桂林怜夜@世界忍者国様からのご依頼品
生活ゲーム、その機会を確保するのは実のところ結構大変である。
「えー」
何故か心底嫌そうな顔をする怜夜。
「えーじゃない。君の恋人だろう」
「めっそうもない。そんな関係じゃありませんよー」
その意外極まりない返答に結城由羅の目が点になる。
「微笑青空勲章を持ちながら何をおっしゃるウサギさん」
いらいらと文句を言う由羅。
「だってー好きとか言われてないしーもう3ヶ月も会ってないしー…きっともう忘れてるんじゃ」
ぶちぶちといじける桂林怜夜。
「えーっと、お嬢さん?」
こめかみを押さえる由羅。
「あれだけいちゃいちゃしてて恋人じゃなかったらなんだと?」
真面目に考え込む怜夜。こらこら。
「………気の迷い?」
「…ロイに絶対言うなよ、それ」
男のグラスハートを破壊する気かこいつは。
「バレンタインの襲撃時、ロイは君に会うためにその加護を使った。そんなに思われてるんだから信じてあげなさいよ」
「…だって戻ってこないもん」
口を尖らせる怜夜に頭を抱える由羅。拗ねとんのか。
「わかった。わかった。だから早く探しに行ってきなさい」
「………」
個人ACE ロイ・ケイリンを開示してから幾度となく繰り返されてきた説得…なだめすかしというか。なだめてすかして、「ロイの捜索」を開示、準備して…結構な時間が経つ。
「やっぱり行かないほうが…」
「まてまてまて」
今日3回目の説得(?)を開始する由羅であった。
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「だからなんで私が」
うんざりした顔の由羅に、てんぱった顔の怜夜がしがみつく。
「付き添いです」
必死の形相、に苦虫を噛み潰したような顔。
「なんか超お邪魔虫なだけのような気がするんだけど…」
軍が必要かもと待機した挙句、要らなくなったと聞いてなんじゃらほい、と思いつつ、まあきっとどこかのだれかがうまくやってくれたんだろう、と納得していた由羅。そうなると、らぶらぶの2人の傍に行くというのは、はっきり言って邪魔以外の何者でもない。
「でも、世界移動存在に慣れてる人がいたほうが…突然現れたら不審じゃないですか」
「いや、だってあっちの私は君のこと知らないから」
介入先の世界の同一存在ユラ・フレイムはこの世界のことは知らない。介入されてると意識すらもしてない。そう、ロイに会ったとして、それは知らない異邦人なのだ。
「なんとかしてください」
「えー」
無茶な、と思いつつも、最後はどこかの世界でした約束を思い出して頷いた。
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「あなたは誰! 撃たないで!!」
日向をカバーしながらユラは叫んだ。遠くで空耳が聞こえた気もするが、それどころではなかった。
「くるぞ!」
金髪で黒衣の美青年が、不思議な形の銃を構えながら叫んだ。狼の日向が吼える。
ばけものが現れた―――なりそこない。その正体をしかし、この世界のユラは知らない。
日向が3本足で飛んだ。ロイはカバーするように射撃を開始する。ユラは、日向の動きを見て状況を判断、応援のための呪文詠唱を開始した…。
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「ありがとうございます!一生お側から離れません♪」
その言葉とともにその場を離れる異邦人二人の足音を聞きながら、ユラはそっと目を開けた。絶技の使いすぎで体が重い。意識を手放せばすぐに泥のように眠り込むだろう。ただ、それでも最後に何故か彼らを見送りたかった。
光の柱へ溶けていく金の髪、それが何故悲しいほど懐かしいのかわからなかったけれど、抱き合うようにして消えていく背にユラは満足げに微笑んだ。遠ざかる意識の中で、遠い世界で誰かが呟くのを聞いた。
…あの約束を少しは果たせたかな。
作品への一言コメント
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- ありがとうございました。視点が違うSSはゲームとはまた違う雰囲気に感じられます。でも、当時は恋人じゃなかった気がします。やっぱり。 -- 桂林怜夜@世界忍者国 (2008-08-03 03:10:44)
引渡し日:
最終更新:2008年08月03日 03:10