さるき@暁の円卓藩国さんからの依頼


ワァァ、という大歓声が巨大なホールに鳴り響く。

人、人、人、とにかく人。白人黒人黄色人種にはてない人。まるで人種のサラダボウルそれは通勤ラッシュ、次は終点フィナーレフィナーレ。ダイブにモッシュは危険ですのでご遠慮ください皆々さま。”非難GOGO”が常である満員電車のごとく鮨詰めにされた人々はしかし、不満な顔一つせず、期待と羨望と危険ななにかの入り混じった熱い視線をステージへ投げかけているのである。

見つめる先には小指を立ててマイクを握るMCがひとり、待ちきれないといった様子で口を開く。おれの口は今から最高の出番を迎えるゼうらやましいだろう世界中のMCども。そんな風に興奮した様子で、しかし、これから紡ぐ言葉に失礼がないように。

「全ガチムチ界100億の兄弟たちよ、ついにこの時がやってきたぜ!」

ところで、この会場にいるのは男だけである。

「いい男たちが散々登場した今日のパライソだが、やっぱりあの兄貴をみなきゃ俺達明日は迎えられねぇ!!」

何故なら今日は「ガチムチフェスティバル2009夏の陣~キラ☆男だらけのいい祭」の日なのであり、それは様々な伝説とカップルを生みつつ、ついに大トリを迎えようとしていたのだ。もはや賢明な諸兄なら既に察しも付いているだろう鳳のあのお方。そう。

「次に登場するのはガチムチ界のスターダム!我らが兄貴!キャプテン・レッドサーモン・北海道ぉぉぉぉ!!!赤鮭兄貴だぁぁぁぁぁぁ!!」

熱気、汗、ス・メール。会場の興奮はテンションマックス、限界突破の臨界点。轟音のような「兄貴~!」という歓声が会場を揺らし、二階席がガチムチの重量と歓声による衝撃波でミシミシと音を上げるが、誰もそんなことはきにしない。何故なら次の瞬間に登場する御方を拝謁する光栄に預かれれば本当に死んでもいいからである。死して笑顔残すは漢の様。それは男道。

あにきーあにきーウホ!とか、こう、聞いたら確実に洗脳されて三日三晩は悪夢(もしくはパラダイス)を見そうな大爆音をかき分けて我らが兄貴が天井から吊るされたゴンドラから降臨され申した。右手にマイク、左手にいい男。ちなみに何故かローラースケートだ。

「ところでお前ら、この御方をみてくれどうおもう!」
「「「「「ウホ!いい兄貴!!!」」」」」

ミュージックが流れ始める。これから兄貴は歌うのだ。ご機嫌絶頂のイントロが盛り上がりのクライマックスを引き出して、そして―

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というようなおかしな妄想を大宇宙のどこかでさるきの意思決定をしているとおもわれるはずの大宇宙の意思―通称、中の人―が展開させる程度にさるきはどきどきしていた。

なぜなら今日はあにき、ではなく、先生、もとい、赤鮭との逢瀬、じゃなくて、藩国巡りの日なのだから。決してデートではない。デートじゃないんだってば。

ちなみにそのとなりでは暁の王犬ミスト様が鎮座されているのである。ワフワフ。

まだかなまだかな、学○のおばさんまだかな~と、赤○ン先生ならぬ赤鮭先生をどきどきしながら待つさるき。ちなみに、赤ペ○先生は真剣ゼミである。説明しよう、真剣ゼミとは真剣の扱い方を毎日15分の練習で教えてくれる暁の国の剣士養成組織なのであるとかなんとか変な妄想が左脳を犯そうかというというところで、国境線の向こうから赤鮭がの~んびりと歩いてきたのであった。

「赤鮭せんせー!!」

アリーナ席の二階を超音波で破壊しそうな大声をあげ、ソニックブームを発生させそうな勢いでかけよるさるき。赤鮭の目前で軽くジャンプ、着地でブレーキ。盛大に巻き起こる砂埃。そしてソニックブームで吹き飛ぶ周りの諸々(嘘)。ところでアリーナ席ってなんですか。

「おー。元気か、少年」
「はい、元気にやってます!」
「結構、結構」
「この度は、暁の円卓までお越し下さり有難うございます」

と、ふかぶか~と彼はお辞儀をした。


無防備にも。


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ところで、ここでよい子の諸兄は目の前で人がふかぶか~とお辞儀をしたところを想像してほしい。

想像しただろうか。

しましたね。

しなさい。


OK。


さてここでクエスチョンです。あなたの目には何が映っていますか?

お辞儀している人の後頭部。

首筋。

背中。

そしてあとは何が見えますか。
はい、そこのあなた、大正解です。

さぁ、手を伸ばしましょう。

伸ばしなさい。

伸ばさねば。

のばさねども。

いいから伸ばそうよ。

先生との約束だ。

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赤鮭はナチュラルにさるきの尻を触った。

ぺちん?

NO。

さわもにゅっ!

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さるきはその行動の意味がわからない。純粋漢にしてみれば、きっと自分のお尻に埃でもついていてそれを払ってくれたんだろうなんてやさしい人なんだこんなこまかなきくばりができるなんてぼくもこんなひとになろうそうすればいつかはせんせいのようにつよくてかっこよいおとこになれるにちがいないあしたからさっそくじっせんしてみようとりあえずはんおうのおしりにでもきくばりをしてみよう。

きっと次の日からはさるきはそういうカテゴリ(SEXUAL×××××が過ぎて、基本的に避けられる可哀そうな子)で藩国のみんなから見られてしまい行くところがなくなってしまった彼が行くところは赤鮭のところだけになり、ガチムチキラーは見事ガチムチ界の仲間入りを果たしてしまうというこの巧妙な作戦はさすが赤鮭というところか。

さすがスターダム兄貴、作戦が深遠すぎてきっとそれは考えすぎという便利な一言で一蹴されてしまうのである まる

ところで、きっと大宇宙の意思は触られるよりも触りたいと思っているに違いない。




ほんとうにどうでもいいが、筆者もいい感じで汚染されているようである。

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尻を撫でられたさるきの頭の上には電球、ではなく「?」マークが浮かんでいた。きっと必殺技を閃いたわけでもなければ撫でられた意味もわかっていない。挨拶ぐらいにしか思っていないのだろうし、実際赤鮭にしてみれば尻撫では挨拶に過ぎないのだ。彼が本気を出せばSSにできないどころか、公開すらできない18歳以下のお友達は指をくわえて遠くからでも眺めちゃいけませんとママに諭されてしまいつつ、ママはガン見して携帯電話でムービ保存、近所の奥様方の供給源というそんなパライソが展開されてしまういことは自明の理である。

「気にするな。で、何を見せてくれるんだ?」
「赤鮭先生の今後のご武運を祈願したいなと思いまして、明刻社の戦神社にご案内しつつ
 学校要塞を見学してもらおうと思っています」

最強無敵の赤鮭にこれ以上の武運なぞ必要もないため、武運長久を祈願するのはきっと嘘なのだ。さるきはただ暁の円卓の戦神に赤鮭という生きる戦神を見せたいだけなのだ。そして心の奥底でちいさく自慢したいに違いない。「どうだ、この人が赤鮭先生だぞ」と。

「へぇ。いや。俺は別に神だのみなんてのはどうだっていいが。まあ、戦の神といえば美少年だろうな。いくか」

暁の戦神、ロック☆オン。

こちらになります、と暁の戦神の貞操の危機へのカウントダウンを知らずに始めてしまったさるきを尻目に王犬ミスト様は全てを俯瞰視でもするかのようにただ尻尾を振っているのであった。

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「んで、これを登るのか。」

これ、とは神社といえばなぜか必ずイメージする天をも突く長大な石段である。実際、多くの神社には大なり小なり石段があり、神社そのものは高い所にある傾向が多い。これは神に祈祷するさい、すこしでも神に近いところで祈りを捧げようというそういう発想から生まれている。その副産物として長大な石段があるわけである。ここ明刻社の戦神社もその発想から漏れずにこうして長大な石段を備え、国民の足腰の強化に一役買っているわけである。ちなみに、神社が高い所にある由縁はただの筆者の妄想なので丸呑みにしてはいけない。

「俺、ここから見える、田園風景が好きなんです。みんなが頑張って、食料を作っているところを見るのが好きなんです」

「そこに毒を撒いたとなると…、ちょっと哀しい、、です」

神社に来る途中、彼らは国民が物騒な相談をしている現場に出くわしている。体は子供、頭脳は大人な歩く事件ホイホイならぬ、体は戦闘民族、こころは平和主義者な―それをして人は矛盾というのであるが、しかし、それがいい―さるきが心を痛めるのもさもありなん。

「ろくでもないやつだな。まぁ、怒るのもわかる」
「さあて、んじゃ、戦勝でもいのりますか」

そして、しょんぼりな話の流れをぶっちぎるように赤鮭先生はさるきとの逢瀬(誤字にあらず)を再開するのだった。それは彼なりの気づかいだったのかもしれない。

そして赤鮭はさるきの真似をして二礼二拍一礼をこなした。

完璧に。

そして優美に。

これでいいのか、と出来栄えを問う赤鮭に対して完璧です!と顔を赤らめ頬を上気させ、興奮気味にさるきは言う。すごい、さすが兄貴!なにをさせても完璧にこなしてしまうかっこいいないつかはぼくもこんないいおとこになりたいなでもどうしたらいいのかなやっぱりおしりにまできづかいができるようにならなきゃいけないんだそうにちがいないところでなんでぼくはせんせいをあにきってよんだんだろう。

と、さるきは惚れ惚れしているにちがいなかったのである。きっと。

「よかった。心の中まで真似できなかったのが残念だ」

「でもまあ、挨拶くらいは出来たかもな」

挨拶つもりであれば本当に御の字である。きっとこれから明刻社の戦神は無条件で赤鮭に加護を送るに違いないのだ。

なぜだって?

愚問です。

「よし、んじゃ、学校でも見るか」

ところで、よし、んじゃ、学校で(いい男でも)見るかと聞こえたのは筆者だけであろうか。

「よし、んじゃ、学校でも見るか」

赤鮭とミスト様を腕に抱えたさるきは高い石壁に囲まれた学校の見学へ赴く。暁の学校要塞は「暁星」「天目」といったようにいくつか存在しており、これから向かうそこもそんな中の一つなのであろう。

「学校要塞ですが、武術のみの教育から農業や歌などの勉強を取り入れるように最近なったんです」
「普通の国へ、か」
「なるほど」

二人は要塞の頑丈な校門をくぐる。要塞らしそこでは子供たちが追いかけっこをして遊んでいた。

そう、追いかけっこをして遊んでいたのだった。

「少し前までは、こういう風景じゃなかったらしいんです」
「んじゃ、感謝すべきだろうな」
「いい光景だと、思うぜ?」
「当たり前の風景がこの国で見られるようになったんです」
「ありがとうございます」
「田舎だけどこういう風景を赤鮭先生に見て欲しかったんです」

このやり取りの後、二人はアイシャドウのでかい男を発見するのだが、さるきの心を吹き抜けた「それ」に比べればささやかなものにすぎなかったのである。




/-それのはなし―/

―我らは正義のための騎士だ。正義の名に忠誠を誓い、正義に仕えよ。我らは正義の盾であり剣である


建国の際に王が宣誓した言葉



暁の円卓藩国。それはただの人間が夜明けを願って作った国である。この国にはI=Dも、近代的な装備も、魔術の素養も、何もかもがなかった。あるのは夜明けを呼ぼうという心意気だけだった。

だから、暁の民はその心意気にしたがい夜明けを呼び込むためにただ強くあろうとした。

強くなるためにはどうするのか。そう修行をするのである。それも、身を焦がすような苛烈な修行を。

暁の民は良くも悪くも、ただ強くあろうとしたのだ。

だからこそ、この国は現代のスパルタと呼ばれるほどに子供の生存率が低かった。子供は10人に1人しか生き残れなかった。ここには「当たり前の風景」というものがなかった。
暁の国は子供が血池臓林で命を掛けることこそが「当たり前の風景」だったのだから。

そして、ついにこの国は改革を断行した。

見知らぬ誰かの笑顔より、隣の友の笑顔を守るために。

それがたとえ、世界全体にとっての損失になろうとも、彼等はそうしようと決めたのである。



国で誰よりも同胞たちを気にしていたさるき。

誰よりも国の現状に心を砕かれた気弱な剣士。

心優しき彼。

だからこそさるきは、子供たちが追いかけっこをして遊んでいる風景をみたとき、眼尻に涙を浮かべた。きっと僕たちがやったことは間違いじゃない。



それは「追いかけっこかな?」という、たったそれだけのごく短い場面だったけれど今日見た、聞いた、触られた、どんな出来事よりも彼女の心に清らかな―不安という名の霧を吹き飛ばす―風を呼び込んだ、そんな、そんなかけがえのない一場面だった。



―Ich bete, so das ein Kind gesund wird…
―jamais
―Eternita
―Eternidad
―そう、永久に



…to be continued














/-おまけ―/
「ところでお前ら、この御方をみてくれどうおもう!」
「「「「「ウホ!いい兄貴!!!」」」」」

ミュージックが流れ始める。これから兄貴は歌うのだ。大量の爆竹が弾けまくりご機嫌絶頂のイントロが盛り上がりのクライマックスを引き出して、そして―




摩訶不思議ガチムチアドベンチャー

作詞:筆者
作曲:摩訶不思議アドベ○チャーを聞きながらお歌いください

なでようぜ   野郎のお尻
世界でいっとー 素敵なお尻
なでさせて   野郎のお尻
世界でいっとー スリルなHIP

この世はガチムチパラダイス
そうさ いまこそやらないか

胸ワクワクの お尻がズラリ
色とりどりの 胸板ビッシリ
この世のどこかで光ってる

そいつを触りにいこうぜ兄貴
ノンケの野郎はぶっ飛ばし
海賊船で今日も行くのさ

Lets GoGoGo ガチムチパラダイス
七つの世界を駆け巡り
Lets TachTachTach 野郎のお尻
この世は薔薇色パライダイソ

撫でまわせ 兄貴のお尻
世界でいっと 素敵な宝
撫でまくれ 兄貴のお尻
ガチムチあこがれ 兄貴のお尻

この世はガチムチパラダイス
そうさ いまこそやらないか


作品への一言コメント

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  • 楽しいSSをありがとうございます。期待以上の出来にほくそ笑んでおります。 -- さるき@暁の円卓 (2009-07-26 11:38:59)
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最終更新:2009年07月26日 11:38