詩歌藩国様からのご依頼品



『蛇神様の優雅な一日』


作:11-00230-01 玄霧弦耶


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ある日の詩歌藩国の大神殿。
FVBでのクーリンガンとの決戦を経て暫くたった頃、大神殿は大きく様変わりしていた。

外装はそう変わらないものの、中身は最早別物である。
総金張りの内装。聳え立つ純金の柱。供えられた数々の食料や金品。
そして、以前にもまして増えたひれ伏す人々。

そんな光景を、天上から眺める目が一対。

「あー。ほんま、ひまやのぉ」

ウイングバイパー。通称『蛇神のおっちゃん』である。
数日前までは供え物を一気飲みしまくってスマートな体がツチノコになっていたが、消化も終えたのか大分スリムである。
健康をつかさどる神の面目躍如といったところか。

「ここに来るんはみんなひれ伏してるだけやしなぁ。また盆ダンス大会でも開いたろか。ホンマ」

そういいながら、下の人々を眺める。
ほぼ全員がひれ伏して祈りを捧げている。立っているのは大神官として人々を纏めている者くらいだ。
周囲の金品には目もくれず、ひたすら祈っている。
いや、正確には装飾をこっそり持ち帰ったりするものもいるので、多少減ったりはしている。
が、日々増え続ける供え物に比べてしまうと本当に微々たるものである。

「・・・ホンマになんもないわ。真子ちゃんとかこーへんかのー。一緒に居った子でもええわー」

いつもならこの辺で飽きてしまって周囲の散策(主にくされ発酵死体の手先探し等)にでるところである。
と、そのとき、蛇神の言葉が通じたのか、更なる来訪者が現れた。
お目当ての真子ちゃんである。おまけもぞろぞろついてきているが、本日の楽しみが増えたとあって上機嫌で下に降りる蛇神であった。

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一方、来訪者チーム。
こちらは、同行者が以前蛇神と戦っていたり様変わりした大神殿の様子について行けなかったりであった。
キョロキョロしたり、頭を捻ったり、驚いたりと忙しそうである。
そんな様子をみながら、蛇神が顕現する。もちろん、今まで祈っていたものたちは驚いて固まっている。

「なんやなんや。真子ちゃんなんかあったんかいな?」

来訪者達といえば、驚いている信者達を尻目にフランクに会話する。
スイカをもってきたもの、胃薬を持ってきたもの、単純にお礼を言うもの、神殿の住み心地を聞く者。このあたりの反応も様々である。
なるべく一人一人に返事を返していく。理由は単純に、この神は普通に人くさいのであった。

そうして暫く談笑を楽しむ。
会話はやはり退屈しのぎに一番なのか、蛇神も饒舌気味であった。
まぁ、途中で飲み込んだり吐き出したり、メンチきったりきられたりもあるが、特に取り立てるようなことはなかった。
すくなくとも、蛇神にとっては。

話題が進むと、例のくされ醗酵死体の話にもなる。
ヤツはスロースターターで手下を増やさないと動けないし、詩歌は神々も多いので一先ずは安全である。と教えてやると安心したのか、その話題は思ったより早く終わった。
ついでに「鳥やウサギも動いている」と伝えてやるあたり、本当にこの神は人間(というか真子ちゃんとか)が好きなのだろう。
ある意味、神と話すにしてはフランクすぎる対応なのが許されるのもこの気質からだろうか。
もちろん、来訪者達が誠意を持っていることも重要であるが。

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そうしてやってきた来訪者達もずっといるわけではない。
要件が終われば各々帰っていく。もちろん、蛇神もそのつもりではあったが、流石にそうも行かなかった。

信者達に引き止められたのだ。

そもそもにして気の良い神である。毎日の如く供え物や祈りを捧げている相手を邪険に扱える神ではなかったのだろう。
勿論、その後は大騒ぎである。
急遽大神殿の中で開催される大盆ダンス大会に、鍛えた肉体美を披露して蛇神を楽しませようとする者達。
さらにそのドサクサで宴会(勿論アルコール抜き)を始める者達。
『蛇神が降臨した』との噂を聞きつけ熱心な信者もそうでない野次馬も殺到し、さながらお祭り騒ぎである。

当の本人(本神?)は、優雅にそれらを眺めてはカラカラ尻尾を震わせて笑い、供え物を丸呑みし、ついでに熱狂的な信仰者たっての願いでそいつも丸呑みし、である。
再度ツチノコまっしぐらコースを避ける為ある程度抑えてはいたが、この騒ぎでまたちょっとツチノコ的になっている。

『こらぁ、あんときの胃薬もろーといたほうが良かったんちゃうか。しもたなぁ』

と、蛇神が思ったかどうかはさておき、その日は一日お祭り騒ぎ。
本当に神は実在する、と噂のたった大神殿はさらに大繁盛で、更なる装飾が増えることであろう。
詩歌の大神殿はクーリンガン騒ぎと相まって、まだまだ当分繁盛が続きそうである。

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そうして一日も終わるころ、ようやく解放された蛇神は天上へ戻る。
傍目で見ても分かるほど膨れている(パッと見で「きりたんぽ」程度)が、足(?)どりは軽い。
それだけ楽しかったのであろう。そもそもにして、殆どの神は宴会や祭りなどを好む。
現実世界でも古くから続く祭りがあるのはそういった理由であり、さらに、陽気な神ならばなおさらだろう。
つまり、詩歌藩国の面々の来訪(と、その後の騒ぎ)は、思った以上に退屈を吹き飛ばし、十分満足するに至るほどの物だったという訳である。

「いやー、しかし。やっぱ人間はおもろいのぉ。こっちはどーも辛気臭いのがおおてたまらんわ」

そんなことを言いつつ、先ほどと同じように天上より下の光景を眺める。
(もっとも、辛気臭いのは神々の世界なんだからある意味当たり前ではあるが、それでも言ってしまうのがお約束と言うところか)
下では今だ祭りなのか宴会なのかよくわからない騒ぎが続いている。この調子では明日の朝どころか数日続くのではないかといわんばかりであった。

「まー。気が向いたら明日も降りてみよか。でもその前に・・・」

周囲を探る。相変わらずクーリンガンの気配は察知されない。
楽しんだ分やることはキッチリやるというのか、配下の蛇を使って更に捜索範囲を広げる。

「あの醗酵死体ほったらかしとったら真子ちゃんとか悲しみよるからな。いっちょ気張るでぇ!」

蛇神にとって、理由はそれで十分。というわけだろうか。単純にクーリンガンが大嫌いなのかも知れないが。
時を同じくして、鳥の神(HBペンギン)や兎の神(ストライダー兎)なども行動を開始する。
クーリンガン包囲網が完成する日も、近い。

そんなこんなで、蛇神の一日は終わる。
今日もまた、普通の優雅な一日であった。

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おまけ。

宴会騒ぎは暫くの間続き、その間に行方不明者が数名でたという。
その全てが蛇神の熱狂的な信者だったとの報告が挙がっている。
数日後帰ってきたらしいが、そろいも揃って腹筋がきれいに割れており、現在詳細を調査中とのこと。
また、肉体美を競い合う中に、黒オーマが確認されたと言う噂もあるが、こちらの真偽は不明である。

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作品への一言コメント

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  • 玄霧さん、SSありがとうございました!ウイングバイパー様が、ウイングバイパー様だー。って読みながら思いました!素敵な神様ですよねー。ユウタくんには、食料扱いされてますが(笑) -- 花陵@詩歌藩国 (2008-09-21 12:33:35)
  • 作品ありがとうございました!えらい名前呼ばれていて恥ずかしかったですが面白かったです。信者丸呑みとかおまけの舞台裏とかきりたんぽとか想像して吹きました(笑) -- 駒地真子@詩歌藩国 (2008-09-22 11:08:40)
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最終更新:2008年09月22日 11:08