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黒崎克耶@海法よけ藩国さんからのご依頼品


そこはただの静かな森
いつか誰かが愛を誓った場所
人が誰も覚えておらずとも、彼らだけはそれを覚えている

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海法よけ藩国はこの頃、何度目かの戦災がようやく終わったところであった。
人は全くおらず、残ったのは森だけという状態だが藩王海法紀光は胸を張って立っていた。
胸を張る以外なかった、という話もあるがさておき彼は胸を張って立っていた。
その光景を静かでいいじゃないか、と本日の主役の1人であるソウイチロー・黒崎が呟くと、その声すら響く。
静寂な辺りを見回すと、来客たちに頭を下げながら黒崎克耶は
「静かですけどちょっと寂しい気がしますね」
と、返した。
「悪いな。こんなときに式をあげて」
「こんなときだからこそ明るい話題で国を盛り上げるのも悪くないと思いますよ。ソウイチローさん」
克耶の言葉に、ソウイチローは微笑で返す。
「ずっとお式を挙げるのを、他の方の支援のためにのばしていらっしゃったのですもの。本当に、今日の良き日を迎えられて嬉しいです」
有志として式の準備を手伝っていた森沢の言葉にソウイチローは首を振って答えた。
「逆だ。早く結婚したかったのさ。できればまあ、幸せに。今はまあ、妥協できるぎりぎりの状態だな。できれば10万人にでも、見せびらかしたくはあった」
真に残念そうに言うのが、実にヤガミであるというべきだろうか。
「幸せですよー。これからもずっと幸せになりましょう」
「ああ」
にゃー、といって転がる黒崎。微笑みながら見ていた久珂あゆみがぱたぱたと埃を叩いた。

「では、これより黒崎ソウイチロー、黒崎克耶の結婚式を行います」
「陛下ーソウイチロー・黒崎ですよ」
おおすまん、といつも通りの海法紀光による司会の下、式は厳かに始まった。

友人代表として久珂あゆみがしどろもどろに挨拶をしている間、ソウイチローは黒崎を見て微笑んでいる。木々が揺れた。
前日に降った雨で青々と濡れていた葉が、まるで笑うようにしゃらしゃらと音を立てた。

久珂晋太郎は、何もないところに手を伸ばすとそこにあった風を、魔法で一枚のレースに変えた。
おお、という歓声も止まぬうちに彼の歌がそのレースを雲に変えたかと思うと、祝福の言葉へと変えた。
その優美な姿に皆晋太郎へと拍手を送る。ネコリスにももてそうだな、と呟くソウイチローの声はあながち間違っておらず、(わたしのだうがーと叫ぶあゆみ以外)誰もが納得していた。

来客からの祝福を終えたところで、それでは、新郎、新婦のお二人、誓いの言葉をどうぞ、と海法が言った
ソウイチローは黒崎を見つめ、黒崎はソウイチローを見つめた
ソウイチローは、かつて夜明けの船において、戦いに出向く時ですら見せた事のない笑顔で寄り立つ相棒を見た。

「あー。俺はあまりしゃべるのは得意じゃない」

「でもまあ、見知った顔にあえて嬉しい」

「いつかはもっといろんなやつを呼んでやり直してみたい。それまで無事であることを願う」

その場にいたもの全てを見つめ、ソウイチローは言葉を終える。
神父であるところの海法紀光は、ソウイチローが向き直るのを待ってえへんえへんと形式めいた咳を一つした。
「汝、ソウイチロー・黒崎、黒崎克耶を妻とし、共に生きて共に幸せとなることを誓いますか?」
「はい」
「汝、黒崎克耶、ソウイチロー・黒崎を夫とし、共に生きて共に幸せとなることを誓いますか?」
「はい!」
「それでは、ここに、よけ藩国藩王の名と、一同の祝福の元に、二人の婚姻を認めます。どうか拍手をもって祝福を」

互いの瞳に相手が映る。
静かに口付けが交わされると、誰もが祝福と共に、手を鳴らす。
人も、ネコリスも、誰もが二人の愛を祝った…。

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今は誰もいない、そこはただの静かな森
いつか誰かが愛を誓った場所
人が誰も覚えておらずとも、彼らだけはそれを覚えている
決して忘れえぬ、愛の誓い―


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引渡し日:2008/12/26


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