松井@FEG様からのご依頼品


芝村 の発言:
あとまあ、総一郎はなんというか、アホの子なんでよろしく

松井@土場 の発言:
アホの子…

松井@土場 の発言:
nicoさんちのヤガミさんと比べると

松井@土場 の発言:
だいぶ精神年齢が

芝村 の発言:
新婚旅行気分だからね

芝村 の発言:
貴方がぶちきれる前に教えておく

芝村 の発言:
では2分お待ちください。

松井@土場 の発言:
ぶちきれる…

芝村 の発言:

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松井@土場 の発言:
星座を観測するという建前で

芝村 の発言:
ヤガミはいい気なビーチパラソルもって歩いています。

芝村 の発言:
星座観測と聞いて、ビーチパラソル落とした。

松井@土場 の発言:
「落ちましたよ」

芝村 の発言:
総一郎:「ああ、いや、星か、星、うん、いいね。見よう」

芝村 の発言:
総一郎:「あー。いや、勉強会だった。うん」

(ここまでゲーム開始直前直後のログをそのまま掲載)

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 世の中の事象というものは、たった1つである。しかし、関わった当人たちは立場、それまで育ってきた環境による思考、性格など様々な要素から、異なった見方をする。つまり、同じものを見ている筈なのに、それぞれの人々にとってのその事象は少しずつ、場合によっては大きく異なる。

 さて、これを読んでいる貴方は、先に掲載した松井 総一郎氏の出会い頭の行動をどう受け止めるだろうか? ヤガミはかわいいなぁ、と思ったり、苦笑したり、はたまた筆者のように自分の失敗を思い出して遠い目をしたり、様々であろう。

 そう、今回はそういうお話。

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 岩陰からこっそりと双眼鏡で覗き見る。太陽は頂点を過ぎ、1時間もすれば空が赤く染まるであろう過ごし易い時間の中、砂浜へと降りるコンクリートの階段の上に二人の男女が居る。一人は黄色のジャケットに眼鏡をかけた男性、もう一人は犬耳の女性だ。世界の滅びが近づく時に降ると言われる光の雪の中で、二人は向き合っていた。

 双眼鏡の中で女性の発言に男性は明らかに動揺し、小脇に抱えていたビーチパラソルを取り落とす。そのビーチパラソルを見つつ発せられた女性の発言に対し、そっぽを向きつつ答える男性。どう見ても旗色は男性側に不利のようである。

 「よく聞こえませんわね」

 「プイエ様、なりません」

 つぶやく岩陰の少女。岩陰から更に身を乗り出し、二人の男女の会話を聞き取ろうとするも、背後の少女よりも年上の犬耳メイド服姿の女性に制止される。制止された少女にもまた犬耳があり、不満そうにぴくぴくと動いている。少女の子供っぽい仕草とあいまって、大変可愛らしい。

 「なんで、止めるのよぅ」

 その途端、メイド服姿の女性から鼻血が吹き出る。岩や砂が赤を纏い、鼻からはドロリとした液体が流れ落ちる。少女はまたか、というあきれた目で見やると、肩掛けポシェットからハンカチを取り出す。その動作には慣れを感じさせることから、よくある事態なのであろうと察せられる。

 「エマリー、鼻の粘膜が弱いのかなんなのか知らないけど、そのうち出血多量で死ぬわよ・・・」

 「だひじょうふです、おじょうふさば。このえばりー、ふだんよりればーなどてしゅぶんを」

 「鼻血が止まってからでいいわ。優雅でなくてよ」

 「はひ、ぷひえさま、さいこふでふ」

 吐息をつく、プイエ。エマリーは優秀なのだが、時々急に鼻血を噴出する。正直、すっごく引くがそれ以外では問題が無いので、そのままにしている。公式の場では鼻血を噴く事も未だ一度も無く、噴いたとしても不思議とその身を血で汚す事は無い。現に今も白いエプロンドレスには赤い染みは一点たりとも見つけられない。

 なんだかなぁ、と思いつつ気を取り直す。双眼鏡を再び男女に視線を戻すと、男性が照れ笑いを浮かべていた。帽子を深くかぶった為に女性の表情は伺えないが、いい雰囲気である。

 胸が痛い。男性を追い駆け、この島までやってきた勢いが萎えてしまいそうになる。あの無礼者の瞳。吸い込まれそうな黒瞳は、一瞬で少女を引き込んだ。私以外の女の子をそんな優しい目で見ないで、と心がきしむ。

 彼と始めて出会った後に、プイエはすぐに彼の素性を調査させた。帝國の中でも比較的身分が高いノブレス家の力もあり、身分が割れるのもすぐであった。名は「松井 総一郎」。ヤガミと呼ばれる何人かの内の一人で、第七世界人、赤の聖女「松井 いつか」の恋人だと言う。

 「松井 いつか」

 土場において彼女の人気は高く、戦場の華として有名である。かのぽち王女への忠誠心も厚く、彼女の顔や名を知らぬ者はもぐりと言えた。勿論、プイエも彼女の顔や名前はTVや新聞でよく知っていた。

 「そっか、そういうことだったんだ・・・」

 「プイエ様?」

 「あの指輪はあの人に贈る為の物だったんだ」

 「ああ、プイエ様。おいたわしいながらも、かわいい・・・」

 空が赤く暮れ始める中、エマリーの鼻からまた赤がほとばしった。

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 松井 総一郎には心に決めた女性が居た。幾たびも戦場を共に駆け抜け、背中を、そしていつしか心まで預けられる存在になった女性が。

 何度と無く、彼女が去っていくのを見送った。そのたびに、これが最後だと彼女の姿を心に焼き付けていた。彼女が現れるのは、いつでも世界が危機に陥る時。ゆえに彼女との再会が叶うのは、いつでも世界が悲しみに覆われようとしている時であった。

 だから、総一郎は「松井」との再会を望むことは無かった。それはかつて己が違う名であった時の自分の誓いに反する行為であり、そんな自分を許せないのが彼であったから。

 それでも、今このニューワールドと言う世界で彼女と過ごせることを嬉しく思ってしまう。彼女がここに居る意味を知っていても、だ。また、別れの時は来るかもしれない。それでも、彼にとっては彼女と過ごす今という時間を大事にしたいと言う想いの方が強かった。

 「ん?」

 意識を元に戻す。何か悲鳴が聞こえた気がする。最近、いつかと一緒に居られる時間が多かった為にどうにも気が緩みがちである。艦の仲間からも変わったと言われるのも当然であろう。

 悲鳴の方向に見当をつけ、見やると豆粒ほどの何人かが揉み合っているように見える。走り出しながら、全身機械である彼は、瞳を望遠モードに切り替え見つめる。その瞳には、少女の腕を捻りあげようとする中年男性の姿が見えた。総一郎は速度を上げる。

 「放して、放しなさいよ、無礼者!」

 「うるさい、商売の邪魔しやがって!」

 露天の前で少女を捻りあげる中年男性は、大人気なく顔を赤くし興奮している。周りに居る人々が見てみぬ振りをしているのは、彼が体格のいい北国人の中でも更に上背があり、力が強そうな為であろう。露店が並ぶ広場ではお祭り的な歓声は息を潜め、怒鳴り声だけが響いていた。

 それを見て、やれやれと総一郎は思う。元々、怒りっぽい性格の上に小娘に何か言われてキレ、更に自分の大声で興奮、といったところか。正直、関わるのは面倒だがそうも行くまい。総一郎は速度を落とし、ゆっくりと歩み寄る。

 「なんだかよく判らんが、落ち着け」

 「なんでぇ、関係ない奴は引っ込んでろ!」

 「そうよ、かっこつけなら止めなさい。怪我するわよ」

 中年男性だけならともかく、少女にまで止められる。確かに自分の外見からそうそう荒事に強いようには見えないとは思うが、微妙な気分である。

 「・・・怪我はしない」

 不満そうに呟くと、機械の筋力で一瞬にして距離を詰め足払いを掛ける。天地がひっくり返った中年男性の握力は緩み、少女を総一郎は片手で掴む。もう一方の手は中年男性の足首を掴んでいた。

 「このぐらいにしておかないか?」

 「はい」

 「はーなーしーなーさーい」

 「・・・はぁ」

 中年男性の方はゆっくりと、少女の方は溜息を付きつつ、さっさと放す。腹からべち-んと落ちた少女は食って掛かる。彼女の怒りが一段落するのはそれから30分程を要する事になる。

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 その日はお母様の誕生日だった。私のお母様は優しく、大好きな人だった。だから、凄い贈り物をしたいとずっと考えていたのだ。無駄遣いをしないで、お小遣いを貯めたというのに戦争が始まると言うことで家から出してもらえなくなってしまった。

 だから、エマリーの目を盗んで、ようやく出てきたというのに・・・。

 「だって、あんなものを宝石と言うのはおかしいわ」

 「そうか?」

 「そうよ。だから、こんなものを身に纏ってなんて、恥ずかしくて歩けないわって言ってやったの」

 「・・・そうか」

 さっき、私を放り投げた眼鏡優男は、こちらに対し適当な受け答えをしていた。まったく、失礼と言う意味ではさっきの露天の店主を上回っている。こんな無礼な奴、見たことない。まぁ、お供を命じたら素直に従ったから、許してあげなくも無い。「お母さん、か」と言う物言いが若干引っかかるけれど。

 「ノブレス家の一員たる私のお供が出来るなんて、光栄に思いなさい。本来なら、あなたみたいなのが私の側にはべることは許されないんだから」

 「そうか」

 「さっきから『そうか』ばっかり。それしか言えないの?」

 「そうかも」

 「貴方ねぇ!」

 「着いたぞ」

 目的の貴金属店に着いていた。気付いたら、あっという間で。この無礼者とはこれでお別れ。寂しいような気がするけど、気のせいね。

 「お供、ご苦労。後はいいわ」

 「いや、俺もここに用がある」

 「そう・・・」

 「どうした? 入らないのか」

 「さっさと入って、露払いなさい!」

 手を振って入店する無礼者。目的地が同じと言うことは、私の為ではなく『ついで』。がっかり? そんなことはない。本当にあいつは無礼者。そうだわ。・・・そう、思うことにする。

 店内はあの露天とは違い、曇りの無い輝きに満ち満ちている。お母様に贈るのはどれがいいのかしら。どれを選べばいいのか、迷いは尽きない。

 「まだか?」

 「レディの買い物には時間が掛かるのよ」

 「そうか」

 自分の買い物はそうそうに済ませ、こちらの手元を覗き込んでくる無礼者の顔が驚愕に歪む。

 「どうしたの?」

 「・・・なんでもない」

 無礼者は店員を呼び、先程買った商品を返品している。受け答えしている店員が「カイショウ」やら「値段がすべてじゃない」とか輝くような笑顔で言っている。気の所為か、無礼者の声のトーンがどんどん落ち込んでいく。それを見て、私の気がなんとなく晴れたような気がした。

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 「指輪を。調べは付いています」

 不意打ちだった。どこで知ったのやら、目前のいつかは指輪のことを持ち出してきた。まさかとは思うが、あのお嬢さんに聞いたんじゃないだろうな・・・。

 先程、望遠モードで見つけたぐらいだし、まさかいつかとあのお嬢さんが知り合いだとは思えない。それに二人のウマが合うとはとても思えない。本当に、偶然と言うものは面白い。自然と総一郎の顔から笑みがこぼれる。

 「いいこで、楽しみにしていてくれ」

 「判りました」

 そして、総一郎は時間を越える。

 値段が愛の量を示すなら、それは沢山の愛が明確に判る指輪。それが彼女に渡る時を思いつつ、彼は旧友と過去の自分が居る世界へと行くのであった。

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 次回予告

 「追いついたわ、無礼者!」

 「なんで、ここに居るんだ!」

 「ノブレス家は帝國屈指の名家ですので」

 「有り得ん上に、説明にすらなってない・・・」

 「ヤガミの馬鹿ー、見せつけに来たのか!」

 「ちがーう!」

 ナレーション:なぜか時間跳躍してきたプイエとエマリー。それを見た傷心のぽち王女は総一郎を責める。響き渡る総一郎の絶叫。

 果たして、松井 総一郎はこの難局を乗り切り、松井 いつかの元に戻れるのか! 

 次回、「極寒の青森で、ブリリアント梅鉢の夢を見た」にシールド突撃!

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 すいません、自分にはラブラブな話しを書くのは無理なようです。初めはらぶいのを書こうとしていたんですが、変な方向に。

 総一郎LOVEに対し松井親衛隊も出して、栄光のソウイチロー号に追いつけないとか松井親衛隊の面々等も考えたのですが、ラブの欠片も無くなりそうなのでやめました。

 今回はご指名頂き、ありがとうございました。ちょっと反省してきます。


作品への一言コメント

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  • いろいろな可能性の一つとして、楽しく拝読させていただきました。ラブというログでもなかったので少ない情報でいろいろとふくらませていただきありがとうございました。依頼を受けてくださり、ありがとうございました。 -- 松井 (2009-11-11 00:15:12)
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引渡し日:2009/10/19


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最終更新:2009年11月11日 00:15