日向美弥@紅葉国さんからのご依頼品


デート


 作ったばかりのワンピースを着て、美弥は軽やかに歩いていた。
 玄ノ丈さん似合うって言ってくれるかな。
 自然と笑みが零れた。
 待ち合わせ場所に着き、キョロキョロと玄ノ丈を探す。
 いた。
 玄ノ丈はいつもより小奇麗な格好で立っていた。肩には花を背負っている。
 髪にはポマードを塗っているらしい。オールバックになっている。
「こんにちは」
 美弥は嬉しそうに玄ノ丈に寄っていった。
 玄ノ丈はちらりと彼女を見た。
 そして微笑んだ。
「似合っているじゃないか。美弥」
 その言葉に美弥は耳まで真っ赤に染める。
 名前、初めて呼んでもらえた。
「ありがとう……」
 美弥はもじもじしているのを見て玄ノ丈は微笑んだ。
「花を持って歩く? それとも、俺に持たせる?」
「持って歩きたいです!」
 玄ノ丈の問いに間髪入れずに答える美弥。
 玄ノ丈は恭しく花束を差し出すのを美弥は大事に受け取った。
 花束を大事に抱えてギューっとする。
 玄ノ丈はそれを見て照れ臭そうに笑うと歩き出した。
 歩調は美弥がついていけるようにゆっくりと。
 美弥もトコトコとついていく。
「マチネでもいいんだが。ま、たまには俺らしくなくても、いいかとは思っている」
「どっちでも、玄ノ丈さんは素敵です」
 美弥は嬉しそうに微笑む。
 玄ノ丈も笑う。
 そして二人並んで歩いた先には、スケート場があった。


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 スケート場の中はひんやりとしている。
「見ているか?それとも一緒に?」
「何度かすべったことはあるから、一緒に」
 美弥がそう答えると玄ノ丈がスケート靴を借りてきた。
「はき方はわかるか?」
 玄ノ丈が笑いながら言うのを美弥は笑いながら答える。
「わかりますよー、さすがに」
 二人並んで靴を履いた後、玄ノ丈が先に立って美弥に手を出した。
 美弥はその手を取って立ち上がる。
 こうして二人はリンクの中に入っていった。

 中に入ると、玄ノ丈は後ろを見ずにすーっと滑っていく。
 手が離れる。
 美弥は慌てて滑るが、玄ノ丈ほど上手くは滑れない。
 その様子を見ながら手を叩いて玄ノ丈はゆっくりと下がっていく。
 美弥はプーっと脹れた。
「どうした?」
 その声が優しい。
 だからこの距離がもどかしい。
 美弥は玄ノ丈ほど上手くは滑れない。
 玄ノ丈は後ろを滑っていく人々を華麗に避けていくのを格好いいなあとは思いつつも、一緒に滑りたいなあと思う。
「手をつないだままでいたいなって…」
 思わず声に出る。
 すると玄ノ丈が足を止める。

 ポム

 美弥は玄ノ丈の胸に飛び込む形となった。
「上出来だ」
 耳元でそう囁かれ、美弥は再度顔を真っ赤に染める。
 玄ノ丈は胸の中にいる美弥の髪を指でよけながら微笑んだ。
「いじわるしたな。じゃ、普通にすべるか?」
「はい! 今度は手を離さないでくださいね」
 美弥のその言葉に玄ノ丈はつーっと滑って離れ、美弥の手を取った。
 少し胸の中を名残惜しく思いつつも、美弥は差し出された手を取って、ゆっくりと滑った。
 二人で手を繋ぎ、ゆっくりと滑る。
 滑りながら、玄ノ丈が美弥の方に寄る。
「にゃ?」
 美弥は玄ノ丈を見上げた。
「?」
「んと、うれしいなって」
 美弥はえへへと笑いながら玄ノ丈を見つめる。
「ああ。近すぎたか?」
「ううん、これくらいで…」
「OK」
 玄ノ丈は美弥を見下ろしながら微笑んだ。
 美弥も笑顔で返す。
「照れるな」
「ええと、でも近い方がうれしいから」
 ポンと、肩が当たる距離にまで近付いた。
「さすがに滑りにくいですよー」
 美弥はくっついたまま笑った。
「それもそうか」
 玄ノ丈はそう言うと美弥の手を離した。
 つーっと優雅に滑って離れていく。
 その玄ノ丈をリンク内の女性は「ほーっ」と見惚れている。
「わーん、極端すぎ」
「ははは」
 美弥は玄ノ丈をよれよれと追いかけるとギューッと抱きついた。
「捕まったな」
「もう…」
 二人はそのまま抱き合った。
 周りからは冷やかしの声も聞こえるが、今は聞かないフリをする事とした。
「何度でもつかまえますもん」
 抱き付いて近付いた玄ノ丈の耳元で美弥は囁く。
「いい度胸だ」
「誰かさんのおかげで」
 二人はくすくす笑いながら離れた。
 玄ノ丈は軽く美弥の頭を叩いた。
「飯でもどうだ」
 美弥の先を玄ノ丈が滑っていく。
「は~い」
 美弥も後を追いかけて滑っていった。


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 二人は腕を組んで歩いていた。
 何を食べる? どこで食べる?
 他愛ない会話をしながら、体を寄せ合い歩く。
 少し冷えた身体に、互いの体温が心地よかった。


作品への一言コメント

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  • ちょー甘々に書いていただいてありがとうございます(*ノノ) ゲームの裏ではぐるんぐるんになってた自分を思い出してしまいますw -- 日向美弥@紅葉国 (2008-10-03 13:41:48)
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最終更新:2008年10月03日 13:41