多岐川佑華@FEG様からのご依頼品
「ひーーん」
FEG。
城があり、城下町があり、王がいる。
だが、少し裏を歩けば技術の生々発展とした様子が見て取れる。
そんな国。
まるでテーマパークのようで、夢のような国だった。
夢の国を猛ダッシュする少女の名を多岐川佑華という。
半泣きになって猛ダッシュしている。
「うええええええん。ショウくんショウくん!!」
遠くからでも目を引く、ピンク色の髪の毛だった。
現在そのピンク色の髪の毛に、激しいトラウマを持つ少年(逃走中)を追いかけていた。
ショウくんがいやなら染めるか坊主になるから!
と言おうとした(けなげ)が甘かった。
その前に全力で逃げられていた。
あわてて追いかけている。
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角を曲がったところで、大通りに出た。
城に一直線に通じるメインストリートである。
平和を象徴するかのように林立する、オープンカフェをやっぱり全力で走り抜ける佑華。
「ピンク...多岐川くん...さん?」
ピンク、いや佑華はピンクと呼ぶ声に反応した。
――そうかピンク髪だから、聞き込みすればすぐみつかるかも。
それはともかくとして、オープンカフェのテーブルに、その人はいた。
「風野さん? なにしてるんですか」
聞かなくてもたぶん休憩しているのだろうなとは解ったけど聞いてしまう。
「それはこちらの台詞だと思いますが、はい。何故そんなに急いでらっしゃるのですか」
「あ、えっと。ピンク髪の人見ませんでしたか!!」
風野さんがこちらを指さしてきた。
「えっと、そうじゃなくて」
「多岐川くんは、こちらには来ていませんね。何かありましたでしょうか?」
しどろもどろになってる間に、風野さんは察してくれた。
はっとなって、佑華はいまが緊急事態だったことを思いだす。
「た、たすけてください! ショウくんが逃げちゃったのです」
逃げたという言葉に風野は片目を細めた。
なんだかとてつもなく気に障ったらしい。
「わかりました」
立ち上がって携帯電話を操作する。
「いますぐ、お父様に連絡してイベント128【小カトー・多岐川捜索】の発動を」
「きゃーやめてーー! おおごとにしないでーーー!!」
あわてて腕にすがりつく佑華。
なんというか、目が本気だった。
「冗談ですよ...」
風野さんはとても残念そうに、ぼそりと呟いた。
「と、とても冗談とは思えない...」
「ではダガーマンコールを。助けてダガーマーン」
「わーそれもやめてーー!」
「ふっ、まかせとけ」
遅かった。是空藩王が柱の陰から現れる。
オープンカフェだが柱は何故かあった。
「って、すごいいきなりですね」
「実はそこにいたのさ」
「ていうか、今日はPCアイドレスなんですね。平日なのに」
「まあまて。ショウくんなら、後期の俺があっちの方で見かけた。
聞き込みしながら追いかければすぐ追いつくんじゃね」
「サボりですか」
「サボりじゃないでしょうか」
国民二人にジト目で見られて、冷や汗をたらす藩王。
と、いきなり空を見上げて耳に手を当てだした。
「こちらPC是空。なに――ああ…そうか…わかった。今すぐ向かう」
空に向かって独り言を呟く。
毒電波を受信しているようにも見えた。
さておき、
「別の国からダガーマンコールだ! 悪いがいくぜ!!」
うまくやれよと言い残して、藩王は高らかにジャンプをした。
オープンテラスの屋根からカフェの屋根、また別の建物の屋根へと飛び移り遠ざかっていく。
それは、何もかもを無視したような速さだった。
唖然とする客達。
残された二人は、しばらくしてから呟いた。
『逃げた』
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結果として聞き込みは正解だった。
「こういうピンク髪の頭の人が通りませんでしたかっ」
で、何人かの目撃証言をすぐに得たのだった。
さすがにピンク髪は目立つ。
どこにいてもすぐ解るのだ。
この髪の色は。
まるで、そうあることを望まれているかのように。
カトーの一族が、本当に見つけて欲しい人に――絶対に見つけてもらえるように。
少し嬉しくなって走り続ける。
――わたしもいまそんな髪の色をしているんだ。
その色は、今日はわたしがショウくんを見つけるためにあった。
この色は、いつかショウくんがわたしを見つけるためにあるのかもしれない。
やっぱり、染め直すのは勿体ないよね。
「待っててショウくん!」
多岐川佑華は気合いを入れ直して、全力ダッシュをきめこんだ。
ピンクの髪を元気に揺らして、宣言する。
「絶対見つけるからねっ!!」
作品への一言コメント
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- 書いてくださりありがとうございます!! 追いかけっこがすごい事になってて面白かったですww -- 多岐川佑華@FEG (2008-09-02 21:22:24)
引渡し日:
最終更新:2008年09月02日 21:22