よんた@よんた藩国さんからのご依頼


小川のせせらぎに映る鮮やかな紅葉。それを見つめて森はため息をついた。

(藩王さまなのはわかってたけど、友達みたいに話してたから気にしてなかったのに、宰相府であんなに特別待遇されてるの見たら、改めて身分の違い感じるじゃない。うち田舎者だから一緒にいたら馬鹿にされるかもしれない。よんたさんだって、うちなんかと一緒にいたら…)

前回の宰相府での衝撃体験から2ヶ月。会うのが久しぶりなせいもあり、どうしても考えが後ろ向きになりがちで、森は水面に映った自分のうかない顔を見下ろした。

(この前も口説いてるなんて言ってうちの事からかって。それならもっと早く会いに来てくれればいいのに。ちょっと好きかもしれないと思ったうちの馬鹿!)

「お久しぶりです」

背後からかけられた遠慮がちな優しい声。

よんただとすぐにわかったが、森は一人で一通り百面相をした後、どんな顔をして会ったらいいものかわからず、押し黙った。

「・・・・」

どうしても不機嫌そうな顔になってしまう。

(笑顔!笑顔よ!会えなくてふて腐れてるとか思われたら癪じゃない)

「え~と。聞かなくてもわかりそうですけど、怒ってます?」

「いいえ? 全然?」

見栄をはっての笑顔だったが、よんたには作ったその笑顔がかえって怖かったらしい。

「逆に怖いよっ!」

「・・・・」

(うちが怖い?言い訳も何も言わないなんて、やっぱり…)

「さようなら」

森は顔をうつむきがちに背けて隠すと、よんたから逃げるように駆け出した。

「まってっ」

後ろから聞こえたよんたの声。

森はつい足を止めてしまった。

「なんですか」

追いかけてきてくれた事を嬉しく思った自分の気持ちに気付いて、森はそれを隠すためについぶっきらぼうに言ってしまう。

「すみません、ほんとすみません。皇帝の件から色々・・・。おねがいですから、なんで不機嫌か教えてください」

(なんでかって…それを教えたら好かもって思った事がバレてしまうじゃない)

「教えません。さようなら」

「だからまってって・・・」

今度こそ立ち止まるものか!森はそう決心して走り出したものの、そもそも男と女の体力差があり、追いつかれてしまった。

(追いかけてきてくれるのが嬉しいなんて、うちもう駄目だ)

「あの・・・じゃあ教えてくれなくてもいいので、俺とちょっとだけでもいいので話しませんか?俺、キミの事もっとしりたいんです・・・、一人の女の子として」

(じゃ、もっと早くうちに会いに来てくれればいいのに!うちのことほったらかして!)

「あなたのつごうが、きょうはよろしいですものね」

ついついキツイ言い方になってしまう。裏を返せばここで拗ねるのはよんたの事を好きだと言っているようなものだったが、森は気付いていなかった。

「・・・・・・」

土下座するよんた。森は目をちょっとだけ見開いて動揺したが、今更引くこともできず、顔を背けた。

「会いたい時にいなくて、コッチの都合ばかりおしつけてごめんなさい」

「いえ。王は薄情だってきいてましたから。全然」

顔を背けたまま森はつんと言った。

「そうみえましたか」

(うちに会いたくても、どうしても会えない事情があったとか、うちの事を好きだって言ったら許してあげてもいいかも…)

「これからはそういわれないようにします・・・」

肩を落とすよんたにそう思った森だったが、求めていた言葉でなかった事にムッとした。拗ねていたのが、ふつふつと怒りに変わってきた。どちらかと言えば、期待した自分に。

(うちより仕事が大事なんだ!)

「ええ。別の人と」

森は憤慨して駆け出した。

「だ~~~~もうっ、俺は森さんにそう思われたくないのッ!!」

よんたは必死に追いかけながら言い直した。

「うそばっかり」

「キミに会いたかったっ、駆け引きとかじゃなく本気で」

(今更言っても遅い。うちの事あんなにほったらかして…)

「はあ」

「・・・しんじてくれないよね・・・やっぱ」

(うちの事本当に好きなら…)

「3日後に会いに来てください。それで信じます」

「いく、絶対に」

よんたの答えに森は少し微笑む。

「・・・少し信じます」

「ありがとう」

好きだ思ったのがばれたら負けだと思って、森はこの後も顔が緩まないようにがんばったのだった。


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引き渡し日:2008/09/01


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最終更新:2008年09月01日 01:24