鈴藤 瑞樹@詩歌藩国様からのご依頼品


目を開けると、宙に浮いていた。
・・・いや、違う、これは・・・再生ポッドの中?
次第に小さな体が半透明の治療液をゆらゆらと浮かんでいるのを感じる。

(私は・・・なんで・・・)

そう呟くが、口からは小さな気泡が出ただけ。培養液の中では自分の呟きさえ声にならない。
霞がかったように混濁している頭で必死に記憶を辿る。どうして私がこんな所にいるのか。

そのとき、ふと右手に違和感を感じた。
右手に視界を向け、ゆっくりと手を握り、開く。
何も異常はない。いつものように動かせるし一糸纏わぬ再生ポッドの中なので当然のように、

何 も

掴んで


い な い










違う違う違う違う違う違うどうしてどうしてなんでなんでいないの確かに掴んでいたはずなのに彼の感触が温もりが右手にそして落ちてでも抱きしてめてくれていたのに!
そうだ、落ちたんだ『私達』は

(!!!!)

声を大にして「彼」の名前を叫ぶ。なのに私の声は書き消え響かない。ただ空しく培養液を揺らすだけ。
首を回して周りを見ても、稼働している再生ポッドは他に一つもない。

(!!!!)

どうしていないんですか!確かに一緒にいたはずなのに!


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「はぁ・・・はぁ・・・またあの夢、ですか・・・」
 目を開くとそこは見慣れた自室のベットの上だった。荒れていた呼吸を整えつつ、寝汗で額に張り付いた髪をかき上げる。
 もう一度目を閉じると、カレンはゆっくりとまどろみに沈んでいった。夜闇に溶けていくような錯覚のなか、無意識に誰かの顔が思い浮かびぎゅっと自らの体を抱き締めて・・・


 結婚式での一件からすぐに蘇生治療が行われ、治療後の検査でも後遺症もなし。当初は混乱していたカレンもすぐに平静を取り戻しすぐに職場に復帰した。
 そんなカレンを待っていたのは、テラ領域との休戦の破棄であった。もちろん、すぐに戦争に入るというわけではなかったが、リンクゲートは遮断され連絡を取ることも出来なくなっていた。
 しかしカレンは特に取り乱す事もなくその事実を受け止めると、仕事へと没頭していった。まるで何かを忘れるかのように。


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 そして今日もまた日が登り一日が始まっていった。忙しく慌しいが、それでも何かが欠けている、そんな一日。
 時間犯罪はなくならず、誰も彼も・・・もちろんカレンも慌しく働いているのだが、それでも何かが抜け落ちている・・・まるで胸に穴が空いた様な一日が。

だが、その日は違った。

 突如もたらされた緊急アラーム。何の予定も許可もなく現れた世界移動反応の出現地は・・・このすぐ近く。
 だが驚くべきは、その反応だった。レーダーに表示された名は、【Unknown】ではなく歴史保安警察所属の反応を示しており、その名前は・・・【REIKA】と表示されていた。
 その名前を見た瞬間、カレンはしばらく使っていなかった愛用のブラスターをその小さな手に転送させながらパトカーに乗り込みその機体を急発進させていた。
 ファンファンファンと、どの世界でも変わらない警報を立てながらパトカーを疾走さるカレンの胸中は様々な思いが交錯していた。怒り、悲しみ、喜び、不安・・・上手く纏まらないまま反応があった地点に到着するとパトカーを飛び出した。

「ミソッカス!」

 そこには、確かにいた。緑色の髪の、いつも失敗ばかりのどんくさい、でもたいs・・・だが、カレンの思考はレイカの隣にいた人物の言葉で止まってしまった。

「カレンさん!?」

 声を発した人物を見る。白い髪に水色の瞳、優しそうな顔の「彼」の姿を。
 どうしてここにいるのか分からない、本当に「彼」なのだろうか・・・ずっと、ずっと・・・
 突然の感情の嵐に一旦俯くと、ツカツカと「彼」に・・・鈴藤 瑞樹に近づいていった。
 そして鈴藤の目の前まで来ると、満面の笑みを浮かべ鈴藤を見上げる。
「k
 そして鈴藤が何かを言おうとした瞬間、微かにカレンの右手が揺れたかと思うと神速の早さで振りぬかれたブラスターによって鈴藤は吹き飛ばされていた。


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久しぶりの、そして懐かしい感触に文字通り心も体も魂も天にも昇って宙を舞う鈴藤の頬には、一滴の水滴が当たっていた。


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大変遅くなりもうしわけありませんでした。

えー会えない間のカレンさんを書いてみました。
またこれから大変でしょうが、応援しています!

そしてこう、最後はごめんなさい!osz


作品への一言コメント

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  • SS作成ありがとうございます! 本当にありそうでちょっと怖くなりました。ところでみんな私がハリセンでぶっ飛ばされるたびに哀れむような目で見るんですが、なんでですか……? -- 鈴藤 瑞樹@詩歌藩国 (2009-01-23 18:01:53)
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引渡し日:2009/03/02


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最終更新:2009年01月23日 18:01