むつき・萩野・ドラケン@レンジャー連邦さんからのご依頼品
/*視覚介入*/
「さて、そろそろ時間がくるわね……短いなあ……」
そう言って、もう一度抱きついてきた。
「あ」
カールが何か言いかける。
そこでログアウト。
しばしの間そうしていた二人は、やがてゆっくりと距離を取った。
照れくさそうな笑顔を向ける。
「ね。これからどうしようか」
カールは少し考えた。まだ介入しているのか、もうしていないのか。
すぐに考えを振り払う。つい先ほど言ったばかりだ。愛している、と。
「そうだな。少し歩こうか?」
「うん。散歩だね」
むつきが手を伸ばしてくる。カールは少し笑って手をつないで、病室から出た。
病院の中を歩いていく。リノリウムの床は柔らかく、白い廊下にはラウンジで談笑する人々の声が響いてくる。広い廊下を進み、ホールに出て、エレベータを使って下りていった。そして適当な階から裏手の中庭に出て行き、生け垣にそって少し奥へ。
青空が、木々の枝葉に隠されていく。立ち並ぶ針葉樹の濃いグリーンの葉と枝が隠していた。
適当なところまで行くと、二人は立ち止まった。
「この辺りで休む?」
「そうだな」
芝生の上にはいって、木の下に座り込む。二人は並んで木に寄りかかった。
カールは深く息を吸い込み、吐いた。
空を見上げる。枝葉の隙間から、眩しくて青よりは白に見える空がある。
「ねえ、カール」
「なんだ?」カールは視線をおろした。
「そっちに行ってもいい?」むつきは少し悪戯っぽく笑って聞いた。
そっちに、とはどういう事だろう。二人ともすでに肩が触れるくらい近い。
「いいぞ」
カールは頷いた。するとむつきは嬉しそうに笑って、カールの膝の間に収まった。そのままごろんとよりかかって、頭を上に傾ける。
カールは笑いかけながら、むつきの体に腕を回した。軽く抱きしめる。
「どうした?」
「ううん。なんとなく」
ふふっと笑い、目を瞑る。
誰が見てもわかるほどの笑顔に、カールも思わず笑ってしまった。それから、少し、しまったなと思って照れる。
「愛している」
「私も、愛してる」
言い終えると、カールはむつきにキスをした。離れていこうとする唇にむつきもすぐキスを返す。
くすくす笑う。カールも笑いをこらえるように体を震わせる。
「しまったな。はなせなくなる」
むつきは一瞬考えた。話せなくなる、なのか、離せなくなる、なのか。
そう考えているうちに、カールがむつきを少し強く抱きしめてきた。顔がすぐ横に来る。
驚く。これは、その。
ゆっくりとした、吐息が混ざる。
背中越しに伝わる鼓動。
体温がゆっくりと。
…………これは、これで。
顔がだんだん熱くなる。久しぶりに、恥ずかしいというか、照れるというか。
……でも。
離れたくなかったので。
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二人はおなかが空くまで、ずっとそうしていた。
作品への一言コメント
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- 感想が遅れてすみません。高濃度の砂糖液を喰らって蒸発してから地上に戻って来るまで時間がですね。 ありがとうございますごちそうさまでした(謎) -- むつき・萩野・ドラケン@レンジャー連邦 (2009-01-13 17:03:53)
引渡し日: 2009/01/10
最終更新:2009年01月13日 17:03