八守時緒@鍋の国さんからのご依頼品
/*ある日学校の中で*/
昼休みの鐘が鳴る頃。
より、前、に。
「こっちだ。いいな。契約は煮干し三日だ」
なーと鳴く猫たち。それを見ていた男はよしと頷くと、前金(?)の餌を地面にばらまいた。はぐはぐと食べ始める猫たち。そして行け、という声に応じて猫たちは一列に歩き始めた。
電話をかける。
「もしもしー?」電話から声。
「やあ、何かワンパターンと思ってないかな?」
「思ったよ! また電話かよって思ったよ!」電話口で叫ばれる。
「窓の外を見てごらん」
「……外?」言われて窓の外を見ます。
教室の窓からくまが顔を出す。別にくまといってもあの大きなやつではない。北極にすんでいるのでもない。普通の女性である。
彼女の視線の先で、猫が並んで歩いていた。
「これを教えたくてね。かわいいよね」
「わぁぁぁぁ」
くまが体を揺らした。悶えている。笑うアリアン。先ほどの買収行為はさっぱりと忘れた口調で彼は言った。嘘は言っていない。
よし、これで充分だろう。あとは猫が機嫌良くしてくれるはず。
「じゃ、いいお昼休みを」
「ちょ」
アリアンは電話を切った。
/*/
「ちょとまってー!」
窓から転げ落ちかけるくま。慌てて窓枠を掴んで体制を整えているうちに、いなくなってしまった。
また、かーっ!
教室でうなだれるくま。いや、うなだれてどうする自分。ファイト。
立ち上がるくま。とりあえず弁当を持って、猫を追いかけていく。
そのまま猫の後ろをちょこちょこと進んでいくと、やがて神社に到着した。木陰を縫って日差しが差し込み、居心地のいい草地がある。そしてその上には
猫。
猫。
猫猫猫。
「ねこ、ねこー、ねこー」
ぱぁぁぁぁっと顔を明るくするくま。うわーんと思いながらそろそろと近づいて行く。
猫たちはごろんちょ。眼を細めて体をくねらせ、ごろんと丸くなる。
ほかほか。ねこだまり。
引き寄せられていくくま。磁力でも働いているとしか、思えなかった。
ぺたんと座ると、一匹のやんちゃな猫が膝の上にのってきた。
にゃん。
「ひゃわぁー」
内心ではぎゃーといいながらくまはそろそろと手を伸ばした。背中を撫でる。
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物陰にて、それを見る一人の人物はそのころ。
「……ふふふ」
笑っていました。
膝に座ってごろごろしている猫の首輪に気づくくま。挟まっていた手紙をとる。
<今日は忙しいので、一人でお昼は食べてください アリアン>
見回すくま。つられて猫もきょろきょろ。
ぴたり。
気づかれた。
飛びかかられる。がさっがさっ。
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そして、茂みの中から岩田を見つけた。
「えー!」
「くくく、良くぞ見つけましたね」
なんの間違い探し本ですかっ。くまはぐらんと体を傾かせた。
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最終更新:2009年01月01日 20:27