都築つらね@都築藩国様からのご依頼品


爆発の中の出会い


 オンサはくるりと周りを見回した。
 平和な通り、平和な商店街、平和な電車……。
 うん、いい所だ。
 ただ足りないものがある。
 オンサはまっすぐに指を伸ばした。


 爆発。爆発。爆発。


 大きな煙が立ち込めて、きのこ雲が浮かぶ。
 うん。やっぱりこうでなきゃ。
 オンサは満足そうにうなずいていると。
 きのこ雲の浮かぶ景色が凍った。
 絶技凍結である。
 オンサは面白くなさそうに絶技の飛んできた方向を見た。
 肩で息をしている男が一人いる。
「死ぬ、マジで死ぬ!! オンサあああ!!!」
 男は叫んでいた。
 オンサは自分を呼ぶ男の顔をまじまじと見た。
「誰?」
「この国の藩王、法官1級。都築つらね……白にして秩序のほうが通りは良いか、ね?」
「なるほど」
 すぐに理解した。
「じゃあ、貴方が私の旦那様だったりするのね」
 イグドラシルに描かれた運命の相手。
 オンサは不思議と笑みが浮かんでいた。
「認めないけど。ぜーたい。認めないので、アール」
 とんと男、改め都築つらねの顔を見つめた。
 つらねは困ったような、どうしたらいいのか分からないような顔をしていた。
「大丈夫? 台詞ないけど?」
 つらねは苦笑しながら返事を返した。
「……初対面からお前なあ。まあ、まず謝る。こっちの都合で勝手に、急に、呼んで悪かった。」
「ううん。貴方が勝手でロマンチストで一々いらんこと一言いうけど面倒見がいいのはよく知ってるわ」
 オンサは笑った。
 イグドラシルに描かれた運命の相手。
 その男の事は何だって分かる。
 オンサはそう思ったのである。
「……とにかく、旦那かどうか認められる以前に、だ。」
 オンサはにこっと笑った。
「説教はノーサンキュー」
 オンサは指をさした。

 爆発。爆発。爆発。

 オンサは満足そうに爆発した方向を見た。
 つらねは爆発した方向をあわあわと見ている。
「で、なんだっけ」
「……ええと、説教とかおいといて。状況説明していただけますかオンサさん。お願いしますから。」
 つらねは半ば泣きそうな顔でこっちを見た。
 オンサは当然のように答えた。
「私、爆発好きなんだ。というか。愛してる。説明終わり。で、本番の爆発なんだけどね?」
「OK、良く分かった! お願いだからやめてください! 俺の国壊さないでー!!」
 つらねが悲鳴をあげるのをオンサはまじまじと見た。
 同じオーマなのにどうして分からないんだろう。
 オンサは不思議そうに首を傾げたが、相手は秩序。無秩序とは逆なのだろうと勝手に納得した。
「壊したら回復させてるじゃない。見てよ、あの前衛的な搭」
 オンサの指を指した方角には、爆発に巻き込まれて見事にえぐれたビルが建っていた。
 ……と思ったら、先からボキッと折れて見事に崩れた。
 オンサは満足げに頷いた。
「壊れ方まで格好いいんだから」
「ちょ、待て! 長距離輸送システム―――!!!」
 つらねは頭を抱えて叫んだ。
 オンサは面白くなさそうな、面白そうな顔をして彼を見た。
「ねえ、オンサさん、話し合おう!ちょっと話し合おう!」
 うん、秩序は頭が硬い。もうちょっと柔らかい方がいいなあ。
 オンサはつらねをじっと見た。
「話す要素なんかあったっけ」
「なかなかね、楽しそうなのはわかるけどね。申し訳ないんだけど、凄い勢いで困ってる人もいるから、ね!? 少し、待ってもらえると、有難いんだ。」
 オンサは少し黙って考えた後、口を開いた。
「困っているのは、貴方の心の中。それも本気じゃない。微笑めば、いいと思うよ?」
 その言葉に一瞬つらねはぽかん。とした顔をしたがすぐに気を取り直した。
「格好良いなあもう! でもまだちょっと笑えないよ! よ!?」
「だから駄目なのよ。貴方のどこが気に入らないって。そこ。貴方には笑顔が足りないわ。たとえ笑っても嘘くさいんだもん」
 微笑めばいいのに。
 オンサはもう一度口に出そうとした言葉は黙っておく事にした。
 何と言うか、秩序の慌てる顔は面白い。その事に気付いたのである。
 つらねはまた何かを言おうとしたが、とりあえず一息ついた。
「……わかった、ちょっと落ち着こう。」
 つまらない。
 オンサは指をぴっと指すとゴミ箱を爆発させた。
「最高」
 オンサは少し気持ちよくなって笑うと、つらねは引きつった笑いを返してきた。
「落ち着かせて下さい! 狙ってやってるだろ! ていうか、よし、ちょっと待て。話させろ。」
「今のは良かったね?」
 オンサはにっこり笑った。
 今の反応は面白かった。
 秩序が慌てて答えを出そうとするのが面白かった。
「今度、うちの国で“変なオブジェ展”という祭をやるんだが。それに出品してみないか。マジ爆発無しなら、合法的に、説教無しで、好きなもの作ってもらってもいいんで。こっちでOK出せる規模なら爆発も……ありで。」
 何とか妥協点を探そうとする彼。
 うん。面白い。
「私がどういうか 当ててみて?」
「そんなの関係ない。無秩序だもの?」
「貴方がいうことなんて、一つだってきいてあげない。ばーか。死んじゃえ」
 オンサはつらねにあっかんべーをした。
 そしてそのまま歩き始める。
「もおおお!」
 オンサの背後からつらねの叫び声が聞こえる。
「ちょっと待って。もう少し考えてくれないか、ほらあそこの和菓子美味しいってうちのメードさん言ってたから食べに行こうぜ、ね。」
 オンサは振り向いた。
 今度はちょっと怒りながら。
「来るまでに時間かかったわね?」
 オンサの言葉につらねはびくっとし、少し肩を落とした。
「ああ、それも、謝る。本当、ごめん。」


 秩序はいつもそう。
 私の事は後回し。
 秩序の中にいて、自分自身の力で戦おうとしない。
 自分だけの力で戦ってみなさい。
 もしそうなったら。
 ちょっとは見直してあげてもいいわ。


 オンサは秩序とキスをした唇を舐めた。
 今回はサービス。
 次回からは奪ってみなさい。
 オンサは足を組んで景色を見つめた。
 自分の起こした爆発で、煙がしゅーしゅー流れている。
 オンサは笑った。
 何千年ぶりかに、面白くなりそうな、そんな予感がしたのだ。

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引渡し日:2008/10/27


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最終更新:2008年07月26日 02:13