船橋鷹大@キノウツン藩国さんからのご依頼品
いつか来るその日のために
理想は、アララさん。
綺麗で、優しくってお料理も上手で。旦那様の高原さんといつまでも仲良しで。
そんな素敵な。
お母さんになりたいなぁ・・・・・・・・・。
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「えーと・・・空歌は子供欲しい?」
あの鷹大からの思わぬ告白から数日後。
空歌は再び高原家に足を運んでいた。
今日は友人の翠蓮にケーキの作り方を教わりに来たのだ。
ちなみに夫婦は買い出しに行って今はいない。
テーブルの下でアントニオがあくびをしながら丸まっているのを尻目に。
空歌は湯煎にかけながら卵と砂糖をかき混ぜていた。おっかなびっくり、だけど卵が固まらないよう気を付けながら。全体的にもったり白くなるまで。
隣で翠蓮は小麦粉をふるいながら、うっかりひっくり返さないよう見守っている。ちなみにアントニオも寝そべっているが、キッチンから目を離していない。ちょっと大げさかもしれないが、空歌には卵をレンジでチンして大爆発を起こした前科があるのだ。まあ、その時を思えば大分改善された。と信じたいが。
「でも、どうして急にケーキ作りたいって思ったの?」
缶詰のフルーツを程よい大きさに切り分けながら翠蓮は聞いてみる。ちなみに空歌はまだおっかなびっくりハンドミキサーと格闘している。
「う、うん。えっとね、アララさん」
「ママ?」
もったりと白くなった卵にハンドミキサーで8の字を描くと、バニラエッセンスを数滴。甘い香りがふわりと漂った。
「ほら、この間の鷹大君の誕生日のケーキ。あれとっても凄かったよね」
「あー」
思い出すのは数日前の高原家。この家では普通のつもりなのだが、流石にテーブルの上にケーキ20個は一般の家庭では並ばないかもしれない。
「数もそうだけど、みんな味が違ってたもんね」
「うん、定番のショートケーキにチョコレートケーキにチーズケーキに」
「そういうの、自分の子供に食べさせられたらなぁ、て」
その言葉に翠蓮は目をぱちくりさせて、空歌の腹部を凝視した。ボールに小麦粉がちょっと多く入ってしまったが、混ぜる時に気を付ければ問題ないだろう。
「あ、まだいないよ。でもできたらいいなぁ、て」
「空歌ちゃん気をつけて、ハンドミキサーはもういいよ」
顔を赤らめてボールにハンドミキサーを放り投げようとするのを慌てて阻止してゴムベラに持ち替えさせた。
「でも、最近この国もゴタゴタが大分落ち着いて来たでしょ? それに・・・・・・・・・」
空歌の頭の中で鷹大のあの言葉がリピートされ、ほおっと顔が赤らむ。一応手は動いているが、気のせいかいつもより勢いがある。というか中身がその勢いでべちゃべちゃボールから飛び出しまくっているから翠蓮は取り上げてさっくり混ぜ直した。でも、少々耳年魔なお年頃。会話を中断する気は毛頭ない。
「それに?」
翠蓮が聞き返すと、空歌の赤い顔が更に赤くなって湯気まで出そうになってきた。
でも、空歌の様子で数日前の誕生会の事を思い出して察してしまった。
ああ、そっか。新婚さんだもんね。
思うと、顔がにまにまとしてくるのを感じて。多少飛び散ったけど粉っぽさの消えたケーキの素を一旦その場に置き。空歌にぎゅっと抱き付いた。そして小さく言った。
「早く会えるといいね」
ただし、その言葉で今度こそ空歌は爆発したのだけれど。
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今日は翠蓮ちゃんに習って桃のショートケーキを作りました。
肝心のスポンジが、混ぜすぎちゃったのかちょっと固くなっちゃったけど塗った生クリームと桃が美味しくってよかったです。
それに、鷹大君が美味しいと言ってくれたのが1番嬉しかったです。
今度は失敗しないようできるといいなぁ。
そして、いつか生まれてくる子にも。「美味しい」て言ってもらえるといいなぁ。
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引渡し日:2009/07/26
最終更新:2009年07月26日 00:56