鈴藤 瑞樹@詩歌藩国様からのご依頼品


「あーん」
「・・・・・・」
「あ、あれ?おかしいな。あーん」
「なにをしたいですか、あなたは」

宰相府、とある館の、とある一室での事
昼時に見詰め合う二人
男はスプーンを手に不思議そうな顔をしていた
そんな男を見て、女は呆れていた

「はいどうぞ」
鈴藤瑞樹。不屈の男
「もう一度聞くです、何をしているですか」
カレン・オレンジピール。不器用な女

r:毎日お見舞いに来ます
そう男は宣言した、有言実行
毎日館を訪れては、世間話や愛の囁きを続けていた

「まだ本調子じゃないでしょ?食事の手伝いをですね」
未だスプーンを手に真面目な面持ちの鈴藤
「このくらい一人で摂取できます!」

この日は趣を変えて、介護の真似事などをしてみた
仕事を取られた看護士は、いやな顔をせず
むしろ微笑ましい光景を楽しんでいた

「はい、あーん」
「人の話を聞いたらどうですか!変態ですか貴方は!」
「うう・・手が痺れてきました。何とかしてください」
「なんとかって・・・」

不屈の男、今までの経験で覚悟はしている。故に折れない
「はい、あーん」
「し、しかたありません。一度だけです」
カレンは自棄になったのか大きく口を開けて受け入れた。
やや顔を赤らめて咀嚼する

「おいしいですか?」
「普通です、エナジーチューブと大差ありません、ってもういいです!」
次弾を装填しようとしたのを見て食器を引っ手繰るカレン
残念そうな鈴藤。

「私も食べてみたいなー、なんて」
「勝手にしたらどうです」
「あーん」

「ぶちますか?」
枕の下からハリセンを取り出すカレン、大分調子が戻ってきたようだ。


「あーなんかお腹減ってきたなー(チラリ)」酷く棒読みだった
「今日のあなたは、変です、いえいつも変ですが。今日は特に変です」
「そんなことはありませんよ、今日も変わらず。あなたの鈴藤です」
今日は攻める日、そう決めて来ていた。
それが功を奏したのか

「い、一度だけです、二度はありません」
スプーンを握り締めプルプルと震えている。
手のスプーンを・・・ゆっくりと


目に当てて、少し斜めに
「何してるんですか」
「え、えっと、ひ、光の国人」

お嬢様に置かれましては、未だその域に達するには修行が足りないご様子

「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「第七世界式ジョークです・・・」
「で、ですよね」

//*//


他愛のない会話を続けていると日が大分傾いてきた
「ああ・・・もうこんな時間だ、今日はこれで帰ります」
「もう、こなくてもいいですよ」
「明日も来ますよ?」
毎日繰り返されるやり取り、一時別れを惜しむ儀式のようなものだ


//*//

部屋を出て行く鈴藤と入れ替わりで担当の看護士が入ってきた
「相変わらす仲が良ろしいですね」
「あなたは目がフシアナですか」
「確かな目を持っていると自負しておりますよ?」

「失礼を承知で申しあげれば、元帥閣下に運ばれてきた時の貴女は酷い有様でした」
「・・・・・・」
「ですが、今の貴女はとても楽しそうに見受けられます。それはやはりあの方のおかげかと」

あの時は、死んだほうがマシだったと思っていた。いや、今もまだ思っている
その反面、毎日訪れる鈴藤を待っている自分がいる、楽しみにしているというのか

「素直が一番ですよ?やっぱりね」
「でっかいお世話です」

身体はすっかり良いが、もう少し位はこのままでも良いかなと思った


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カレンさんが早くお元気になることを祈って笑顔を描いてみました。
ご依頼ありがとうございました!

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引渡し日:2010/03/01


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最終更新:2010年03月01日 01:53