那限・ソーマ=キユウ・逢真@FEG様からのご依頼品
タイトル:『あなたのそば』
あのね、あのね。
Qのいきたいところは
ソーマのいるところだよ。
あのね、あのね。
Qね、ソーマの顔見るの
大好きだよ。
あのね、あのね。
Q、ずーーっと
ソーマの名前、よんだよ?
あのね、あのね。
ソーマ、大好き!
ずーっとずーっと
Qはソーマと一緒だよ。
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パタパタ、と小さな羽音を鳴らし、小さな妖精は嬉しそうに飛び回っていた。
大好きな人の傍に居れる幸せを、その羽音に込めているようでもあった。
やっと逢えたね。
やっと呼んでくれたね。
やっと傍にいれるよ。
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そんな小さな妖精を、逢真は思い出しながら、ケーキを見ていた。
生クリームといちごで彩られたそのケーキは、一般的なショートケーキだった。
誕生日ケーキらしい。
真ん中に置かれたチョコレートプレートには何もかかれていない。
自由に書きたいことを決めれる、と店員は教えてくれた。
悩んだ。ちょっと。
いや、ケーキが嫌いなわけではない。
きっとQも好きだと思う。だって甘いもの好きそうだから。
ただ、このケーキについてくる付加価値に悩んで悩んで悩んで…
そして買った。
自分の誕生日ケーキとして。
大好きな、あの可愛い妖精と、一緒に食べたかったから。
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Qとのデートの日。
逢真は手にケーキの箱を提げていた。
Qは小さな羽根をパタパタと羽ばたかせ、逢真の周りを嬉しそうに楽しそうに飛んでいた。
パタパタ、と再度羽を鳴らしたかと思うと、そっと大好きな逢真の肩に止るQ。
ふと、笑顔で見つめ合う二人。
この笑顔が、Qは大好きだった。
二人がいる場所は小さな公園の中。
公園につくなり、逢真は何か探していた。
キョロキョロと公園内を見回す逢真を尻目に、その肩に止まっていたQは思った。
この大きさならQ、箱に入れそうー。
ちょっとその箱が気になって仕方がないの。
ソーマはケーキを持ってきてくれた、と言っていた。
ってことは、あの箱にそのケーキが入っているはずなの!
大好きなソーマが持ってきたのだ、きっと美味しいに違いない。
そんなQの内心など知らず、腰を下ろしてケーキを食べれそうなところを探す逢真。
あ、と言う顔をするなり、目的地へと突き進む。
「この辺で、大丈夫かな」
公園内、見つけたベンチへ静かに腰をおろすと、逢真は手に持っていたケーキを広げた。
箱からはチョコレートプレートのついたショートケーキが出てくる。
Qの瞳が輝いた。
思ったとおり、美味しそうー!!
そんなキラキラな瞳でケーキを見つめるQへ、逢真は優しく聞いた。
「どの部分欲しい?切ってあげるよ」
「端っこ?」
ちょっと、えー、という顔をする逢真。
なにやら少し難しい顔をしている。
「端っこでいいのか?二人で食べるには充分な量あるんだし、好きなところ選んでいいんだぞ?」
「うんっ」
だから、Qは好きな「ところ」を選んだの。
逢真の顔をじっとみつめるQ。
それに気付いた逢真も微笑み返した。
逢真の笑顔がQは大好きだった。
「オレの顔見てるの好きか?」
「うん。大好き」
「オレも、Qの事見てるの好きだよ」
少し照れ笑う逢真。
Qは、そんな逢真が見れて、嬉しかった。
ケーキより、嬉しいかも…
「じゃぁ、Qの分にはチョコのネームプレートも付けてあげよう」
ドキドキしながら見上げるQには気付かず、逢真はプレートを割れないように、ケーキから取り上げると、
さっきQに分けたケーキの脇にチョコレートのプレートをちょこん、とつけた。
嬉しくて、Qはそれを抱えて微笑んだ。
「誕生日誕生日らんらんらん…」
小さく羽を揺らし、それに合わせて、お誕生日の歌をうたう。
逢真のために、やさしくうれしく。
えへー、と笑うQをやさしく見下ろす逢真に気付いて、見上げてみた。
やさしい眼差しとぶつかる視線。
すごく、なんか、胸が温かくなった…
その瞬間。
くす、っと逢真が笑った。
???
「Q…鼻にクリーム、ついてる…」
くすくすと笑う逢真。
大きな指が伸びてきて、そっと鼻の頭についていた生クリームを掬った。
その生クリームを、逢真がなめようとする前に「Qの~!」と言うと、逢真の指をペロッと舐めてきたQ。
びっくりする逢真。
????
あれ?Q、変なコトした?
「あ、いや、うん、ごめん…」
ちょっと顔を赤くして、Qから目を逸らす逢真?
Q、わかんないよ??
「いや、うん、ごめんな、Qの、取ろうとして」
「ううん、ソーマもケーキ、食べよ?」
「ああ、そう、だな」
まさか、指舐められるなんて思わなくて。
色んなカップルの話とかは耳にしていたけど…まさか自分がそんなコトになるなんて、この時点では考えて
いなかった逢真は、Qの突然の行動に驚きを隠せなかった。
しかし、Qがそんな逢真の内心に気付くはずもなく。
ドキマギしながらも逢真がケーキを食べ終わる頃、Qはすでにケーキを食べ終えて、チョコレートの板をあ
むあむしていた。
「美味しいか?」
「うん!!」
満面の笑みで、チョコレートを頬張るQ。
逢真はそんなQの顔を覗き込む。その頬にはチョコレートがいっぱいついている。
???
また、お鼻の上にクリームついてるかな?
ソーマがQのお顔ずっと見てるよ?
ちょっと迷ったり、赤くなったり、百面相を繰り返した逢真は少し恥ずかしげに切り出した。
「Q…」
「なぁに?」
チョコレートをはむはむしながら逢真を見るQ。
「遠回りしたけど…」
「うん?」
「これからは、ずっと、一緒にいような?」
「うん!!!Q、ずーーーっと、ソーマと一緒だよ?」
えへへ、ソーマ大好きだよ。
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きっと気付いてない。
ソーマが言う、言葉一つ一つがQにとって、すごくすごく大きな力になるんだよ。
ずっと傍にいて、Qにたくさんの言葉聞かせてね。
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Qの言葉、微笑み、その全部が、逢真にとって大きな誕生日プレゼントになったことは、Qも知らない。
それは逢真だけの秘密だった。
作品への一言コメント
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引渡し日:2009/11/20
最終更新:2009年11月20日 21:14