスケットボールを見つめていた。
 伯牙は懐かしそうに目を細めると、本人すら気付かぬ微笑を浮かべ、それを手に取った。両手で抱えたバスケットボールは、軽い割に、意外なくらいずっしりとしていた。
「こんにちは。お久しぶり、です」
 誰もいないところに彼は言う。声が、空にとけていった。
 小さく息を吸う。目をつむり、ある姿を思い浮かべた。
 思い浮かべるのに、さほど長くはかからない。
 そして再び目を開いたとき、どこかで誰かの笑う気配を感じた。
 ずいぶん忘れていた、事だった。
「それでも、原点はキチンと心に根付いてます」
 神々の笑う気配に応じて、ちょっとだけ、今度は意識して、そして心から笑ってみせる。 あの時は上手くいかなかった。そんな事を少しだけ考えるが、今は、さほど、心配ではなかった。少なくとも、ここに来たことは嘘ではない。
「世界超えちゃいました。……恥ずかしながら、男が追ってきましたよ」
 その思いにこそ応じるように、にわかに人影が現れる。女神は微笑んで指を指す。伯牙が目を向ける。
 陸橋を、セーラー服を着た少女が走ってた。
 それを見た伯牙が、ふいに、懐かしさに顔をほころばせると、女神は姿を消した。



Side-A 01~02

「じ、時間がーっ!」
 なんというか。いろいろと失敗した。かすみは遅刻になるかならないか、そんなぎりぎりのタイミングに家を出た。
 そんな時間まで家にいた理由は単純だ。寝過ごした、わけではない。それは今は袋にしまわれているバスケットボールのせいである。
 こう、道場で寝たのは良かった。起きるのも普通にできた。そこまではいい。そこまでは良かったんだけれど、起きた場所が道場だというのが、ちょっと、まずかったのかもしれない。
 早い話。体を動かしたくなったのである。
 そして朝っぱらから練習してしまい――
「で、熱中しすぎて遅刻なんて……わーっ」
 もうネタにしかならない。まだ寝過ごしたの方がマシなのでは無かろうか? そんなことを考えながらアスファルトを蹴る。近道は、どっちだろうか?
「ああ、あれだ」
 視界の端に写った陸橋めがけ、かすみはさらに速度を上げる。が、ちょっと息切れしそうだったのでペースダウン。リズムを乱さずに走り続ける。
「こんにちは! お互い、遅刻しそうですねッ」
 そこに、いつの間にか併走している男子が話しかけてきた。突然の事に、少し慌てるかすみ。ええと、誰だろう。名前が出てこない。まだ転校したばかりだから、あまり顔を覚えてないのだ。
 どうしよう、なんて思っているうちに、彼は話を続けてきた。
「今日の朝、ちょっと剣道の朝稽古に夢中になってて。キミもですか?」
 視線を追えば、かすみの持っているバスケットボールをいれた袋に目を向けている。かすみはちょっと慌てつつ口を開く。
「えっと、転校してきたばっかで。あ、うん。得意なの。お母さんが凄い好きで」



 駆け行く人影は二つ。二人は林を駆け抜けて学校に向かう。
 その日、そのとき、何かが起こった。

 では、今日はこれにて。
 原点からいずこかへ向かうその姿を、彼方より見送りさせていただきましょう。


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