彩貴@レンジャー連邦さんからのご依頼品


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「彩貴」
ん、誰だろう。私を呼んでる。
すごく安心する声。

「どうした?彩貴?」
え?ヤガミさん??
なんで上半身裸なの?

以外と筋肉あるほうなんだ…
ってそうじゃなくってそうじゃなくって!

「バレンタインチョコ、ありがとう」
いえいえいえいえいえ!
そんな、ご迷惑じゃなかったですか?

「迷惑なわけないだろう。そうだ。お礼がまだだったな」
良かったです。安心しました。

って、あれ?

なんか近づいてませんか??

え、いやじゃないですけど…

と、突然で…でも、ヤガミさんとなら…

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「う…ううん…やわらかいです…ヤガミさん…」
レンジャー連邦パイロット控室。
今日もラスターチカを駆る共和国の空の守りたるレンジャー連邦のパイロットたちが、緊急事態に備えて詰めている。

そんな中、居眠りをしてとんでもない寝言をはいている彩貴を生暖かい目で見守っているのは、同じ連邦の春雨と七周である。

「いやー春雨さん。恋する乙女はいいねえ」
ごくごくと牛乳を一気飲みする七周。それだけならまだしもぷはーとか言ってしまうところが悲しい。

「そう…ね…可愛い…わ。相手が…ヘタれなのが…気に…くわないけ…ど」
こちらは緑茶をすする春雨。うっとりと彩貴を見つめる瞳は少し怪しい。

「これは、協力してあげないといけませんな」
ふふ、と笑う七周。

「…そう…ですな」
無理に口調を合わせる春雨。

この日の控え室からは、ふふふという不気味な笑い声と、彩貴の寝言だけが流れ続けていたという。

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ざざーん

穏やかな遠波が、夏の浜辺に打ち寄せていた。
空は抜けるような青空で、それを映す海もきらきらとコバルトブルーに輝いている。
白くて足の裏に心地よい絹砂の浜辺、振り返れば風にゆれる椰子の木が南国の雰囲気を盛り上げている。

そう、リゾート!ここはリゾート夏の園!

だけど

―――なんでこんなことになっているんだろう
外気温の暑さにもかかわらず、彩貴は顔を青くしていた。
肩が小刻みに震え、膝が笑っている。

隣では七周が
「いやーお嬢。海はいいねえ!」
などといいながら海なのに牛乳をごくごく飲んでいる。
春雨は二人をそっちのけで、この風景をどの色で写し取ろうかと余念がない。

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そもそもの始まりは一冊のパンフレットだった。

『宰相府藩国夏の園』

白いかもめが舞い、沈みゆく夕陽が美しいそのパンフレットを、七周がごく自然に持ち込んだあの時から陰謀は始まっていたんだ、と今考えれば思う。

「今度の休み、春雨さんとあたしと、彩貴ちゃんで海に行かない?」
それはすごく魅力的な話で、彩貴は一も二もなく飛びついた。

休み時間に抜け出して、新しい水着も買ってきた。
昨日の夜は楽しみで、忘れものがないか三回も荷物を確認してしまった。
到着した宰相府の入国管理所は二回目だけど、まだ珍しくてわくわくした。
それなのに…

「あ、そういえば今日は他に二人、こっちで合流することになってるから」
「え?えーと、どなたですか??」
怪訝な表情で返す彩貴に春雨がぼそりとつぶやくように衝撃の一言を放った。

「グラン…パ…と…ヤガミ」
「…え、ええええーーーーっ!!」
一瞬の間を置いて、彩貴の悲鳴が入国ロビーに響いた。

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そして今に至る。
彩貴は自分の二の腕を見て、悲しげな溜息をついた。

―――腕太いなあ
誤解のないように言えば、彩貴は全く太っていない。
健康的で理想的な女の子らしい体つきをしているのだが、たいていの女の子というものは自分のスタイルにどこかコンプレックスを持っているものなのだ。

それが証拠に、先ほどから何人かの通りすがりの観光客が、通りすがりに彩貴のほうをちらちら見ているのを七周と春雨は確認していた。

ある統計によると、女性たちにとっての理想的なスタイルだと言える平均体重から許される誤差は±100gである。その±100gの理想のために女性たちは男性では想像もつかないような努力をしているものなのだ。(ただし残念ながら、その100gの違いがわかる男性は非常に少ない)

彩貴は最初に、どこか茫洋とした目で景色を見ている春雨を見た。

女性としては長伸で、三人の中でも一番背が高い。ダークブルーと白を基調とした水着は、女らしさよりもむしろスポーティな要素が強く、クールな外見と相まって中性的な魅力を醸し出している。

しかしながら、彼女を見る多くの人が最初に目を奪われるのは、ところどころにまかれた包帯と眼帯だろう。すらりと長い脚に巻かれた包帯はどこかアンバランスで儚く、見ているものを陶然とした領域にシフトさせる。地に足をつけた現実感というものを狂わせる力があった。

次に、となりで二本目の牛乳をあけている七周を見る。
こちらは背が低く、小柄なスポーツ選手のような引き締まった体つきをしている。くりくりとした勝気そうな瞳はまだ少女のようで、白い肌と一緒に、夏の太陽を照り返して輝いていた。ダークレッドの水着の上から同じ色のシルクの布を巻いて、それがなんともエキゾチックな国のセクシーさを表現している。発言はいつもおやじ臭いのに外見だけはどうにも若々しかった。

さて、彩貴の水着はといえば、全男子憧れの淡いピンクのビキニである。いつもは三つ編みにしているふわふわの髪を今日はピンクの薔薇のコサージュでアップ気味にまとめている。空の色を写し取ったような瞳と、あどけなさの残る表情は、美人というよりも可愛いの領域に君臨している。目を奪われるというよりは、思わず微笑んでしまうようなそういった種類の美しさだった。

水着のトップスは、防水素材の上にゆったりした布が付いており、それを胸の間で蝶結びに結んでいた。ちなみに彩貴は意外と着やせするタイプというやつである。彩貴は着やせするタイプである。大事なことなので二回記述しておく。

ボトムスのほうは、水着の上からミニスカートのようなパレオをつけている。裾はフリルがふんだんに使われており、動くたびに、もしくは風が吹くたびに揺れて、中高生男子諸君を悶死させること必至である。当の本人は全くそれ所でないので気が付いていないが。

首には黒のフリルのついたピンクのチョーカー、右の二の腕と、左のふとももにチョーカーとお揃いのバンドをしている。この姿を見た人々はある一つの重大な事実に気づくことになるだろう。すなわち、バンド等の装飾品を装備することで素足、もしくは素二の腕よりも、その魅力が増幅され、視神経を通して大脳を刺激し、ドーパミンを大量に分泌させるという劇的な化学反応を起こすということである。

純粋にその装飾品のもつ魅力がプラスされるのか、それとも一部を隠すということ自体がこのような効果を生み出すのか、それは後世の研究を待たねばならないが、とにかくその破壊力は抜群であるとここでは書いておくことにしよう。

さて、水着についての考察をすませたところで、さらに突っ込んだ魅力について記述していくことにしよう。

一滴の汗が形のいい顎から鎖骨へと滴り、鎖骨を経由して(以下検閲により削除)

腰のライ(以下検閲により削除)

豊満な(以下検閲により削除)

チラリズムばんざ(以下検閲により削除)

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さて話は本筋に戻る。

牛乳に夢中な七周や景色に夢中な春雨でなく、膝をがくがくさせながら、いつ想い人があらわれるかときょろきょろしていた彩貴が先にグランパを見つけたのは当然の流れだった。

「あ、グランパさんこんにちは!今日は来ていただいてありがとうございます」
緊張していても礼儀正しさと明るさを失わないのは彼女の美徳の一つである。

「こんにちは……グランパさん……お会いできて光栄…です」
「こんにちは、お会いできて光栄です」
彩貴の声に二人も気を取り直して挨拶する。
グランパはその丸い体をこちらに向けると

「わしも嬉しい」
といってくるくると回りだした。
春雨もつられて回りだし、七周がそれを見てなぜかにこやかに笑っている。
そんないつもの二人の様子と、初対面でも好意的なグランパの様子に彩貴は少し安心した。が、しかし、次の瞬間に胸の中で心臓が跳ね上がった。

――――ヤガミさんだ!
ヤガミは別の木影で腕を組んで海を見ていた。
海を見ているというよりは、もしかしたら海を通して別のものを見ているのかもしれないが。
彩貴は意を決してヤガミに声をかけた。

「ヤガミさん、先日はどうもありがとうございました」
実は彩貴がヤガミと会うのは二回目である。前回は初心者騎士団二期生の卒業式に来てくれて、そこで出会った。
そこで「女は嫌いだ」「孫娘の婿になるかもしれないヤガミです」などの言葉に結構本気で傷ついたりもしている。乙女は繊細なのだ。

「…と、大丈夫ですか?」
反応の薄いヤガミを彩貴は心配そうに見つめた。

「ああ。すまん。哲学していた」
ヤガミはそのまま振り返ると、彩貴をまっすぐに見て言った。

「チョコをくれたやつだな。ありがとう」
―――覚えててくれた!
バレンタインのチョコレート。送ったはいいものの迷惑だったんじゃないかと何度も後悔していた。

ありがとう

ただその一言だけで、報われた気がした。単純にうれしくて、胸が苦しくなった。

「あ、受け取ってくださって嬉しいです」
それだけ一気に言い切ると下を向いた。顔が真っ赤になってしまって恥ずかしくて顔が見れない。耳のほうでごうごうという音が聞こえる。

七周と春雨はお互いに目配せをすると、彩貴の肩をさりげなく叩いて、グランパの隣に腰をおろした。

ヤガミはそんな春雨やグランパたち三人を見て少し苦い顔をしている。

「まあ、食べ物に罪はない」
つい照れ隠しにそんなことを言った。なんだかんだ恋愛は得意ではないのだ。

「え?ええと…もしかしてまずかったとか…ですか?そうだったらすみません!」
そんな照れ隠しに彩貴はまともに反応して、慌てて謝った。

―――ああ、ブラウニー甘すぎたかな?焼きすぎて苦味が出すぎたとか…どうしよう
一人ぐるぐるする彩貴。ヤガミは困ったように目をさまよわせ春雨たち三人を見た。

「痛そうだな。大丈夫か?」
丁度、春雨の包帯を見つけて、これ幸いと声をかける。

「…私は空気だと思っていて…」
が、一撃で突き放される。
さらに困ったヤガミは頭をかいて、空を見ている。

抜けるような青空を飛ぶ一羽のかもめが、「まだ若いな」と言うように鳴いた気がした。

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彩貴。相変わらずぐるぐるしている。

春雨と七周はこちらを見てによによしているだけで、フォローしてくれない。
顔をあげると、ヤガミが困った顔をしているのを見てさらにぐるぐるしてきた。

―――はっ。こんな時は

「春の園も綺麗でしたがここも綺麗ですよね!ヤガミさんもよかったら泳ぎませんか?」
彩貴は唐突に海に誘った。

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このセリフにはわけがある。時間は少し戻る。
入管を抜けて、砂漠の道を夏の園まで行く途中の車内。
彩貴はここでもぐるぐるしている。

「ど、どんな顔して会えばいいんですか!?」
「大丈夫、大丈夫。お嬢の魅力にかかればどんな男もいちころよー」
「その…ままの…あなたでいい…のよ」
七周は無責任に言い放ち、春雨はまともなことを言っているようで口もとの笑みが隠し切れていない。

「ああ、だめです!絶対になんにもしゃべれなくて変な女だと思われます…!」
もうこの世の終わりかというくらいの表情の彩貴。擬態語で表現すれば「よよよ…」と言った感じだ。

「そんなお嬢のために、こんなもの用意しましたーホットキャットエクスプレス夏の増刊号!憧れの人と海へ行こう特集!」
「パチ…パチ…パチ」
「そ、そんなの当てになるんですか…?」
七周の取り出した怪しげな雑誌に思いっきり脱力する彩貴。

「お嬢にねーぴったりなのはねー」
そんな様子に構うことなく七周はページを繰る

「思いっきりハジケテ夏☆
あこがれの人と海に来たはいいけど、うまくしゃべれないし、会話が続かないよー(泣)なんてよくある話!

せっかくうまくいきかけた恋の台風が熱帯低気圧に勢力を弱めちゃう…なんてことも。そんな時は、強引にでも海に誘っちゃおう!

海の中なら会話が少なくても大丈夫(あんまりしゃべってると溺れちゃうゾ)さらに泳ぎが上手な彼に泳ぎ方を教えてもらうなんて嬉しはずかしイベントもあるかも!

自然に触れ合う二人に夏の女神さまも嫉妬しちゃう??この夏、恋のハリケーンは伊勢湾台風級よ☆…だってさ」
「多少…強引に…でも…海に…引きずり込むの」
「そ、そんなことできませーーんっ!」
またも彩貴の悲鳴が宰相府に響き渡った。

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「まあ、かまわんが。どういうことだ?」
唐突な誘いに、ヤガミは怪訝そうな顔で尋ねた。
遠くの方ではなぜか春雨たちがガッツポーズなどをしているが気にしないことにする。
あいつらを相手にするとどうも調子が狂う。

「?どういうこととは?」
目の前では彩貴が、不思議そうに首をかしげている。相変わらず耳まで真っ赤だ。

―――これはどういう状況だ?何かの罠か?

「俺はもてない」
ヤガミ、半ば本気である。
グランパが遠くの方でしみじみ「若いのう」とつぶやいているが、これも黙殺する。グランパに比べればたいていのものは若いだろう。

「え、そうなんですか?私はかっこいいと思いますが…」
小首を傾げる彩貴も本気だ。
ストレートな物言いに、ヤガミはすこしすっと目をそらした。

「目を、治したほうがいい」
瞬間、春雨から殺気が立ち上る。
あまり表情は変わらないが、その瞳の奥には「私のお嬢になんてことを」という書き文字が青い炎とともに踊っている。
まあまあと春雨を止めている七周は上機嫌に二人のやりとりを見守っていた。

―――やっぱり罠か?
ヤガミは冷や汗をかきつつ、また視線を彩貴に戻しながら、そう思った。

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「う…今日は泳ぐので眼鏡ないですが!生活に困るほどわるくないですよー!」
―――ああ、こんなことが言いたかったんじゃないのに!
海は近く、波の音がこんなにはっきり聞こえるのに海に入るのは簡単ではなかった。
もういまや彩貴の頭の中は車内でのホットキャットの記事でいっぱいである。

―――と、とにかく海です!私の希望は海にしかありません!間違いありません!
「えっと、泳ぎましょう!せっかくの海ですから!」
理屈にはなってないが、気持ちは伝わったのか、ヤガミはまた一度苦笑すると、海に向かって泳ぎだした。
ひとりで泳ぎだすところが、カモメにもグランパにも若いなとしみじみされる所以であろう。

「え、えー!ま、待ってくださいー!」
ヤガミを追って入った夏の園の海は暖かかった。
昔温水プールに行った時のことを彩貴は思い出していた。

友達は、「彩貴ちゃん泳ぎうまーい!」と言ってくれていた。
小学校の頃だけど。

「泳ぎは得意なんですー!なので負けません!」
ザパ…ザパ…ぷはーザパ…ザパ…ぷはー
彩貴のスタイルは伝統的なクロールである。左手、右手、息継ぎ、左手、右手、息継ぎ。
教科書通りだが、あんまり早くはない。というか遅い。

ヤガミは、ちらちらと彩貴のほうを心配そうに見ている。
泳ぐ速度をゆっくりと落として彩貴に合わせた。

「わー。泳ぎ得意なんですか?」
久しぶりの海は穏やかで、泳ぐのが楽しくて、彩貴はにこにこしている。
先ほどの緊張が嘘みたいだ。意外とあの雑誌の言うことにも一理あったのかもしれない。

「不得意だ」
「うーん、そうなんですか?私必死ですよー。結構自信あったんですが」
立ち泳ぎでしゃべって、またクロールで少しずつ近づいていく。
ぶっきらぼうなヤガミの照れ隠しにも、さっきよりも傷つかなくなった。
あと五メートルくらい。

「俺はほとんど機械だ」
―――またそんなこと言って
あと二メートル

「機械だからって泳ぎの得意不得意はきっと関係ありませんよー」
ザプザプザプ
あと一メートル!

「…えい」
彩貴は追いついてヤガミの腕につかまった。

―――振りほどかれるかな…

彩貴の予想とは別に、ヤガミは動かなかった。
そっと上目遣いでヤガミを見る。
ヤガミの顔が少し赤くなっているのを見て、彩貴もまた顔を赤くした。

―――恥ずかしいけど…放したくない

「近すぎないか?」
ヤガミの声が遠く聞こえる気がする。

―――言わなきゃ。今。言わないと。

また次いつ逢えるか保証はまったくない。

バレンタインのチョコと一緒に送った手紙に書いた約束。
それは一方的で、自分勝手かもしれないけど、彩貴の素直な気持ちだった。
だから、逃げ出さずにここまできた。

ぎゅっと握ったヤガミの体から暖かいものが伝わってきた。
機械の体でも熱を発するのかもしれない。もしかしたらただの彩貴の錯覚かもしれない。
でも彩貴にとって、そのぬくもりは真実だった。

やっと会えた。伝えることができる場所に立てた。
顔をあげて、ヤガミを見た。

「私、約束を守りにきました」
はっきりと。
伝える。

―――恥ずかしい。怖い。でも目はそらさない。

「…え、ええと…だめですか?」
顔が火照る。
ヤガミも彩貴をまっすぐに見ている。
ぶつかりそうなくらい近い距離で、二人は見つめあった。

「…」
ヤガミの唇が何度も動きかけて、止まる。
そんな沈黙の時間が、続く。

「あなたに会って伝えたいことがあったんです。…一方的ですが」
答えを聞くのは怖かった。でも伝えられないまま終わるのはもっと怖い。
胸が切なくて、苦しくて。

でも、目をそらしたらすべて消えてしまいそうだから。

彩貴は必死にヤガミを見つめた。
想いが相手に届くように。

さらにぎゅっとヤガミの腕を握った。
言葉では言い足りない想いをすべて込めて。

そんな時間が、いつ終わるともしれなく続いて。
そして、ヤガミは大きく一度息をはいて、言った。

「考えとく」

ヤガミは筋金入りのヘタれだった。

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「ヘタれだ」
先ほどまで春雨や七周と話し込んでいたはずのグランパがいつの間にか波打ち際で二人を見ていた。

「…ヘタれ…めがね…」
春雨が恨みをこめて、グランパの隣でぼそりと言った。

「…ヘタれ眼鏡…」
七周がさらにとなりで溜息をついた。

カモメが戻ってきて「ヘタれだな」と言うように鳴いた。

ウミネコがそれに続いてヘタれヘタれの大合唱を始めた。

「…お嬢がかわいそう…」
「うちのお嬢はあんなにかわいいのに…何が不満だって言うのかねえ?」
春雨と七周はもはや親戚のおばちゃん状態である。

「そこ、うるさい」
ぶすっとした表情のヤガミ。

しかし、カモメと、ウミネコと、人間と、Ballsのヘタれコールは、しばらく夏の園の浜に響いていたという。

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「○月×日晴れ
今日は宰相府の夏の園に行きました。そこで大切な人に会いました。春雨さんと七周さんはヘタれだって言うけど、私は…優しいなって思いました。
次も返事が聞けるか分からないけど、また会いに行きます。きっと。必ず。」

そして二人の恋の物語が始まる。


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引渡し日:2009/04/22


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最終更新:2009年04月22日 03:41