那限・ソーマ=キユウ・逢真@FEGさんからのご依頼品
初めて見た世界は
芳しい香りと温かな花びらに包まれて。
馬や牛によく似た聖獣達が見守る中。
星も見えない新月の夜。
また新しい生命が、いくつも生まれた。
闇の中、その生命達が生まれる瞬間に立ちあった妖精の羽根だけが世界を照らしていた。
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・・・・・・・・・くらいなぁ。
生まれたての妖精が初めて瞳を開けた時、第1に思ったのはそれだった。
寝ぼけながら妖精は、自身の羽根を広げ。湿ったそれを乾かした。
そして妖精はぼんやりうつらうつらしながら辺りを見渡して。それが間違いである事に気が付いた。
自分の羽根から淡い光が出ていたから。そして、自分とお揃いの布団から出てきた兄弟からも。
・・・・・・・・・きれいだなぁ。
第2に思ったのは、それ。
きらきらと光る燐光に見惚れながら。あちこちの花のお布団から漏れ出る光とお揃いの光がくるくる回っているのに気が付いた。
妖精は、自分の濡れた羽根を動かしてみた。まだ完全に乾ききっておらず、重くてパタパタと羽ばたく事はまだできなかった。
不思議に思って妖精は、くるくる回る光の方を。目を凝らして見てみた。
光の正体は長い髪を1本に結った妖精。自分達よりお姉さんなのかもしれない。彼女は空中をくるくる回りながら、両手を広げて飛び回っていた。それは正確には空中を踊っているのだが、まだ語彙の少ない生まれたての妖精には違いが分からなかった。
やがて、飛び回っていた妖精は伸ばした手をある方向に向けて差し出した。
その方向には、自分達よりも何倍も大きな、真っ暗だったら気付かない格好の男。羽根は見つからなかった。
「おどろう?」
彼女の笑顔が輝いて見えた。彼女の方がお姉さんだから、羽根の光も強いのかしら?
妖精よりも何倍もある手と手を取り合って、くるくると回り出した。やがて、2人ともきらきらと素敵な服に姿を替えて。
・・・・・・・・・いいなぁ。
生まれたての妖精は、どちらに向かってか分からない感想を心の中で呟いた。
大きな男と手を取り合った妖精は、何故か顔を赤らめて。羽根と同じく表情もきらきらして見えた。
何でそんなに幸せそうなんだろう?
その人はそんなに素敵な人なの?
今がとっても幸せなの?
ひらひらと大きな男から離れて笑って飛んでいくお姉さんの妖精を見て、幼い妖精は布団の花の向こうの世界を思った。
羽根は、彼らを見ている間に乾いたようだ。
飛び回る彼女を真似て、幼い妖精は羽根を広げ。銀色の花の布団から飛び立った。
ひらひら、ひらひら
同じように姉や妹、兄や弟達もゆっくりと。次から次へと飛び立って行く。
皆、一様に外の世界を見たいと思っていた。
自分達の姉のように、もっときらきらと輝けるようになりたいとも。
でも、まずは先に。
すぐ近くの水場に降り立ち、生まれて最初の水をすすった。
穏やかな目の生き物達に囲まれて。
新月の晩にしか見られない、こんなお話。
作品への一言コメント
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- ログ同様、幻想的なSSありがとうございます。この子も元気でありますように…… -- 那限・ソーマ=キユウ・逢真@FEG (2009-10-26 01:45:46)
引渡し日:2009/11/12
最終更新:2009年10月26日 01:45