アポロ・M・シバムラ@玄霧藩国さんからのご依頼品


『アポロの異様な告白~または彼は如何にして曲解するのを止めて彼女を愛するようになったか~』

作:11-00230-01 玄霧弦耶


/*/


シーズンオフの某日、深夜2時。
草木も眠る時刻も近づくこの時間、某所より悲鳴が木霊する。

「キィヤァァァァァァァ」
「キィヤァァァァァァァァァ」

悲鳴の発生源は、玄霧藩国在住の技族・アポロの住居であった。
もう夜も遅いというのに明かりが煌々と照らされ、そこだけさながら不夜城のようでもあった。

「キィヤァァァァァァァ」
「キィヤァァァァァァァァァ」

しかしてその悲鳴からは恐怖というものが感じられず、ただただ木霊するのみである。
そう・・・あえて形容するならば。
『黄色い悲鳴』とでも言うべきだろうか。


/*/


「で、で、つっ、続きは!?」
「つーづーきーはー?」

同日、深夜2時。アポロの住居。
イクとマイムがアポロを質問攻めにしている。
何故か、三人とも顔が赤い。アポロにいたっては半分泣きそうな勢いである。

「え、えーと、タクシーにのって・・・」
「タクシー!ンマァ奥様、タクシーに乗ったらしくてよ!?」
「手を繋いでタクシーとはラブラブですね(メモメモ」

何のことはない。
悲鳴の正体は

「で、そのー、春の園でー・・・」
「ンマァ!春の園ですって!」
「デートですわね!」

アポロの一言一句に反応する、イクとマイムの奇声であった。

事の起こりは、英吏に会いに行ったアポロが帰ってきても『心此処にあらず』といった様子なのを見たイクが結果を聞いたことに始まる。
アポロの返答に困る様子を見たイク&マイムが察してしまったのが運の尽き。
あれよあれよと準備が進み、女だけのパジャマパーティーが開催される運びとなった。

といっても参加するのはイク、マイム、アポロだけである。他のものは
「ホントに恥ずかしいのでこれ以上はぁぁぁぁぁぁ」
と言う、アポロの絶叫で色々察したのであった。
なお、他の国民達は後日キッチリ問いただしているので、余り意味はない。

「あ、でもほら、危険なことが起こるってきいてたんで」
「一週間後に女の人がってやつー?」
「え、そんなのあるんですか?」

話してる内容はアレだが、擬音で表現するとコレこそまさに『キャッキャウフフ』というやつである。

「ソレはおいといてっ!続きはっ!」
「そうですそうです、続きー」

おうりゃあ、と置いといてというよりぶんなげるジェスチャーをしながら催促するイクに、ニタニタ笑いながら詰め寄るマイム。
マイムは笑い方が眠そうな目とあいまって非常に腹黒い笑みとなっているが、本人は気づいていない。

「うー、えーと、『ちゃんとしたデート初めてだから』って行ったら『今も、デートだ』って言ってくr」
「キィヤァァァァァァ!? 聴きました奥様!アマアマですわよ!」
「えぇ、これはもうラブンラブンですね!って言うか曲解してない!」
「あ、そうなんですよ!曲解消えてるらしくて!」
「キィヤァァァァァ」
「キィヤァァァァァァ」

…まったくもって、文字面だけ見るとホラー物にしか見えない流れだが、内容はよくあるパジャマパーティであった。
まぁ、そのパジャマパーティーこそ、男にとっては禁断の聖域であり、形容しがたいホラーのようなものだが。


/*/


そして2時間後。
『流石に夜も遅いから』とイク&マイムが嵐のように去って行って十数分後。
一通りの片づけを終え、アポロはベットに沈みこむ。

なお、この2時間の間に
「こっ、これがデートチケットっ!…初めて実物見ましたわ奥様!!」
「おおー、これがあの噂の恋人専用チケッツ…(メモメモ」
「誕生日プレゼントにくれたのかなー、なんて」
「あ、でも、デートの部分消えてる。なんでなんでー?」
「これはサインペンですね」
「えーと、英吏さんがは、恥ずかしいからって…」
「キィヤァァァァァァ!!」
「キィヤァァァァァァ!!」
「あ、でも、デートってあとで書き足すから!(笑)」
「ほほう、キスしたいくらい嬉しかったわけですね(ニヨニヨ」
「ほほう、そうなんですか奥様(ニマニマ」
「え、まだ言ってないのに何で!?」
「いや、パパンが」
というような流れもあったが、コレだけであとSS4本くらいになりそうなので、その部分は割愛する。

無意識に、少し前まで人形を置いていた棚を見る。
今はもう影も形もないが、その代わりに目を瞑ればいつでも英吏の顔を思い浮かべることが出来る。

「………ぬあー!」

急に起き上がって枕を壁になげ、ベットの上を転がるアポロ。
どうやら思い出して死ぬほど恥ずかしくなったらしい。
転がりすぎて角に頭をぶつけてやっと冷静になった。

「へいじょうしんへいじょうしん・・・」

しかし、そういいながらも目じりが下がっている。文字で表すと、そう。「にへーっ」とでもするべきか。
何せ微笑青空勲章を得てやっと『初めて会話が被る』と言う現状が起こったのである。
嬉しくないわけがない。
そういうわけで、パジャマパーティーという名の質問攻め大会にも(色々と)耐え切れたのである。

髪を軽く整え、枕を拾い上げ、ついでにシーツを少し戻し、再度横になる。
枕とは別に、クッションを抱きしめるようにし、アポロは眠りにつく。
『英吏の休暇を邪魔しなかったか?英吏は今日、本当に楽しかったか?』
帰ってからはそんなことばかりを考えていた。

が、質問攻めにあい、返答に逐一反応され、応援され、冷やかされするうちに、そんな疑問は吹き飛んだらしい。

『もしかすると、イクさんたちはそこまで見抜いてたのかもしれない』

そんなことを考えつつ、アポロは夢の世界に旅立った。


/*/


後日。
アポロがイク&マイムにパジャマパーティーのお礼を言うと、2人は揃って不思議がった。
恐らく、天然故の行動だったようだ。
それを見てアポロはずっこけるところであったが、そんな2人に改めて礼を言ったらしい。

そのときのことはイク曰く、
「いやもー、アポロさんのゴイスーな話聴けてマイムさんと盛り上がってて!
 パパンも着たらよかったのに!あ、でも、女の子以外は進入禁止なのでパパンはやっぱ禁止です!
 ママンなら頑張ればありかも・・・っていやいや、そうじゃなくてですね。アポロさんが可愛くて!」

以下、略。
ともかく、玄霧藩国は平和であった。


作品への一言コメント

感想などをお寄せ下さい。(名前の入力は無しでも可能です)

  • 素敵な作品ありがとうございました!パジャマパーティ…いいですねえ。イクさんとマイムさんがかわいいー! -- アポロ (2008-08-23 08:34:38)
名前:
コメント:




引渡し日:


counter: -
yesterday: -

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2008年08月23日 08:34